チラシの裏にでも書いとけよ

チラシの裏にでも書いとけよ、なんて、
裏がまっさらなチラシにはもうなかなか巡り会えないというのに。

本来チラシの裏にでも書いておくべきだった懊悩を、鳥のさえずりが聞こえないインターネットで吐き出す。

その懊悩たちは、知らない顔どうしが隣り合う肥溜めへ吸い込まれてぐちゃぐちゃになっていく。
つぶやいていない。ポストしているわけでもない。ただ吐き出している。

社会でだれとも隣り合えないぼくも、ここでは一かたまりのゴミとして、横たわっていられる。

ここでは、隣り合える。

いやに暗い部屋で、ひとりのぼくを照らすのはブルーライトの光だけ。
部屋の隅では、二年前に母が買ってくれた空気清浄機がやかましく稼働している。

外に出れば、ほんものの光があるのだろう。そこでは、鳥のさえずりが響くのだろう。

でも、これでいい。
ぼくは、これでいい。
光を求めてまぶしさに焼かれるなんてばかげてる。
ぼくには、重い腰をあげて、あの軽いドアノブに手をかける気力さえ残っていない。

溶けゆくイカロスにはなりたくないし、ぼくは蝋でできた翼も、そして、裏がまっさらなチラシすらも持ち合わせていないのだから。

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