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オナニート絶望対話

オナニートA:ボーっとしていることに五分も耐えられないほど「人々」は堕落している。もはや我々のまわりには病人しかいない。
オナニートB:オナニートに病気と診断されるようではもうおしまいだね。
オナニートA:さいきんはオナニートであることに劣等感を覚えなくなってきた。
オナニートB:俺は最初からそんな劣等感は覚えていない。
オナニートA:君は特殊だから。たぶん<底辺>からしか見えない風景というのがあるんだね。
オナニートB:底辺というより無次元ポイントと言った方がいいね。「ただ生きてそこにあるだけ」で人は平準化ウイルスにやられてしまう。バカみたいな「世界」に調子を合わせてしまう。このごろは誰と話していても苦痛だよ。どいつもこいつも「世界内」のことしか問題にしてないもんね。
オナニートA:「世界がある」というこの巨大な問題に躓かない。
オナニートB:「驚愕」を忘れたらそれこそただの生活機械、労働機械だ。
オナニートA:「空白の時間」が我慢できないのも「つねに自己投資せよ」「時間を有効活用せよ」といったこの時代を支配する強迫観念のせいなんだろうね。
オナニートB:それもあるだろうけど、ただ単にこわいんだと思うよ。「存在の本来的無意味性」について考えてしまうのが。
オナニートA:なんで「本来的無意味性」がこわいんだろう。
オナニートB:足場がないと不安だから。どんな苦労にも「意味」などないと知ってしまったら何もする気にならなくなるかもしれんだろ。「未来などからっぽ」と知りながら「正気」で生きるのは難しい。
オナニートA:本当は何もしないほうがいいんだけどね。何かをすることはけっきょく無意味で残酷なこの「社会」を再生産しているだけなんだということに早く気づいてほしいよ。俺はすべての労働者が嫌いだ。やつらは自分が「凡庸な悪の再生産」に加担していることに無自覚すぎる。
オナニートB:君は世の中の知的格差がどれだけ大きいかを知らないんだと。ざっくり分けて世の中には「生産労働力になるべくして生まれてきた人間」と「オナニート哲人になるべくして生まれてきた人間」の二種類がいる。どんな時代でも後者のほうが圧倒的に少ない。
オナニートA:俺たちの苦しみは「選民の苦しみ」というわけか。
オナニートB:まあそういうことだ。ただあの凡庸な連中に向かってそういうことは言うなよ。
オナニートA:分かってるよ。だいたい何を言っても伝わらないんだから。やつらに対してはいつも自虐のバリアを張る必要がある。そうでもしないと迫害されるかもしれないから。単純な頭脳しか持たない多数派ほど怖いものはない。
オナニートB:愚鈍蒙昧に生まれた者たちは「生の空しさ」を間接的にしか感じられない。だから俺たちより「体力」に恵まれているのは当然なんだ。
オナニートA:俺も愚鈍蒙昧に生まれたかった。
オナニートB:「生まれる」ということが存在論的にどういうことなのか、俺には少しも分からないんだけどね。

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