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間違えてVIP待遇を受けた話

こんにちは。
実家が全焼したサノです。

もう何年も前の話ですが、
大阪に住んでいた頃、
当時お付き合いしていた彼女と、
リッツカールトンという
高級ホテルに宿泊したことがありました。

当時の僕はお金に余裕が無く、
かなり背伸びをしてホテルを選んだので、
予約した部屋は1番安い部屋でした。

立派な部屋でないことは
彼女にあらかじめ伝えていたものの、
それでも目を輝かせて喜んでくれました。

僕はホテルに行き慣れているわけでもないので、
彼女をエスコートしつつも、
内心、とても緊張していました。

いざホテルに向かうと、
外観の重厚感に圧倒されましたが、
あくまで平静を装い、
チェックインを済ませました。

しかし係の人に案内され部屋に入室したとき、
思わず「えぇ!?」と声を上げてしまいました。

思っていたよりも、
5倍くらい豪華な部屋だったからです。

一応、部屋の写真は事前に
ホームページで確認していましたが、
明らかにその写真よりも豪華でした。

ひょっとしたら、
リッツカールトンほどのホテルにもなると、
写真は謙虚に見せる、みたいな
作法があるのかもしれません。

また良いクレジットカードだと、
まれに部屋のランクが上がるという
噂を聞いたことがあるので、
実は僕の銀色の楽天カードは、
すごいカードだったのかもしれない、
とも考えました。

とにかく無知なので、
何が何だかわかりませんでした。
だけど確実にチェックインを済ませたし、
お会計も済ませていたので、
特に問題はないはずです。

係の人が案内を終え、
笑顔で部屋から退室すると、彼女は

「こんなすごい部屋…本当にありがとう!」

と少しだけ心配そうに
僕にお礼を言ってくれました。

僕もここまで凄いとは思っていませんでしたが、
それでも彼女が喜んでくれて嬉しかったです。

僕たちはしばらく身に余る広い部屋を
せわしなくウロウロとしていました。

リッツカールトンは、
ウロウロしているだけでも楽しいのです。

すると、テーブルにある
スイーツの盛り合わせを見つけました。

明らかに「ご自由にどうぞ感」があるので、
やっぱり高級なホテルは凄いなぁ〜
なんて言いながらそれを二人で食べました。

スイーツはどれも美味しくて、
金平糖を口の中でコロコロさせながら、
生意気に素敵な夜景を眺めていました。

しばらくして、僕はテーブルに手紙が
置かれていることに気付きました。

外資系のホテルだから、手紙も英語なのかな、
なんて思いながら手紙を手に持ちました。

内容よりもまず、宛名に目がいきました。

『Dear Ms.Schulze』

サノじゃなくて、シュルツ。

シュルツって、誰だ。

なんとなく薄らと感じていた疑念が、
確信に変わりました。

多分ここ、僕たちの部屋じゃない…。

僕はゾッとしました。

シュルツさんの豪華な部屋に勝手に泊まり、
シュルツさんのスイーツを勝手に食べ、
シュルツさんの夜景を勝手に眺めたとすると、
一体僕はこの後どうなるのだろうと。

どうやって罪を償えばいいのだろう…
と考え込んでいる僕がこちらです。

逆に落ち着くパターンです。

「そもそも僕は悪くないだろう!」

「シュルツさんはどうしているのだろう…」

「部屋が豪華すぎるし気付くべきだったのか?」

「スイーツ全部食べてしまった」

「彼女になんて言おう」

頭の中で色んな考えが行ったり来たりしました。

観念して、怯えながらフロントに電話すると、
担当者はかなり驚かれていましたが、
逆にとても丁寧に謝罪されました。

結果的に、僕たちはそのまま豪華な部屋で
宿泊することができて、
スイーツもお土産も追加で
届けてくださりました。

見知らぬシュルツさんのおかげで、
僕たちはVIP待遇を受けることができました。

シュルツさんにも同じように、
何か良いことが起きますようにと願いました。

いただいたお金は、切ないことに使います。