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六尺塀

コミュニケーション

中学生の時空き巣に入られた。

実家には、六尺塀があった。
これは高さ六尺(180センチ余り)の板塀で
外からは庭や家の中が見えないようになっていた。
昔はこういう板塀がたくさんあったのだ。
さてそこで
これだと確かに外からは見えない、が、一旦、塀の中に入ってしまえば
家の中に土足で入る怪しいヤツも
家の中を手当たり次第にひっくり返している怪しい様子も
外からは見えなくなるのだ
と、刑事さんが言っていた。

空き巣に入られて数年後、台風でその塀が大きく傾いてしまい
それを機に低い金網のフェンスに変えた。
そうすると
こちらからは塀の向こうの仲通りも、裏の家も良く見えて
仲通りを歩いていく人は庭の花を眺めていく。
初夏には千両梨の木が小さな白い花を咲かせ
秋にはひょうたん型の実がたくさんぶら下がる。
バラの花が咲いていたし、ボタンの大きな花が重たげに咲いていた。
そのうち卯の花がフェンスにからんで、可憐な白い花を咲かせた。
フェンス越しに近所の人とおしゃべりすることが多くなって
「互いが見える」
というのは、ナカナカいいものだ、とわかった。
庭の花を眺めて他人が喜んでいるのもうれしいものだ。

内側を守ろうとするあまりに頑丈な防御壁を建ててしまうと
いざ何か起きた時には防御壁が助けを阻むことがある。
入りにくくしてある壁は、逃げようとする側にも立ちはだかる。
内側を守るためにはむしろ
外からも・中からも適当に、見えて・行き来できる方がいいと思う。

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