見出し画像

この出版社は、なぜもっと本を作れないのか? 動画で説明することにした

サンクチュアリ出版です。
サンクチュアリ出版は
丁寧に本を作って、丁寧に届けている出版社です。
だから月に1冊ずつ、年に12冊しか本を出しません。
なぜなら丁寧に本を作って、丁寧に届けているからです。

編集長の橋本圭右です。

んー。

我が社ながら、
そこでいう
丁寧って、一体どういうことだ?」
と思った。

出版社は多々あれど、
みんな仕事としてやってるんだから、
丁寧にやってるに決まってますよね。

丁寧に企画を考えたり、丁寧に原稿を読み返したり、
丁寧な口調でお店の人に領収書をお願いしたり、
怒らせてしまった著者に、
菓子折りを持って丁寧に謝ったりする。
こないだなんて、打ち上げ場所を丁寧に予約できました。
うん、
だんだん丁寧という言葉がゲシュタルト崩壊してましたね。
ちなみに卓球女王は中国の丁寧選手です。

そもそも
「丁寧な本作り」
っていうフレーズには、
「輝く未来」とか「元気な社会」とか「好きなことだけをやる」
などに似た現実感のなさ、曖昧模糊とした響きがある。

それなのに、
「とにかく丁寧にやってるから、
わたしたちは月1冊しか出さないんです」

なんてドヤ顔で公言して、
真意が伝わっているとでも思っているのか!

っていう、
我が社の宣言に対する
世間からの痛烈な批判を、
妄想の中で受け続けているうちに、
だんだん苦しくなってきていた。
いつかきちんと説明したいと思っていた。

そんな折、
ニューヨーク在住の副社長から、
インターネットの音声通話を通じて
こんな提案があったんです。
「サンクチュアリ出版が
どんなふうに“丁寧に”本を作ってるか、
DRAW MY LIFEで説明した動画を作ろうよ」

↑この字面だけを見ると、なんとなく六本木あたりのタワーオフィスでハイバックチェアに身体を預けていそうな雰囲気があるが、ここは一日中救急車のサイレンの音が鳴り響き、従業員が階段を登るたびに床が揺れ、西日が眩しくてPC画面がよく見えない(最近ようやくブラインドがつきました)古ビルの小部屋である。念のため。

DRAW MY LIFEという言葉をはじめて知った。

こういうのらしい

にゃるほど。
自分の生い立ちをナレーションしながら、
同時に、ホワイトボードに図解しては消すを繰り返す。
猛スピードなのは、編集による早回しだ。

動画は作ったことがないけれど、
いまや定年をとっくに過ぎた人生の大先輩たちでも
ユーチューバーをめざすような時代なんだから、
ファミコン世代の私にやってできないこともないだろう。
集中してやればせいぜい3日くらい?
朝シナリオ考え、昼イラストを描い、夜ナレーションを入れれば1日、
いや、すでに私の頭の中では完成図が出来上がっているから、
それを一瞬で具現化するアプリさえあれば一瞬で作れるだろう。そんなアプリがあればの話だが。

ドローマイライフ。

言ってみただけ。

さて、
今回必要な工程は、

1、シナリオを考える
2、イラストを描く。同時に撮影する
3、ナレーションを録音する。
4、編集(早回し)する。

どうやらこれだけっぽい

ので、

あまり深く考えずこれだけポチった。

あえてホワイトボードにしなかったのは、
弊社のホワイトボードが薄汚れていたのと、
直立式なので横からのアングルになり、撮影しにくそうなのと、
単純に「おえかきがっこう」が好きだったから。

絵はいっそ自分で描いてみようかとも思ったが、
私が描くとどうしてもドラえもんぽくなるので著作権の問題でやめた。

というわけで、
絵はこのひとに描いてもらうことに。

絵本作家のすずきみほさん

すずきみほさんは、MOE絵本創作グランプリという
たいへん名誉ある絵本賞のグランプリを受賞した
注目度の高い絵本作家さんである。

こんな絵本を描いたり、


サンクチュアリ出版では、この本の装画と挿絵も描いてくれた

こんなに才能あふれる人に、
書店向け注文書やポップやパネルなどの販促物を作ってもらっているんだから、もったいな…
いや、我が社の営業部は層が厚い。

ドローマイライフにおいては
イラストはもちろん重要だが、
ナレーションも同じかそれ以上に重要そうだ。

社内の未経験者にやらせたりしたら、
スーパーの店内アナウンスのような感じ
になるような気がする。

誰に頼もうか? 声優? ウグイス嬢? 歌手?

