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芋粥

読書
勉強

以前、テレビで芥川龍之介を取り上げていた。
で、短編「芋粥」の件(くだり)で画面バックがサツマイモ入りのお粥に!
思わず「それ、違―う!」と。
「芋粥」は平安時代のお話でしょ!
サツマイモは江戸時代になってから日本に入ってきた作物だから!
そもそも原作では
「芋粥とは山の芋を中に切込んで、それを甘葛(あまづら)の汁で煮た、粥」となっている。
番組の中の人は芥川龍之介の「芋粥」を読んだのだろうか。
さてそこで山芋というのは
芋と言えば里芋だった時代に山で採れる芋を指した言葉。
民俗学で習ってなるほどと思ったものだ。
なぜなら北海道ならイモと言えばジャガイモだから。
イマドキの本州ならサツマイモ?それともやっぱり里芋なのだろうか。
ちなみにサツマイモの原産地はメキシコのあたりで、スペイン人がヨーロッパに持ち込んだものの寒すぎて上手く育たなかったようで、暖かいアフリカ、インドや東南アジアの植民地に持ち込まれて広がったのだと。
で、東南アジアから中国、琉球、薩摩へとはるばるやってきたので
サツマイモと言う名になったそうぢゃ。
ついでにジャガイモの話も。
ジャガイモはご存知の通り南米からメキシコにかけての高地原産で
冷涼で雨の少ない土地が適していて
日本には江戸時代初めころにオランダからやってきたものの観賞用で
本格的な食用としての栽培は明治時代になってから。
確かに花はきれいだし。
芽や緑の部分に毒があったせいだろうか。(六角精児の声で)

小説の中では
人々が楽しみにするような美味しい食べ物と書いてあって
それがどのように美味しいのかと言うと
「甘葛の汁」で煮た、つまり甘い食べ物だったから、だと思う。
平安時代、そうそう甘い調味料は無くあるのは蜂蜜や甘葛くらいなもの。
で、そのどちらも簡単に手に入るものではなかった。
だって、蜂蜜を取るには蜂の巣を壊さないと!刺されたら痛い!
で、甘葛の方は甘葛という植物があったワケじゃなくて
木に巻き付いている「ツタ」の樹液を集めて煮詰めたもので
メープルシロップのような、いわば古代のシロップ。
奈良女子大学が再現実験をしていて

木に登ってツタを取ってきて・切って・わずかな汁を集めて・煮詰めてと
人手はかかるし大変なことがわかる。
非常に上品な甘さだということだが
小説の芋粥では「甘葛の汁で煮た」となっているので
煮詰める前の樹液かもしれない。
冬の樹液は糖度13度だそうで、これはなかなかに甘いのではないか。
そして
山芋は自然薯だったのか大和イモだったのか、どちらにせよ
煮るとむっちりとした里芋の濃いような味わいで
粥の米は白米だったのか玄米だったのか分搗き米だったのかはわからないが
米の甘みと山芋の濃い風味と甘葛の甘みとが混然一体となって
要するに非常にリッチな味がしたのだろう。
材料の入手が簡単ではないことで
普通の身分では、そうそう口には入らなかったのだろう、と思うのだ。
今だと銀座の回らないお寿司屋さんでお好みで食べるとか?
できなくはないけど・結構気合が必要な感じ?
小説では芋粥を腹いっぱい食べたいという主人公をバカにしているが
いやいや芥川クン、実はキミが思ってたほど
チープな食べ物じゃなかったと思うよ
芋粥は。

これはウチの庭の野良山芋で、むかごが付いている。
あの酷暑を一杯に吸い込んで大きくなったようで
むかごご飯にしたら、さぞかしウマかろうと楽しみにしている。

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