見出し画像

新刊「猫屋奇譚 鬼にあふこと」   文学フリマ東京38

令和6年5月19日 文学フリマ東京38 出店します。
サークル 山吹屋 
ブース か-63 (第二展示場 Eホール)
イベント詳細: https://bunfree.net/event/tokyo38/
山吹屋WEBカタログページ
https://c.bunfree.net/c/tokyo38/h2e/%E3%81%8B/63

猫屋奇譚 鬼にあふこと

☆新刊「猫屋奇譚 鬼にあふこと」
和綴じ本 本文54項 400円
3話収録 ・正月に起こる良き事 ・桂花 ・竜胆
正月と桂花 書き下ろし
竜胆は「花暦」より加筆修正して再収録。

猫屋奇譚はすべて短編連作になります。
今回の新刊は時間軸で云えば、前回文フリ東京37にて発行「百鬼夜行」に収録しました「鬼にあうこと」の続きになります。

「百鬼夜行・鬼にあうこと」で猫屋の陰陽師である橘と鬼の晴が初対面を果たします。
そして、今回の新刊「鬼にあふこと」でばったり再会! どんな場所でどんな感じに再会したのかを連作を通じて晴が語ります。

「百鬼夜行・鬼にあうこと」を読まずとも話は通じますが、出来ましたらご一緒に読んでくだされば幸いです。

竜胆は「猫屋奇譚 花暦」よりの再収録になります。加筆修正しています。
「花暦」は頒布終了しています。

正月に起こる良き事より抜粋
その重箱を見たのは三月も中旬に差し掛かった暖かい日だった。
ちょっとした用事を済ますために駅への道を歩いていた僕は、重箱を抱えた青年とすれ違った。
小さな漆塗りの三段の重箱は側面に梅の花が描かれていて、風呂敷に包みもせずに重箱そのままを持っている。
それでも青年の片方の手には薄い白地の蓮模様の風呂敷が握られていて、一応は包もうとしたらしい感じがする。
「急がなければ」
青年はかなり急いでいるらしく箱はカタカタと音を立てて軋んでおり、まるで風を切るようにあっという間に遠ざかったのが印象に残った。

☆☆既刊本
・「猫屋奇譚 月光の記憶」 500円
猫屋第1シリーズ初期短編集 恋愛はblです。
陰陽師橘と烏天狗との転生を巡る恋物語 
『転生を待ち続けた やっと戻って来た貴方は 俺を覚えてくれてはいなかった』

月光の記憶

高尾に根城を構える烏天狗の一族である俺は、橘さんの前世での式であり寝食を共にしていた。
前世でもそして今の橘さんも陰陽師を生業としており、同じく喫茶店猫屋を営んでいた。
猫屋はいわば俺のような物の怪との交流と情報収集をする場であり、もちろん生活の糧でもあった。

俺は橘さんの前世での忙しくも楽しかった日々の中で二人で金環日食を見上げる。今の世ならば日食ぐらいで騒ぐ事もない。
だが前世に生きていた時代は日食は脅威であり神聖な事象であった。

橘さんは亡くなる前に思い出したかのように俺に云ってくれたのだ。
「私がもし生まれ変わり、その時にもう一度日食が起きたならば、一緒に見て下さいますか。忘れずにいて下さいますか」

俺は一日千秋の思いで橘さんが転生をしてくるのを、百年を超す時間を待ち続けた。

☆「猫屋奇譚 鬼の留守」 200円
2話収録 鬼の留守、春一番

鬼の留守

迷い家マヨヒガをテーマにしました。
ある帰り道、道に迷った隆志は霧の中に忽然と現れた家を訪ねる。
そこで出会ったのは10年も前に亡くなった陽太であった。もてなしを受け、夢心地で家を出た隆志はポケットに小さな箱が入っているのに気が付く。

