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面白くないわけではない! でも微妙!(本当に微妙!)ペルソナ5タクティカについて

ペルソナ5のスピンオフSRPG。ペルソナ5タクティカ(P5T)をプレイしました。

書いてたらダラダラと長くなってしまったので以下の内容をまとめると「面白くないわけじゃない、面白かったと思う、でもなー、なんかこう煮え切らない微妙なゲームだったなー。なんだろうなーこれは」ということを書いています。

以下本編。

お馴染みの怪盗団が「キングダム」と呼ばれる謎の異世界で活躍するこのゲームはペルソナシリーズ初のSRPGです。リファインされたキャラクターデザインは過去の派生作であるPQともまた違った味わいですが魅力的。今回新登場するエルと春日部統志郎も含めて、イラストも3Dモデルもクオリティが高く、頭や手足の先端が大きく強調されたデフォルメは、このゲームにおいて効果的に働いていたように思います。動きも良い。ベルベットルームのラヴェンツァは最高です。

大元の女神転生シリーズとしては魔神転生やデビルサバイバーなどのSRPG作品も過去ありましたが、今作はいわゆるXCOM系と呼ばれる、射線と位置取り、カバーアクションが重要になる遠距離攻撃主体のシステムになっているため、プレイ感はかなり違います。

P5は怪盗団の面々がカバーアクションを駆使してパレスを攻略するシーンが特徴の一つであったので、SRPGにするにあたってXCOM系のシステムとの相性の良さを感じました。

無防備な敵を攻撃してダウンさせ、さらに三人の出撃メンバーで取り囲むことで繰り出せる総攻撃システムはP5の世界観とシステムが綺麗に融合したメカニクスだと感じました。三人で作り出した三角形の中に他の敵を巻き込めるので、マップを大きく利用することで巨大な三角形を作って敵を一網打尽にできます。また、二手に分かれて進軍するマップでは分断されていながらも総攻撃でお互いを助け合っている感覚を味わえます。

全体的にP5のフレーバーとXCOM系のシステムを上手く組み合わせていると感じていますが、どうしても一部綻びを感じるところがあるのも事実です。

このゲームではガード状態になっているユニットに攻撃をするとダメージ軽減、ガード状態でない無防備なユニットに攻撃をするとダウンを取って1More(追加アクション)をゲットできる仕様です。このガード状態の有無が分かりにくいケースがちょくちょくあり、プレイのノイズになります。
壁際に張り付いている敵はガード状態で、スキルで魔法攻撃を一度加えることでガード状態を解除できるのですが、カメラの操作のしにくさもあって、今どの敵が解除されているのか分かりづらいです。また、高台にいる敵は銃撃で攻撃しても基本ガード扱いなのに、魔法で攻撃すると無防備扱いになるケースもあります。その他、色んな条件の組み合わせで、ガードが解除されると思ったら解除されなかった、という場面に何度もでくわしてしまいました。

また、カバーアクションは、壁際に張り付いていてガード状態になっていれば、射線を完全に切っていると攻撃は無効、もし攻撃を受けてもダメージ軽減という仕様ですが、たとえ真後ろから攻撃されてもダメージが軽減されます。この仕様はプレイしていると感覚的にかなりの違和感があります。これは完全な邪推ですが、無防備な敵を攻撃で1Moreを仕様に組み込みたい→隠れている敵を無防備にする手段が必要→近接攻撃で隠れてる敵をぶっ飛ばせるといいのでは?→しかしそうすると近接攻撃したキャラが無防備になってしまう→壁に張り付いてさえいれば必ずガード状態ということにしよう、みたいな仕様決定の流れを感じます。全く的外れかもしれませんが。単にユーザーに理解しやすいカジュアルなシステムにするための仕様かもしれません。

