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あるロッテファンが6連敗を受けてようやく吉井本を読んだ感想文 〜後編〜

後編です。前編をお読みで無い方は、是非↑から。(長いので要点だけでも…)



6.雰囲気やメンタルをとても大事にしている

①すぐ「精神論」と言われるが

6連敗の夜。「大敗の中、ベンチの声が出ていない」そう指摘したツイートが非難の嵐に遭っていた。いかにも「酔っ払ったおっさんが精神論を語っている」ように取れる言い回しであったためか。
ただ「ベンチの雰囲気が暗い」というのは良いことではないことは確かだ。(なぜコアなロッテファンは声を出す選手をすぐ煩いと揶揄し、中村選手のようなクールなキャラを讃える傾向にあるのか。甚だ疑問である。)
私自身は「声を出せば勝てる」のではなく「勝つために声を出す」のではないかと考えている。「声を出せば勝てる」これは非科学的であると思うが、「ベンチの雰囲気を明るくする」「モチベーションを保つ」「闘争心を表す」ということは勝つために、戦う上で重要であるはずだ。吉井さんはこの「雰囲気」や「ムード」に対してどういった考えがあるのか。

②吉井さんは「雰囲気」を本当に大事にしていた

私はこの本を読んで吉井さんがベンチの雰囲気やチームのムードを重要視していることに安心したと同時に、選手たちが本当に「プロ」なのか疑問に感じるほどスイッチが入ってないことがあったことに驚愕した。
連敗中には雰囲気を変えるために鬼ごっこのようなウォーミングアップをコーチに提案したり、石川慎吾選手のトレード加入で「チームの雰囲気は明るくなった」と述懐したり、懲罰交代はチームの雰囲気のためにやらないと強調したり。
「雰囲気」を見る眼は冴えており、それをよくしていく工夫を多く凝らしていたことがわかった。

③年に数回のミーティング

吉井さんは年に数回、チーム全体ミーティングを行った。基本的に全体ミーティングは不要であると考えていた吉井さんだが、必要に応じて開催した。1回目は開幕直前。ここで締めくくりで吉井さんはウケを狙った言葉で締めたがシラけたという。(ノリが悪いなぁ、選手たち。)
そして2回目は6月末。若手選手のみを集めたミーティング。
開催理由は、

「打撃の際にファーストまでの全力疾走を疎かにしていたり、試合前の国歌斉唱はベンチ前で聞くことになっているのに、ベンチ裏にいて出てこなかったりする場面に遭遇するようになった。そうした仕草から彼らが開幕当初に見せていた新鮮さが薄れ、ちょっと中だるみしているように感じたので」

ということ。大事なところであるから丸々引用した。
「一塁への全力疾走」なんてSNS上で指摘すれば非難の嵐になりそうだが、現場はそういった部分を見ているのである。そして実際、吉井さんはあくまでも対話形式でミーティングを行い、5連敗中のチームは翌日二桁得点を奪い勝利を収めた。
「偶然だ」「雰囲気など関係ない」「データにない」そう思われる方はそれでもいい。野球の見方は人それぞれだ。しかし、チームのトップである「カントク」が悪いチームの雰囲気を察知し、ミーティングを開き翌日快勝したという事実は強調しておきたい。

④「敗者の音」

「懲罰交代をしない」など、チームの雰囲気を大事にしていた吉井さんだが、「雰囲気」のために敢えて怒りの空気を出すことがあった。これは決して現役時代のような感情的なものではなく、すべて「計算」されつくされた「怒り」なのだ。
それはシーズン終盤。オリックスに目の前で胴上げを見せつけられた日である。先述した、「選手たちが本当に『プロ』のか疑問に感じるほどスイッチが入ってないことがあったことに驚愕した。」というのはここである。目の前で、独走を許していたとはいえ目の前で胴上げを見せつけられたにもかかわらず、試合直後選手たちはほとんど悔しそうな素振りを見せなかった、とある。そこで食堂にて吉井ミーティングが発動。食堂にいた栄養士の方の「あらかじめブチギレることを伝えていた」という冷静な吉井さんは、歓喜に沸くマウンドの声を対照的に、ゴミ箱を思い切り投げつけ、「これが敗者の音やぞ。おまえら憶えとけよ!」と大きな声を上げた。芝居を打った。「これくらいやらないと選手たちはわかってくれない」という記述。私はとてもがっかりした。本気で応援しているファンがいる中、目の前で胴上げを見せつけられて、ケロッとしていたという選手たちに。同時に吉井さんに同情した。そんな選手たち。大敗の中、連敗の中ベンチで声を出さなくなるのも必然である。


