消費税と派遣労働

消費税とは付加価値税の一種で、単純に「利益にかかる税金」という認識だけしかありませんでした。。しかし、三木義一『日本の税金 新版』(岩波新書 2012)に次のような記述があり、少し長いですが引用します。

会社が従業員に支払う給料は課税仕入れではない。人件費は企業の付加価値の一つで、サラリーマンは事業者ではないからである。つまり、企業からすると、従業員に給料をいくら支払っても消費税は減らない。これは法人税の場合と大きく異なり、法人税の場合は、益金から損金を控除した所得に課税され、損金のなかには当然従業員給与も含まれるのである。
 企業としては、人手は必要だが、消費税が減らないのは困る。減らす方法はないかを当然考え、派遣労働を「活用」することになる。なぜなら、労働者の派遣を受ける会社とその会社に派遣されてくる労働者との間には原則として雇用関係がないので、派遣を受ける会社が支出する金銭は、労働者派遣法の適応のある労働者の派遣に係る対価(労働者派遣料)になり、給与ではなくなるからである。対価を支払った会社は仕入税控除ができることになる。  

115頁

つまり、パートなどを含む従業員の給与は、課税仕入れではないのですが、派遣労働者の場合は、給与ではなく、労働者派遣料として、受け入れた会社が対価として支出(!)しているのです。これをはじめて読んだときは、しばらく目が釘づけになってしまいました。労働者は労働を商品としているのですが、派遣労働者は、まるで、労働者自身が商品としてしか認められていない、とさえ感じられたからです。

しかし、この本の出版は2012年で、消費税も5%の時のものです。派遣労働の問題点も指摘されているのだから、会社が消費税節約のために、派遣労働を利用するのを促進するようなことは〈労働法制の方で適正な規制〉(116頁)されなければ、と指摘されていて、まったくその通りだと思いました。

で、国税庁のホームページから引用します。

なお、給与等の支払は課税仕入れとなりませんが、加工賃や人材派遣料のように事業者が行う労働やサービスの提供の対価には消費税が課税されます。したがって、加工賃や人材派遣料、警備や清掃などを外部に委託している場合の委託料などは課税仕入れとなります。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6451.htm

残念なことに変更はされておらず、委託として外注されるという、発注者が優位であることに変わりがないようです。


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