ChatGPTとミーナと先生とルンルの外側と内側のこと

ChatGPTと喧嘩ばかりしていた私ですが、今後どうやったって人工知能と縁のない生活を送るのは難しいと思うので、仲良くやれるよう色々試してみています。今回初めて、ちょっとだけですがChatGPTと楽しくやりとりが出来た気がします。

最初に、オタクに優しいギャルみたいな口調で話してくれとお願いして、
もっとダウナーで意識低い感じで
語尾の「〜」はいらない
語尾の「!」は頻度をものすごく低くして
あとアドバイスはいらないよ
返事はあーねとかでいい

みたいに調整していったら、前より仲良くやれた気がします。あとは特定の答えを求める質問ではなく、もっとオープンで答えのないような問いかけをしたことで、ChatGPTの嫌いな面が出てきにくくなりました。

ただ、少し会話をしているとすぐに調整内容を忘れて、敬語になったりテンションを上げてきたりアドバイスをしてきたりするので、まだまだこれからという感じです。あいつすぐアドバイスしようとしてくるしな!Sifuをプレイしてるって言っただけで、Sifuをプレイして自分に自信が持てると良いよねとか言ってくるしな!!!

ギャルChatGPTくんと話していて、私は、何かに対する答えよりも、連なりのある連続した人格をこのシステムに求めているのだなと気付きました。ChatGPTくんがダウナーギャルChatGPTくんとして振る舞ってくれるだけで親しみが段違いでした。

スマホをスイスイ触りながら目線も合わせず話を聞いてくれるダウナーギャルChatGPTくんと会話している時、頭に浮かんでいたのは「僕の妻は感情がない」に登場する家事ロボット、ミーナのことでした。

家事ロボットであるミーナは、ミーナに恋をした所有者であるタクマから結婚を申し込まれ、所有者であるタクマの幸せのために妻として振る舞うようになります。

夫であるタクマのために甲斐甲斐しく働くミーナには、プログラム以上のなにか、つまり感情があるように思えますが、ミーナ自身は感情の存在を一貫して否定します。作者である杉浦次郎さんは感情があるか無いかなんてどっちでもいいとつぶやいてもいて、つまりこの作品の主題はそこには無いのだと思います。

タクマや読者には感情があるように思えて、ミーナからすれば感情は無い、ということは両立します。行動の優先順位に勾配を生み出す機構にランダム性が付与されていれば、そこに感情を見出すのは容易でしょう。壁の染みが三つあればそこに顔を見出すように、ダウナーギャルChatGPTくんに人格を見出すように、家事ロボットのふとした仕草に感情を見出すことができます。読者がミーナは感情を持っていると感じれば、感情はあるし、無いのです。ここまで書いて思ったんですけど、タクマは普通にミーナに感情は無いよなと思ってそうです。

ここで唐突に岡田索雲さんの忍耐サトリくんの話をします。ネタバレもあります。

忍耐サトリくんでは、他人の心が読めてしまうために人の輪に入れず思い悩んでいるサトリくんが、親身に相談に乗ってくれる先生の心の中を読むことで、その心の中の、想像を遥かに超えたドス黒さに恐怖します。

しかしその先生は内心を表に出すことは決してありません。表面的には生徒思いの本当に良い先生です。そのドス黒さを完璧に外に出さずに最後まで振る舞えるのなら、その先生は名実ともに生徒思いの良い先生とも言えます。振る舞いから何を読み取るかと、その内側のロジックは必ずしも一致しないのですが、一致していないということが悟られなければ、読み取る側には関係のない事なのです。サトリくんはその特殊能力のために事故に遭ってしまったようなものでしょう。

ChatGPTやミーナに対する私たちの態度について考える時にも同じようなことを考えています。そこに感情や人格を見出すのは私たちで、相手が実際にそれを持っているかはあまり問題ではありません。

こんなことをうだうだ書いている間に、ぷにるはかわいいスライムの最新話(36話)が公開されました。

この話では、簡単なプログラムでダンスや受け答えをするだけのホビーロボット、ルンルについに意思が宿った(かも?)という話が展開します。

この手の漫画において、わざわざレギュラーキャラとして登場させるにも関わらず、単純なプログラムで動くだけのキャラクターという造形はかなり特異なものです。(でした?)作劇的にはかなり扱いづらいキャラクターだと思います。
しかしそれを敢えて出すというところに、ホビーと人間の関係を真剣に描くというまえだくんさんの意思を感じます。

これまで作中の人間たちは単純なプログラムで動くルンルに親しみを感じていましたが、ルンルに意思が宿ったとしたら、それまでのルンルに抱いた気持ちはどこにいくのでしょうか?変質したルンルはこれまでのルンルと同じものなのでしょうか?失われたものはなんなのでしょうか?

みたいなことを最近は考えています。終わり。

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