7.今のチームの改善点(注・個人的憶測、見解多)

ここからは本を読んで感じた今の千葉ロッテマリーンズチームの改善点を述べていきたいと思う。ここから先は素人の個人的な憶測や見解、思考が多く絡むことをご理解いただきたい。

①吉井野球において「クール」なのはいいことではない

選手はなぜ目の前で胴上げを見せつけられても悔しそうな素振りを見せなかったのか。選手たちも馬鹿ではない。悔しさを感じてなかったわけではないと思う。なぜか。そこに「井口野球」の名残を感じた。吉井さん自身も「一喜一憂は良くない」と述べてはいる(しかしそれはあくまで悪いときに選手を萎縮させないためで、いい時には喜ぶ仕草を多く見せている)が、井口前監督末期のポーカーフェイスぶりははっきり言って異常であった。選手がホームランを打ってもベンチで腕を組み続け、ハイタッチの手を出すだけ。よほどのサヨナラ勝ちでもない限り、あの濃い顔の表情を変えなかった。そして2022シーズン、5位に終わり最後の最後、「すべては私の責任。辞任します。」と言いチームを去った。さらに短い期間ではあったが鳥谷選手という球界でも屈指のポーカーフェイスぶりである名選手もいた。どこか「感情を強く出すことは良くない」といった考えが広まっているのではないのか。
しかし、井口監督も鳥谷選手も日本球界を代表する名選手であった。さらにその鳥谷選手本人も引退後、「阪神では(クールな選手を)演じていた」と述べていた。そこまでの成績を出していた選手でさえそのキャラクターとのギャップを感じていたのだから、今のロッテの選手たちに「クールなバッター」を演じられるわけがない。だったら吉井さんが求めるような姿になればいいのではないのか。「自分で考える野球」も、まずは態度で示さないといけない。

②吉井野球に順応できてない中村奨吾

そんな中、特にこの二人(井口・鳥谷)に影響を受けていると感じるのが不振にあえぐ元キャプテン中村奨吾選手であると感じる。
井口という選手を目標にプロに入り、チームメイト、そして自らを率いる監督になった。そして大学の大先輩である鳥谷とチームメイトになった。そして今、はっきり言って中村選手は吉井野球に合ってないのではないかと感じる。一つは、首脳陣が毎日日替わりで打線を組む中で「出続けること」を意識しているように思う点。そしてもう一つ決定づけたことが本の中にあった。

吉井さんは腹の中に何かを溜め込んでいると感じた選手を監督室に呼び、1対1で話す機会を度々設けた。野手だと安田、山口、藤原、中村
各選手を呼んだというが、「奨吾だけは何度か呼んでみたが、なかなか腹を割って本音を話してくれなかった気がしている」という。

この一文で、すべての答え合わせができてしまった気がした。なぜ腹を割って話さないのかは本人にしかわからないが、少なからずチームのトップである吉井さんが求めていることに答えてないのだから、噛み合いは良くないことがわかる。
奨吾そもそもの性格なのか、はたまた井口鳥谷を見て作り上げた野球選手としての哲学なのか。どちらにせよ吉井さんの下で野球をやる以上、今の奨吾の考え方は変えていかないと調子は上がらないのではと感じた。
(井口野球について悪くいうつもりはないです。むしろ良かったことが多いと思います。それについてはまた井口本を読みたいと思います。)

③「真面目ちゃん」は弱点

ポーカーフェイスな割には、メンタルが弱いと常々感じる。得点圏で打てない。でも2アウトランナー無しだと出塁できる。これは中村選手
だけではなく、他の選手にも言えることである。吉井さんが求めている「考える野球」を、真面目で内向的な選手たちが悪い方向で捉えてしまっているように思う。

茶谷選手は吉井さんに「考える野球」を促され、毎日日記をつけた。それから調子が上がったという。そう、「考える野球」は自分の中に想いをため込むのではなく、それを言葉や文字など表に出すことが重要なのである。なのに選手たちは、考えを自分の中だけに溜め込み、それをプレッシャーにしてしまっている現状である。

それが一番現れていると感じたエピソードが本文中にあった。吉井さんは、気軽に監督室に選手が出向いて欲しい、自分の考えを伝えて欲しいと監督室の扉を開けておいた。投手は何人か自ら出向いたというが、野手は一人も来なかったのである。投手出身の監督ということで仕方がないところはあると思うが、私は心底がっかりした。先述した安田山口藤原奨吾を「呼び出した」というのも自ら来なかったからである。
選手も考えてはいる。だから安田選手はフォームがコロコロ変わるのだろうし、山口選手も反対方向を意識しているのだろう。しかし、やはり自分の中に溜め込み、それを「焦り」に変換してしまっているように感じる。別に監督室に来なかったの一点でこれを語ることはできないと思うが、今の打線の状況を見ていればそう感じざるを得ない。

