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リーダビリティについて

リーダビリティは可読性と訳されますが、字面からたんに読みやすさくらいの意味だと思っておりました。できるだけ平易な言葉を用い、論旨も明快に、適度に改行するなど。要するに、ストレスなく誰にでもわかるようにする工夫、読みやすさのことなのだと。けれども以下のブログ記事にこうした考えを改めさせる示唆に富んだことが書いてあり、リーダビリティとは何か整理するために吐き出して参ります。人に読んでもらうために文章を書いている方の一助になれば幸いです。

内田樹の研究室
リーダビリティについて
2010-11-06 samedi


「すっと身体に入ってくる文章」

リーダブルな文章というのは「わかりやすい文章」ということとは違う。
「ロジカルな文章」というのとも違う。
ましてや「簡単な言葉が使ってある文章」のことではない。
どれほど難しい術語が用いられていても、どれほど入り組んだロジックが使われていても、「すっと身体に入ってくる文章」というものは存在する。

リーダブルな文章はたとえ難解であっても「それを『理解したい』という読者のがわの知的な欲望を活性化」するという。そのためには「読者に対する敬意」というメタ・メッセージが必要であると続きます。

メタ・メッセージというのは「その意味が相手に一義的に伝わらない限り、意味をもたない」メッセージであるという点で、その他のメッセージとまったく異なるのである。
「読者に対する敬意」もまたメタ・メッセージとして示される他ない。
それは「私が語るこの言葉は『ぜひあなたには理解してもらいたい』という気持ちを込めて語られている」と読者に告げる。
そこで語られているコンテンツがどれほど難解であっても、どれほど容易な接近を拒んでいても、「読者に対する敬意」というメタ・メッセージを感知できる読者に対しては、テクストはつねに開かれている。
リーダビリティとはそのことではないかと私は思う。

よく読書は能動的だと言われますが、「それを『理解したい』という読者のがわの知的な欲望を活性化」させる読者への敬意というあたりが、筆者と致しましては大変腑に落ちるところでありました。若い頃、一行も理解できなかったけどジャック・ラカン『エクリ』の日本語訳を貪るように読んだことを思いだします。あと、わからなくても面白ければいいという安部公房の言葉も。魅了されるものがないと読者は読むのを止めるといえば、当たり前のことですが。魅力あるコンテンツには読者は没入するものです。


読者への敬意

この一言に収斂するのではないでしょうか。省みるに、平易な言葉使いや明快な論旨などといってみたところで、文章に魅力がなければならないというわけですね、コンテンツに。わかり易いコンテンツという意味ではなく。

以前編集者の方がインタビューに答えて、くどくどと説明なんかして読者を舐めるな、上から目線でものを教えるような文章は読まれないのだということをおっしゃっておりました。なるほど。ヒット作品を連発している編集者だそうで、リーダビリティのことをおっしゃってらしたのだとわかります。

わかり易さを心がけるのは善意ではあるけれど、コンテンツの魅力とは関係がない、という点は良い気づきとなりました。以上たらたらと綴って参りましたが、お付き合い下さりありがとうございました。