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神無月 #52

神無月
これは旧暦の10月のことである。

諸神が出雲に集合し、他の地では神が不在になる月であるから神無月と呼ばれてるいる。
ただし、出雲では神在月と呼ばれるとか。

そこでは、八百万の神様たちが世の中の様々なご縁について会議をするらしい。
だから出雲大社は、縁結びの神様であるとも言われている。

出雲に関するエピソードでは、因幡の白うさぎの話が有名である。

出雲の国に大国様(だいこくさま)という神様がいた。
その大国様には兄弟がいたが、その兄弟の中で大国様は一番心のやさしい神様だった。
兄弟の神様たちは因幡の国に美しい姫がいるという噂を聞いて、みんなで会いに行くことにした。
大国様は兄弟達の家来のように大きな袋を背負わされ、一番後からついていくことになった。
兄弟たちが因幡の国で体の皮を剥かれて泣いている一匹のうさぎを見つけた。

兄弟たちはそのうさぎに意地悪をするために、海水を浴びて風にあたると良くなるという嘘をついた。
そのうさぎはだまされているとも知らずに、言われるまま海に飛び込み、風当たりのよい丘の上で風に吹かれた。
そうしていると海水が乾いて傷がもっとひどくなり、ヒリヒリと痛みだした。
前よりも苦しくなって泣いているうさぎのところに、後からついてきた大国様が通りかかった。

大国様はそのうさぎを見てどうして泣いているのか理由を聞いた。
そのうさぎは言った。
「私は隠岐の島に住んでいたのですが、一度この国に渡ってみたいと思い、泳がないで渡る方法を考えていました。するとそこにサメがきたので、私は彼らを利用しようと考えました。
私はサメに自分の仲間とどっちが多いかくらべっこをしようと話をもちかけました。
サメたちは私の言うとおりに背中を並べはじめて、私は数を数えるふりをしながら、向こうの岸まで渡っていきました。
しかし、もう少しというところで私はうまくだませたことが嬉しくなって、つい、だましたことを言ってしまいサメを怒らせてしまいました。 その仕返しで、私はワニに皮を剥かれてしまったのです。
それから、私が痛くて泣いていると先ほどここを通られた神様たちが、私に海に浸かって風で乾かすとよいとおっしゃったのでそうしてみたら、前よりももっと痛くなったのです。」

大国様はそれを聞いてそのうさぎに言った。
「すぐに真水で体を洗い、それから蒲の花を摘んできて、その上に寝転びなさい。」
そう言われたうさぎは今度は川に浸かり、集めた蒲の花のうえに、静かに寝転んだ。
そうするとうさぎのからだから毛が生えはじめ、すっかり元のしろうさぎに戻った。

その後、随分と遅れて大国様は因幡の国に着かれたが、美しい姫が求めたのは、大国様だったとさ。

この因幡の白うさぎの話は有名である。
また、因幡の白うさぎという銘菓も島根県にはあるので、是非1度食べてみて欲しい。

出雲という土地。
それは神様が集まる土地なのである。

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