アイデンティティー確立に伴う不安と恐怖
E.エリクソンによれば、アイデンティティー確立のためには、自我喪失の恐怖に直面しなければならないという。
挑戦すれば失敗はある。挑戦するためには、価値喪失の不安と恐怖はある。だけど、生きがいはある。生きている実感はある。
しかしここで見逃してはいけないことがある。
それはあくまでも「自分の意志」で挑戦するということである。自分の意志で挑戦して失敗して、はじめてそれがアイデンティティーの確立につながる。
エリートコースを突っ走りながら、途中で挫折して自殺したり、うつ病になったりする人がいる。そうなるのは、自分の意志でエリート・コースに挑戦していないからである。
親に服従して、認めてもらいたくて親の引いたレールの上を走っている限り、成功も失敗もアイデンティティーの確立にはつながらない。
外から見れば、次々に挑戦している。小学校から挑戦の連続である。しかしそれは強制された挑戦である。挑戦というよりも、実は服従である。
自らの意志で自我価値の喪失に直面して、それを乗り越えたのではない。
それはアイデンティティーの確立への道ではなく、自己疎外への道である。
アイデンティティー確立への道と自己疎外への道は、外から見れば同じように見える。
だからこそ世の中には、成功していないが心理的に安定している人がいるのに、成功しているが心理的に不安定な人がいるのである。
加藤諦三『人生を後悔することになる人・ならない人--パラダイムシフトの心理学』より抜粋。
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