見出し画像

「やべぇ奴キタ」 北朝鮮幹部の年末人事で韓国側が警戒する"軍の実質トップ" <キム・ミョンソンの北朝鮮インサイド>

筆者=キム・ミョンソン(SAND南北コリア研究所)
写真=朝鮮中央TV

パク・ジョンチョン党軍政指導部長が、北朝鮮軍部序列1位にあたる「労働党中央軍事委員会副委員長」に復帰した。

北朝鮮軍部を担当する労働党中央軍事委員長は金正恩が務めている。党中央軍事委員会副委員長は金正恩の後継者時代(2010年~2011年)に誕生した役職で、実質的に北朝鮮軍部を総括する重要な役職である。新年に韓国を狙った挑発的な軍事行動が強化される可能性が高いという見方が出ている。

パク・ジョンチョンは先月26日から30日にかけて平壌の労働党中央委員会本部庁舎で開催された党中央委第8期第9回全員会議で「中央軍事委員会副委員長に選出された」と、朝鮮中央通信など北朝鮮の官営メディアが先月31日に報じた。彼は同時に党書記にも任命された。

2022年12月の党全員会議で解任された中央軍事委員会副委員長および党書記のポストに1年ぶりに復帰したことになる。砲兵の専門家であるパク・ジョンチョンは昨年8月、軍最高階級の「元帥」を付けて軍政指導部長の肩書で公式の場に再登場した。

金正恩が委員長を務める党中央軍事委員会では、副委員長が軍部序列1位である。今回も2022年時のように、今リ・ビョンチョル-パク・ジョンチョンの共同体制に再編された。ただし、李副委員長が北朝鮮最高指導部である政治局常務委員でもあるため、実権はパク・ジョンチョンより強いと評価されている。いっぽう、パク・ジョンチョンは今回の全員会議で、政治局においては常務委員より1ランク低い政治局委員に降格した。

パク・ジョンチョンの中央軍事委員会副委員長職の復帰により、新年には韓国と米国を狙った北朝鮮の挑発的な軍事行動がさらに拡大すると予想される。なぜならパク・ジョンチョンは、過去に北方限界線(NLL)以南への弾道ミサイル発射など、2022年末に集中的な強硬な挑発局面を引き起こしたことがあるからだ。

パク・ジョンチョンの復帰は、金正恩がこの全員会議で新年に「強圧的で攻撃的な超強硬政策」を示唆したことと無関係ではないと見られる。韓国の国家安全戦略研究院は、「砲兵司令官出身のパク・ジョンチョンの中央軍事委員会副委員長の復帰は、伝統的な対南挑発の準備を示唆している」と分析した。韓国国家情報院も28日、パク部長の再起用などを根拠に、北朝鮮の新年の挑発の可能性が高いと評価した。

金正恩が全員会議で「戦争準備の完成」を目指す軍需産業部門の役割を強調した中で、北朝鮮の核・ミサイル開発を担当する党・軍の主要幹部たちの地位・役職は高まった。チョ・チュンリャン軍需産業部長は党書記に任命され、政治局候補委員から委員に昇進した。

パク・ジョンチョンや新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射を指揮したチャン・チャンハ ミサイル総局長、キム・ジョンシク軍需産業部副部長、リュ・サンフン国家航空宇宙技術総局長、キム・イルホ金正恩国防総合大学総長などは、党中央委員に選出された。

北朝鮮の経済政策を率いる内閣の構成員は、かなりの数が交代となった。内閣副総理兼農業委員長にはリ・チョルマン、内閣副総理にはキム・ミョンフンが任命された。韓国の大臣に相当する国土環境保護相、鉄道相、保健相、採掘工業相なども新たに任命された。金正恩が昨年8月に平安南道安石間歇地の水害被害に関連して内閣を厳しく非難したことに対する措置である可能性がある。

金正恩「いつでも武力衝突が可能」 立て続けに対南脅威


金正恩北朝鮮国務委員長は、「敵たちの無謀な挑発策動により、いつでも武力衝突が生じる可能性があることは既定事実である」と、直接的な対南脅威の発言を行った。先に昨年12月30日に南北関係を「戦争中の交戦国関係」と規定し、翌31日には韓米に責任を転嫁し、武力衝突の可能性まで示唆したことになる。

さらに金正恩はこの日、軍の指揮官たちに、「(最近の安全保障環境などの)情勢は、わが国の安全と平和の守護のための宝剣をより鋭く研ぎ澄まし、軍の準備態勢を完璧に整えるべき緊迫性を示唆している」と主張した。そして、「わが軍は、決然たる敵に対する意識と、徹底して敵を定める視点を持ち、敵たちのどのような形態の挑発も容赦なく打ち砕くべきだ」などと述べた。

韓国内では、北朝鮮が今年4月の総選挙などを狙って大規模な局地挑発に出るための「大義名分作り」に乗り出したという観測が出ている。

また韓国軍当局は、北朝鮮が軍事境界線(MDL)周辺の対応態勢を探るために、新型無人機などを大量に南側に侵入させる可能性があるとも見ている。また、MDL近くでの大規模な砲兵射撃訓練も挑発シナリオとして挙げられている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?