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どうかどうか。初日の出を美しいと言える朝が、やってきますように。

本当だったら

あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします!

のひとことから始めて、年末に書いたBUCKET LISTをここに書いて宣言でもしようかと思っていた。少なくとも、サッカー日本代表の試合が終わって伊東純也選手が「キャプテンマークをつけていましたね」という記者の問いかけにハニカム姿をテレビ越しに見て「かわいい……‼︎」と悶絶していた頃までは。

ところがどっこい、その数分後にテレビから緊急地震速報が流れてきた。観測したのは、石川県。だというのに、テレビの画面がさっと切り替わって、あの不穏な音がきこえてきた。

お仕事柄、避難訓練が毎月ある生活をしていたのでわたしの補聴器さんも何度か聞いていてやっと聴き取れるようになった「ポロロン、ポロロン」という音楽。あれが休日に、しかも元日に鳴るなんて、誰が予想していただろうか。

それからしばらくして二度目の緊急地震速報が流れて、わたしたちの住む関東地方もぐらりぐらりと揺れた。

一度目の揺れのあとすぐに「津波の心配はない」と表示されたけれども、その後相次ぐ揺れにすぐさま津波警報、そして大津波警報が発令された。

わたしの頭の中にパッと浮かんだのは、いつか目にした、東日本大震災で被災したろう者(聴覚障害者)の手話語り。キコエル人たちは音情報で高台に逃げることができたけれども、ろう者のうち何人かは避難した先が低い場所だったため、避難所で津波に飲まれたというもの。

同じことが起こったらどうしよう。

3.11の夜、津波に飲み込まれた故郷の映像を眺めながらポロポロと涙を流し続けて朝を迎えてしまった日がフラッシュバックする。(今も、この文章を書きながら、やっぱり涙が溢れてしまう)

と思っていたそのとき、テレビの画面に手話ニュースのキャスターが現れた。そして、わたしたちの言語である「手話」で避難の呼びかけをはじめた。

これなら。ふと目に入ったニュースを見て、自分ごとと動けるろう者がひとりでも増えるはず。希望だった。

けれども、その手話ワイプがついていたのはほんの一瞬で。日本語だけの画面になると、途端に不安になってしまう。お耳の仲間は、ちゃんと逃げられただろうか。

一枚の画面に出せる情報量というのは限られたもので、手話だけでなく英語や中国語やスペイン語のような他の言語を使う人々のなかにも、きっと困っている人はいる。頭の中で理解していても、お耳の仲間が心配でたまらない。

21:00を過ぎた現在でも、大津波警報は発令中。テレビの画面は、警報の情報と漢字にルビが振られている。「つなみ」がいかに恐ろしいかは、アナウンサーの方々の真剣な表情からも伝わるだろう。

19時頃に行われた記者会見の手話通訳も、しっかりワイプで写された。コロナのときに、お耳の仲間たちが「非常時は特に手話通を写して欲しい!」と声をあげ続けたこと、ちゃんと生きていたんだなぁと思う。

日本語でも理解することはできるけれども、見て分かるわたしたちの言語「手話」で状況を把握できると、どこかホッとする。ざわついた避難所でも、自分たちに起こった状況を見て理解できたお耳の仲間がいたに違いない。

ちなみに、わたしが現在業務でも使用している音声認識ソフトYYProbeは、災害時対応として無料でソフトが使用できるようになっているとのこと。アナウンサーの声ならば、テレビやラジオの近くに置いておくだけで、かなり良い精度の音声認識ができると思う。

それから、プラスヴォイスさんが災害対応として24時間電話リレーサービスを受け付けているとのこと。

それでもやっぱり、あんなにたくさんの日本語が並んだ画面から情報を得るのは難しい。それなのに、今日の手話ニュースは災害放送でお休みになってしまった。テレビを見ても情報の取捨選択が難しいろう者たちの多くが、手話ニュースを切望していたに違いない。手話ニュースは中止しないでほしかった。

という気持ちは、隠しきれない。わたしたちも、コロナの時期に手話ニュースが分かりやすい説明をしてくれたからこそ、会見やその他字幕の情報を得やすくなったということもあるので。

※2024.1.1 21:10現在の情報です。

わたしは幸い大きな被害も受けずに日常生活を送っている。でも、あえてこれらの情報をSNSでシェアした。

というのも。

明日わたしたちに災害がやってきたときに周りのキコエル人たちにこんなサービスがあることを知ってもらいたいから。知ってもらうことで、わたしやお耳の仲間が避難先で情報を得られなくて最悪なケースに至ってしまうことを防ぎたい。あわよくば、この災害で被災した方やその支援者にも届いていたらラッキーだなぁと思う。

わたしたちが手話などの視覚情報を得られないことに対して強い不安感をもっていること。それをサポートしようとするサービスがあること。

それをわたしの半径90cmの人たちがそれぞれ知っていたら。それらはぐるりとまわって、みんなの常識になるだろう。そうなったら、きっと、3.11のときのような悲しい出来事が繰り返されずに済むかもしれない。そうであって欲しい。

そう思うと、いてもたってもいられない。それくらい、衝撃的な元日だった。

どうかどうか。
初日の出を美しいと言える朝が、やってきますように。

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