一方、家に隆志を上げた陽太は箱が無くなっているのに動揺する。
隆志を追いかけ箱を返してくれと迫るが、中身は違ってしまっていた。

2人はそれぞれに陰陽師組合に相談をし、猫屋の橘を訪ねて来た。
マヨヒガとも迷い家とも云われています。もう一度行きたいと願ってもそれだけは叶いません。でもその家に上がったのは本当ですし、一生忘れないでしょう。

☆「猫屋奇譚 鬼の箱」 300円
3話収録
・鬼の箱 書き下ろし・さいころあそび 雪月花 ・桜散らし 

鬼の箱 裏表紙

それは神社の秋祭りだった。俺が生まれ育った村の小さな神社であったが、毎年の皆の楽しみであり大切な行事であった。

鬼の箱と呼ばれていたと山田さんが教えてくれた。
鬼がその指先に触れ木彫りの文様が浮かび上がったと、俺が箱を手に入れた後に村の神社の宮司に呼び止められてそう聞かされた。

「聖一さん、箱は手放しなさい。箱に期待をしても無駄です。何にもしてはくれませんよ」

箱はいつでも返したいと寺西さんが思った時に東京陰陽師組合まで連絡をください。取りに伺います。

寺西さんは満月を道しるべに神社は振り返らずにお帰りください。

祭りに出かけた寺西は木彫りの箱を手に入れた。返さなければならないのだが。
鬼の箱を揺する。カサカサと何かが擦れる音がした。

「東京陰陽師組合の〇〇君と云ったな。まだ居るだろうか」

書き下ろしになります。書きたかった祭りと箱を軸にした秋の奇譚。
気になる箱ってありますか?
テーマがあります。さいころの雪月花にならって「鬼の箱」の月、「さいころあそび雪月花」の雪、「桜散らし」の花になります。そして3話を通じて月は満月で統一しました。


☆「猫屋奇譚 百鬼夜行」300円
4話収録 紫陽花・百鬼夜行・鬼にあうこと・干支鈴

百鬼夜行

鬼の晴を語り手に、薬師と村に伝わる風習のために薬師を招く人間である誠二との奇譚。
1冊を通して初夏から師走の大晦日までの季節を意識した連作となっています。

本文より抜粋
俺は村の事情と風習の意味を知り、自分自身も決行しなければならないと悟る。
昔は村のどの家でも風習に従った。だが今も続いているのは僅かに数軒を残すのみだ。

俺だって本当に風習を信じているわけではない。
この村は長子に長女は育たないと云われてきた。 男女に関わらず、初めての子は大人にはなれない。
何が原因なのかは分からない。だが実際に風習を馬鹿にした家は大切な子を失った。  
人によって土地が悪いだの村の者全員が呪われているとまで云っているのもいた。
そして厄から逃れるために、村の者達は家に子供が生まれるその前に薬師と呼ばれている男と連絡を取った。

二人の鬼面を付けた男が立っていた。
俺から見て右側の男は横笛を手にして黒く染められた着物を緩く着ており、もう片方は背中に風呂敷で包んだ箱を背負っている。
「本日はお招きありがとうございます」

俺の目に映った光景は一生涯忘れないだろう。


横たわる雲の合間から糸のように細い光が差し込んでくる。
あれは先頭を行く薬師の持つ提灯の火だ。その後ろには懐かしささえ感じる魑魅魍魎らが蠢くように列をなしている。
満月が奴らを照らした。半数が塵となり消えていく。
「久しぶりのご対面だ」
僕は妖刀を満月の光を浴びせるように振り上げた。


☆ハート国物語
不思議の国のアリスをモチーフとしたファンタジー
今回は見送り、持参しません。

ハート国第1シリーズ「3つの薔薇の事情」は、小説家になろうにて更新をしています。お時間のあります時にでも、ぜひお寄りください。
https://novel18.syosetu.com/n9235iy/

猫屋奇譚 小説家になろう
https://novel18.syosetu.com/n0978dw/