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痰壺迷想録(4/938)

◉自分の快・不快に鈍感になることを「この世界」では成長と呼ぶ。

◉東京大学に四人の子供を「合格させた」という母親が教育論についてべらべら喋っていた。とてつもない不快感。こんな奴の話を聞かされるくらいならまだレイプ魔の自分語りを聞かされるほうがマシだ、と思った。

◉一頁の大部分がインクもドットもない「白紙」であることに気が付いてる読者は少ない。読者は「白紙」をも読んでいる。

◉生まれたばかりの幼児を絞め殺す親と、それを育てる親と、「残酷」なのはどちらだろうか。「与える苦痛」が大きいのはどちらだろうか。

◉生きることは体に悪い。だから誰もがいずれ死んでしまう。

◉老人に出来る一番の「社会貢献」は早く死ぬことだ、と暴言を放つ人々が忘れていることが一つある。早く死ぬべきなのは老人に限らないということだ。

◉大きすぎる暴力はほとんど認識されることがない。国家暴力でさえ他個体を出生させるという暴力に比べれば取るに足らない。

◉排泄のたびに自分が「一本の管」に過ぎないと思い知らされ尊厳を傷付けられる。「考える葦」か「考える管」か。

◉「生産的な」肉体労働者たちは、他の誰にもまして、生産の幻想のなかで生きているが、それはちょうど、彼らが自由の幻想のなかで余暇を生きているのと同じである。(ジャン・ボードリヤール『象徴交換と死』今村仁司/塚原史・訳 筑摩書房)

◉髭の一本一本が「男根」であることを思い出すこと。髭を剃ることが<象徴的去勢>であることを思い出すこと。

◉ほとんどの性交が他人の体を使ったオナニーであることを思い出すこと。

◉合理的な「人助け」。「同情」さえ不要。「実感」や「やりがい」を求めないこと。千羽鶴を送らないこと。

◉ほとんどの夫婦間性交が不同意性交(強制性交)でありうる可能性について思い出すこと。

◉何日も前に見た「夢」をとつぜん思い出すことがある。

◉いい人間は死んだ人間だけだ。

◉選挙の最大の欠陥は死者が立候補できないこと。どうしようもなく軽薄で愚かな生者だけがいつも騒いでいる。これこそが政治腐敗。

◉「既得権うんぬん」という話と「陰謀論」の間にはそれほどの距離はないように思われる。

◉軽蔑なくして「親愛の情」は成立しえない。

◉元不登校児の「不登校支援者」や元ニートの「ニート支援者」ほど無神経で厄介な者はいない。彼彼女らはだいたいにおいて既存の価値基準を手放すことなく他人に「寄り添う」。学校や「実社会」に「復帰」させたがる。「私は君たちの味方だよ」といった風情で。そうした自覚されざる傲慢さこそ不登校児やニートがもっとも恐怖するものだということに気が付いていない。

◉あらゆる体系化を拒み続ける知性。

◉地球を救うのは愛ではなく絶望である。完全な絶望である。

◉雑音恐怖。全身が集音装置。他者の気配を感知するためだけに生きてしまうこと。

◉街で妊婦を見ると、「こんな醜悪滑稽な姿で外を歩けるなら世の中で怖いものなどないだろうな」と思う。「人間の社会」はそうした並外れた無神経の上に成立しているのだと考え、ぞっとする。

◉「既に存在しているものの専制」を肯定しないこと。「そのようにしかありえない」と思考を停止させないこと。「反体制」とは「ここではないどこか」を執拗に夢想し続けることでもある。

◉生はつねにあまりにも過酷なものだから、たいていの人間はその過酷さを認識できなくなってしまった。凡庸な連中。

◉大学に行って分かったことはほとんどの大学教授が単純労働者に過ぎないということ。

◉懐疑論的不毛地帯
 懐疑論者A「ひっきょう哲学は問うことしか出来ない」
 懐疑論者B「問うことさえ出来ない」

◉日本の自殺者は年間約二万人と聞くたび、「どう考えても少なすぎる」と思ってしまう。二〇〇万人でもまだ少なすぎる。一億人くらいならそこそこ納得できる。

◉傘がない以前に、息をするところがない。

◉人間において裸(むき出しの肉体)がなんらかの欲情を促しうるのは、そこに傷付きやすさ(傷付けやすさ)があるからなのか。普段は隠されている「無力性」。破壊衝動の誘発。神聖なる無防備。

◉「楽観主義」を唱えたがる人間の声に「自信」を感じたことはほとんどない。彼彼女らはしばしば、どんな悲観主義者よりも悲しい眼をしている。

◉悲観的であることほど「自然的」なことはない。凡庸な人々の「楽観主義」にはたいていいつも「空虚なわざとらしさ」がある。熱湯のなかで口笛を吹いてみせるような「痩せ我慢」がそこにはある。

◉「悲観的」だと思われたくない人々がかくも多いのは何故だろうか。「悲観主義」すなわち「敗者」といった愚かな連想のせいだろうか。

◉「基本的人権」のなかに「生まれてこない権利」が含まれていないことを疑問にさえ思わない人間たちに、私はきょうも囲まれている。

◉破廉恥なほど「非哲学」な人々。「体制・内・存在」。

◉「死者」であるのに「生き物のふり」をしながら生きている。

◉78億人の死刑囚が地球に収監されている。

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