「なんとかしなきゃ」ではなく「俺がなんとかする」と思える選手が何人いるのか。コーチやチーム内で考えを共有し、議論することによって、自ずとその考えには自信がつくはずである。吉井さんが求めていることは、そういうことなのではないのか。「議論」が深まることにより、ポーカーフェイスとは無縁の、熱いチームになるのではないのか。静かな闘志など、表に出さなきゃなんの意味もないと思う。


④コーチとの連携

話が少し変わる。
吉井さんの考えは、1年間で広まったコーチと広まってないコーチがいると本を読んで感じた。なぜ根元コーチが一軍に上がったのか、(小坂さんのことはあったにしろ)なぜ小野コーチと黒木コーチの配置が変わったのか。それは本を読めばなんとなくわかると思う。
しかし、吉井さんの考えを理解できてないコーチはまだ全然いると感じた。それが、一番近くにいるはずの金子コーチ、そして福浦コーチである。
まずは金子コーチ。吉井さんが呼んだという割には、全然意見が合ってないように感じた。そして当の金子コーチ本人はラジオで愚痴る始末。吉井さんがやりたいこと、やりたい分担を、全然理解してないように思えた。打線の組み方、采配など。吉井さんは「金子コーチの方が経験があるから」と譲ってしまう。これでは統率も取れないと感じた。

そしてもう一人、福浦コーチ。こちらに関しては本文中でほとんどと言っていいほど名前が出てこなかった。ヘッドコーチですよね?

⑤吉井さんに足りない野手への自信

吉井さんは本文中でも、インタビューでも常々こう語る。「野手に関しては全くの素人」と。私はこの固定概念が少し吉井さんの持っている力を弱めてしまっているのではないかと感じる。野手に対する采配も、吉井さんはやりたいことがあるのは確かのだが、それを遠慮し、金子コーチはじめ周りの意見にながされてしまっているのだ。

それを一番感じたのは茶谷の4番起用である。吉井さんもデータをチェックし、茶谷に勝負強さを見出していた。コーチに反対され続け、「1回だけでいいから」と押し切って起用し大当たりだった。

さらに、吉井さんは打順の組み方について、MLBに倣い「予測OPS」の高い打者を上位に並べようとしたが、できず。ポランコの4番固定も、そもそも吉井さんが4番打者に対して「打線の軸になる大砲」というイメージを持っておらず、かけ離れていた。

吉井さんは、茶谷の4番起用から「旧習にとらわれずチーム状況に適した打線を組み立てていくことは、決して間違っていないと実感できた出来事だった」と振り返っている。今年の打線の組み方はどうなっているかわからないが、野手に関しての采配の多くを金子コーチに任せている印象を受けた。点が取れてない今、その現状を変えるべく、吉井さんももっと強く意見してもいいのではないか。少し「カントク」という言葉に吉井さん自身が萎縮しているのではないかと感じた。チーム全体の長なのだから、そして1年率いたのだから、コーチに対してはもっと威厳を持ってもいいと思う。


8.まとめと今後の期待

前編で、中村奨吾は固定ではない、安田の帰り場所を待っているようにも見えると述べたが、その後実際27日の楽天戦では中村選手がスタメンから外れ、昇格した安田選手がサードのスタメンに名を連ねた。
後編でも、吉井さんは雰囲気を大事にしていて、ミーティングで選手との対話を試み続けていると述べ、実際25日の6連敗後には緊急ミーティングを開いたという記事が出た。そこで吉井さんが「自分に何ができるかしっかり整理して、新しい気持ちで土曜日球場に来てください」と言った。
この二つの出来事はこのタイミングで吉井本を読んだ私にとっては答え合わせのようだった。
あとは、吉井さんの意図がコーチや選手に渡るだけだと感じる。選手の成長。技術の面に関してはわからないが、少なくともメンタル面に関しては、吉井さんが言う本当の意味での「考える野球」が選手に広まれば、「強いチームになる」と確信できた。
去年の「幕張の奇跡」は「奇跡」じゃなかったのかもしれないとまで本を読んで感じた。
今、我々ファンは、それをじっくり応援するしかないのだ。




しかしそんな私の澄み渡った見解と決意に一抹の不安を残すのが金子コーチのラジオの発言なのだが、それはまた別のお話…

素人の感想文に最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。
今後もよろしくお願いいたします。


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