声が素敵な人をいろいろリサーチした結果、

お願いしたのはこの方、

大人気ユーチューバー、文学YouTuberベルさんである。

かわいいのに知的で、透き通るようなのにずっと印象に残る、お声の持ち主。

我が社も、
かわいいのに知的で、透き通るようなのにずっと印象に残る出版社になりたいから。

しかし
「ドローマイライフのことをよくわかってないんですが」
という前置きをした上で、「ドローマイライフのナレーションをお願いできますか?」なんていう社会人にあるまじき失礼なメールを送ったので、
たぶん無理だろうなーとあきらめていたのですが、
快く引き受けてくださっちゃった。

最高のイラストと、最高のナレーション。
んもう

ドローマイライフ

は完成したようなもんじゃないか。

原稿だけはすぐに書いた。
ちゃんと
原稿を読み上げる時間=動画の尺
だと気づいていたから、
すでに原稿は自分で朗読してみて、
大体いい感じの尺になるよう、ちゃーんと長さを調節してある。

というわけで、もうできた。
完成形が見えたから、しばらくこの仕事を放置することにした。

童話ウサギとカメでいうところのウサギ戦略である。
作品はゴールが見える地点まできたら、いったん寝かせることにしている。
時間を経過させないと、見えない気づきがあるからだ。
地道な努力家のカメは賞賛されるかもしれないが、
この世には、カメには見えない世界だってある。

でもごめん、

寝かせたところで、

なんにも見えなかったので、

撮影します。

撮影にはiPhoneと、小さな三脚を使用します。

広報部の山口慶一さんから借りた三脚。「1000円くらいした」とのこと


すずきさんの試し書き

わざわざ絵本作家さんにやっていただくような仕事でもないような気もしたが、
「女子高生がファミレスのナプキンにメモったようなイラスト」
とお願いしたところ、こんな絶妙な絵を描いてくれた。
簡単そうに見えて、とても素人には描けない。

試し書きもうまくいったところでいざ撮影!
と意気込んだところで、
いきなりつまずく。

DRAW MY LIFE
という見せ方の性質上、
俯瞰で撮影する必要があるのだが、
いくらがんばっても、
「おえかきがっこう」の真上に、
iPhoneのカメラを固定することができない。

三脚を限界まで伸ばしても、
画面に「おえかきがっこう」がうまくおさまってくれないのだ。

…とっさに、
「チョウチンアンコウのように
私のおでこに三脚を貼り付けて撮影する」
というプランを思いついたが、
人間が支えたら三脚の意味がまったくない
ということに気づいて却下。

結局、
デスクトップのPCモニタと三脚を
ガムテープでぐるぐる巻きにするという荒業によって
刹那的に
「おえかきがっこう」と「すずきみほさんの手」が、
画面におさまる構図になった。

しかし建物が古く、近くを従業員が通り過ぎると、
どうしてもデスクが振動する。
振動するとどんどん画面がずれていくので、
撮影が終わるまでは、
両手を広げて通路に睨みを効かせ、人の通行を止めることにした。
まるでドラマのロケ現場を仕切るベテランADである。

何人たりともここを通してなるものか。

よし録画ボタン!
とテンションをあげた段階にきて、
大きな勘違いに気づいた。

私はてっきりプリントアウトした原稿を
すずきみほさんに見せながら、
1点1点イラストを描いてもらえばいいや、
と高をくくっていた。

しかし、どうしたものか、
DRAW MY LIFEというものは
イラストを描いては消し、描いては消し、をくり返し
一発テイクで最後まで描き切らないといけない
即興的な表現方法なのである。
描いている手が映るため、
バラバラに撮影して、編集でつなぎ直す、
ということができないのだ。

おまけに、
1シーン描き終わるスピードと、
1シーン読み上げるスピードが、
だいたいそろってなきゃいけない。

これが、

DRAW MY LIFE

画像はイメージです


このあとも
つまらない
トライアンドエラーを死ぬほどくり返したのですが、
それらを面白く伝える筆力を持たないため、
ここでは一気に3ヵ月後。

着手から約3ヵ月経過したところで、
ようやく最初の映像が完成しました。

さらにここから
「はじめての動画編集に挑戦!」
とかはじめちゃったら、
年を越してしまいそうなので、
映像編集のプロにお願いしました。

粗編集をかけた映像に
文学YouTuberベルさんに声をあてていただき、
さらに映像編集の方に音楽を入れてもらって、
いよいよ完成したのがコチラの動画。


いかがでしょうか。

いろいろ細かい点で、
気になるところはあると思うのですが、
ここまで書いたとおり、
勘で作ったものなので許してください。

それでもちゃんとこうして形になってるのは、
これはもうひとえに、力を貸してくださった
イラストレーターさん、ナレーターさん、動画編集さんのおかげなんです。

今回の教訓としては

できないとわかったものは、
なるべくプロにお願いしろ。

です。

しっかし、
You Tubeの動画ってやっぱすげえ。
こんなに手間も時間もお金もかかる代物が、
無料で見放題だっていうんですから、
21世紀って最高。
ありがとう。


この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

note.user.nickname || note.user.urlname

気に入ってくれたら、サポートをお願いします!

ほんと? 弊社もあなたがスキです
21

サンクチュアリ出版 公式ノート

本をもっとシンプルで面白いものにしたい。難しいことをできるだけわかりやすく伝えたい。そして、世界でいちばん読者に近い出版社でありたい。そんな思いから、1年間に出版する本はわずか12点。そのぶん1点1点丁寧につくって、丁寧にお届けする出版社の公式ノート。ほぼ週1回更新!

生み出せ!

サンクチュアリ出版はどんなものを、どんな考えで、どうやって生産しているのか。その奇抜な発想について、次々と発信。
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。