佐倉双葉さん

そうです。P5Tはとてもカジュアルなゲームです。各キャラの装備品やサブペルソナのシステムがかなり簡素化されていて、普通にプレイしていると、戦闘中どのペルソナを装備させているか意識するシーンはほとんどありません。難易度ノーマルでプレイした限り、じっくりカバーを確保しながらほとんどのステージは苦労なくクリアできてしまいます。各ステージに設定されたターン数以内にクリアすることで経験値ボーナスが入るのでプレイヤーはある程度急いで進軍することになりますが、プレイ前に想像していた、迫り来る敵軍からの銃弾をカバーアクションで掻い潜りながら華麗に敵を撃破していくプレイ感とは程遠いものになっています。

各キャラのスキルに対応した属性と状態異常が割り振られていますが、その強さはかなり偏っていて、具体的に言えば1ターン行動不能の氷結状態にできるブフ系が極端に強くなっています。更にブフ系を持つ裕介は高移動力・長射程でもあり、とにかく祐介が強すぎる。ゲームバランスは大雑把と言わざるを得ません。

敵のバリエーションも少ないため、敵への対処は序盤から終盤までほとんど変わりません。代わりに中盤以降は敵よりもステージギミックと戦っている感が強くなり、1ターンで何度も何度もリフトを上げ下げしていると、これは私が怪盗団を操ってやりたかったことではないという気持ちが強くなります。あとこちらの行動決定フェーズなのに足を踏み入れた瞬間に発動する監視カメラギミックは本当に萎えました。

佐倉双葉さん

ゲーム全体の構成としても、最大の盛り上がりは3つ目のキングダムの終盤であり、その後のラスボス戦に至る流れは完全な蛇足に感じました。ストーリー的に大きなスピンがあるわけでもなく、しかも決して楽しかったとは言い難い過去ボス戦を同じような流れで再戦させるのはどうにかならなかったのでしょうか。特に2つ目のキングダムのボスとの再戦はもう少し簡略化されていてほしかったところです。ゲームとしてのボリュームは小さくなっても、3つ目のキングダムを攻略した時点でそのままラスボス戦に突入してくれた方が、私の満足度は高くなったように思います。

ストーリーに関しても、良くも悪くもカジュアル感を強く感じました。今回フィーチャーされる統志郎とエルはキャラとして存在感もあり魅力的であり、ストーリーも決して悪くない、ちゃんと面白い。P5のスピンオフとしてちゃんとやってる!とは思うのですが……思うんですが………思うんだけどさあ………物足りない!となってしまいます。一体このカジュアル感の正体はなんなのでしょうか。

起伏が控えめな展開、明らかなミスリードに対してツッコミも入らずに素直に進んでいく筋立てに、これがP5などのメインストーリーの中の1エピソードとしてであれば、とても印象的なものとして好意的に受け止められたのになあという不完全燃焼感が残ってしまいました。この辺りに関しては、少なくともこのゲームにおいては難易度が過度に優しいことも感情移入を妨げていると感じます。やはり作中のキャラが過去のトラウマを乗り越えるのであれば、演出としてもある程度の歯応えを感じさせることは必要だと思います。

私がペルソナとその派生シリーズに感じている魅力を一言で表すと「過剰な丁寧さ」です。ナンバリング本編のそれはもちろんとして、P4Dの曲終わりに挿入されるペルソナ演奏シーンなどは、こんな仕様入れる必要ある??と最初はなりながらも愛すべきポイントになりました。P5Tはもっと小さくあるべきゲームを高めのフルプライスで売るために水増しして薄まったゲームのように思えてしまいます。決して悪くはない。面白い。でも薄味。微妙!私にとってはそういうゲームでした。

佐倉双葉さん

あああとついでにもう一つ!UIがかっこいいのは良いんですが、画面遷移などに微妙にウェイトがあって、プレイ中ずっと操作にモタッと感を感じさせられるのが結構辛かったです。Switch版だからの可能性もありますが。P5Sの時も同じことを思ったので、翻ってP5本編の変態的な作り込みの評価がまた上がりました。

終わり。

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