見出し画像

エニシング工場留学日誌 Vol.1 (2020.1.6)

1週間ごとに泊まり込みながら行う「工場留学」。
いよいよ最初の1週間がはじまりました。

『東京から通いでは見えない生産背景を学びたいので、泊まり込みで修行させてください』という若手ファッションデザイナーの選択。

ふたつ返事で『さあ、いつからにするかぁ!』と受け入れた織布工場の社長。

板倉さんは職人志望でなくデザイナー。工場で修行するのは職人志望だけでなく、ファッションデザイナーがそういった挑戦をしてもいいと思うんです。もちろん受け入れる工場側の負担以上のメリットを生み出していくという姿勢が前提ですが。板倉さんとエニシングさんによる挑戦は、そういった可能性も見せてくれるんじゃないかと、ワクワクしています。

さぁ、ここからは板倉さんのレポートを原文でお届けします。

---------


エニシング工場留学日誌 Vol.1

エニシングさんでの留学の日々の記録を更新していきます。
まずは初日。

前日の夜中から夜通し運転して豊橋に。
仮眠はしたものの、寝不足は否めなかった…

到着して工場の皆さんとご挨拶。
工場長の影山さんはUSのヴィンテージが好きな方。
前川さんは面倒見の良いお姉さん。
田内さんは僕より年下ですが、頼りになる先輩。
皆さんが笑顔で迎えてくださって最高のスタートを切れました。

1週間(5日間)の滞在中に一通りの工程をやろうということで、整経(織機にかける経糸の準備)の作業から始まりました。

画像1

画像2


そもそも整経とは、
クリールに配置されたボビンまたはチーズ状の糸を、織物設計に基づき、経糸として必要な本数・長さ・密度・幅および色糸の配列順序などに従い、 一様な張力で整経枠やビーム、ドラム等に巻き取る作業をいいます。設計された織物の長さに応じて、ビームに巻き取る各々の糸の長さは同一長であること、設計された織物の密度や幅に忠実であること、全ての経糸の張力は一定で均一に保たれていることが必要になります。

まずクリール(木製の糸を掛ける装置)にチーズをかけるところから。

片面100個ほどを両面に。
正しい向きで芯に入れていく単純作業でしたが、終わる頃にようやくコツを掴むまで正直大変な作業。
柱の間隔がチーズぴったりで、これが慣れず…笑
伝わらないかと思いますが。

ようやくかけ終えたら、今度はその200本ほどの糸を順番通りに筬(オサ)に通す作業です。

画像3


まずは織機にかけて織る時に大事になる「綾」を作るために1本ずつ上下に分かれる筬に。

画像4


その次に2本.3本.2本.3本...と順番に入れていく。

画像5

ここでそれぞれを間違えると織る時に致命傷になるため、神経を使いながらの反復作業。寝不足の頭にはとても難易度が高かったです(自業自得)。

そしてようやくこれで整経機に巻く準備が完了。
結び目を作り、それをひっかけ、整経機にかけます。

画像6

画像7

手元のレバーを動かしながら、足元にあるバーを踏むとドラムが周りだし、糸を巻いていきます。写真には収めてないのですが、時計のように針が回って巻いた分の長さが分かるカウンターを見ながら、今回必要な経糸分(300yd/周×2)を巻いていきます。

この時、クリールから出てくる糸にゴミがついていないかを見ながら、筬に手を当てて、糸が切れてないかを振動で確認しながら、巻いていきます。
これが結構神経質になる作業で、とても大変です。
これまた見逃したりすると後々の作業に響いてきます。
経糸が切れたのを放置したら響くどころではないですが…

2周巻き終えたらまた次の棒にひっかけまた2周。
これを繰り返して、経糸の総本数分になるように約200本×4回+α繰り返します。(初日はタイムアップのため途中で引き継ぎ)
その後、ドラムからビームに巻き直し、整経の作業は完了。

恥ずかしながら初めての僕には何がエラーで何が織物に響いてくるのか、わからない状況で作業してたのが正直なところです。僕がこの日やったビームがそろそろ織機にかかるそうで、エラーが無いか震えてます。

しかし整経だけやる職人さんがいるのがとてもわかる体験になりました。
常に神経を張りながら、似た作業の反復。そして少しのエラーも見逃さない。まだ本数も少ないし糸も太くて切れにくいエニシングさんの整経は僕でもできたのかもしれませんが、これがもっと細い糸で本数が多かったりしたら専門の職人さんに頼むのが良いと感じました。ましてや織機を見ながらできるものではないです。

次工場に行く時は本格的に整経について、考えながら作業したいと思います。

製織までやったからこそ、整経の大切さも少しですが分かった気がしてます。まだまだヒヨッコなので全て理解するにはそれなりの歳月がかかりそうですが、一歩ずつ成長したいと思います。

というところで初日は終了。
長々と書きましたが、読んでくださった方、ありがとうございます。

--------


以上、板倉さんの最初の工場留学レポートでした。
また2日目をお楽しみに。


宮浦

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?