理想と現実のサラブレッドことアニメ

アニメ映画が好きで、Netflixとかに新作が来ていると必ず観る。好きな理由は、自分の憧れる人生と実際の人生をどちらも大切にしてくれているように感じられるからである。

アニメはもちろん現実ではない。ただし「空想世界のような作品があるから」とか「現実にこんな人間はいない」とかそういうことではない。あえて描かれずに捨てられる情報がある、という意味で現実ではない。
抽象化された季節や恋愛や冒険を、鮮やかな色彩とドラマチックな展開で描き出してくる。まるで過去のように美化された擬似世界が、今この瞬間として味わえる。

想像の余地をたっぷりと残した本とは違い、ぼんやりとした理想が現実に起こるとしたらこういうことなんだろうなと、少しだけ強制力をもって憧れさせてくる。

それに比べてこの現実というものは、あまりにも具体的である。匂い、質感、雑念。感じたいものだけが高純度で入ってくる瞬間などあまりにも稀で、生きている限り脳はぐちゃぐちゃなグラデーションで提示してくる。

こんなに感動的な瞬間はそうそうない、こんなに心に響いた友人の言葉は忘れない。その時はそう思っていても、本当に残念ながら思い出の倉庫で埃をかぶり存在しないに等しいものもある。

いつから「これから人生で何が起こるか分からない」ことを楽しみではなくなったのか。生きて築き上げてきた自分の持ち物をどれも失いたくないあまり、身軽に走り出すことはもう叶わないのか。後先考えることができるせいで、単色になっていないか。

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