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古着屋インペリアル

"湊の古巣"と言っても過言ではない古着屋インペリアル。

浜松の田舎から京都という都会に出てきた10代の終わり頃。あれもこれも刺激的で、一つのことから百以上の奥深さを勝手に感じてしまうような多感な頃。京都はあまりにも幻想にまみれていてドリーミーな街でした。何かの物語にどっぷり浸かっていたかのような京都での学生生活。

大学、フレスコ、100円ローソン、路地という路地、鴨川、銭湯の灯った看板、そして、魅力的な個人店…。そこで出会う人々、面白い大人、不思議な大人、自由な大人。そして、強烈で、魅力的で、優しい店主。

何の定めか偶然か。あの頃に体験したことが血肉となって人格形成され、今こうして、京都で銭湯を営み暮らす者になれている(なってしまった)ように思います。

あの頃、1番入り浸ったお店は古着屋インペリアルでした。かつてインペリアルは、聖護院の交差点にあるカレー屋さんの隣のビルの半地下にありました。古着屋があるとは予想もしないような場所に突如現れたものだから発見したときは衝撃的で、とんでもなくディープでインディーな場所を見つけてしまったと興奮気味に半地下に降りて、ドキドキしながら扉を開けたのを今でもよく覚えています。

12畳くらいの狭い店内は、2段ラックぎゅうぎゅうにUS輸入の古着が並んでいて、これまた狭いレジに店主のふじいさんがいらっしゃって。寺町や御幸町の古着屋とは違った空気感と存在感に、これこそ自分が探していたホンモノだ!!とわけのわからない納得をしてしまい、全く知らないけれど、本場アメリカの空気までも感じてしまってたのでした。

店主のふじいさんは、当時、今のぼくと同い年か年下くらいだったと思う。今もそうだけど、ふじいさん特有の独特なテンポがある。気になるアイテムを手に取ると、ヴィンテージの知識やブランドの成り立ちを詳しく教えてくださる。プライスタグに手書きでブランド名や年代が書いてあり、判子された値段がリズミカルに並んでいる。試着室はレジ横の戸の先にあって、物置きのような狭い空間で、そこに入ると京都でもアメリカでもないどこか違う場所にワープしている気がした。京都で1番不思議な空間だったかもしれない。とにかく、ふじいさんが創り出した店であり、空間であることは間違いない。それから、左京区に行く時は、インペリアルに通うようになった。むしろ、左京区の入り口であり、門となっていたようにも思う。

通い始めてから、ふじいさんから京都のことも色々と教えてもらった。インペリアルの近所のこと。例えば、熊野寮と吉田寮のこと、メトロというカルチャー好きが集うクラブがあること、ブラックライオットというバーが京大の部室棟に存在することなど…。インペリアルに集うふじいさんの友達、ーー僕にとっては京都で暮らす魅力的な大人たちーーを紹介してもらったり、ご飯やイベントに誘ってくれたり。最終的には、アメリカ買付で不在になる期間の店番にスカウトして下さった。

店とは、店主とはの礎は、インペリアルとふじいさんにあります。京都の世界観もインペリアルから広がっていっているようにも思います。

他に、シルヴィーのカナさん、ロマンチカの穂高さんといった語るに外せない2軒のお店と店主が存在するのですが、今回は長くなるので割愛します。

これらの個人店に入り浸った経験、良くしてもらった体験がかなり影響していると今となって、しみじみ気付かされます。あの頃の店主たちと同い年くらいになってしまった自分は、あの頃の店主たちのように振舞えているだろうかなど、よく考えてしまいます。

むしろ、あの頃を再現したいだけ、あの頃の幻想に取り憑かれてしまっているだけなのではと薄々勘づいている自分もいます。ある側面からすると、事実なんだと思います。憧れなわけです。

それはそれとして、そんな話で古着屋インペリアルと店主のふじいさんからは、とても影響を受けています。今もインペリアルにはちょくちょく行っていて、ほんとうに自分の古巣と思える場所なので、居心地が良いのです。個人店の大先輩として、ふじいさんの凄さにも年々気付かされるというかで。

インペリアルは現在、百万遍の交差点を東に、インドネパールカレー屋の2階に広くかまえています。9年前に聖護院から移転しています。

聖護院にあった時のインペリアル




鴨川湯の継業で、インペリアルがある左京区にやってきた!ということで、今回のポップアップイベントを満を持して開催することにしました。

梅湯や源湯でやろうと思えばできたイベントですが、左京区で実現させたかったので、ほんとこの時が来たわけです。語るに語った通り、ご想像して頂ければ、心中察して頂ければ、個人的に胸熱なイベントなんです。

鴨川湯とセットで、百万遍のインペリアルにも是非行ってみてほしいです!!!!

ちなみに、インペリアルの最寄り銭湯は、東山湯さんです!徒歩5分くらい。笑


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