パエリア

マチネの終わりにスペイン料理

台風が来て、大雨が降って、電車に乗ればみんなのスマートフォンから一斉に避難準備情報発令のアラームが鳴るような日。
そんな日の夜(9月9日)、平野啓一郎さんが現在連載中の小説「マチネの終わりに」のコラボレーション企画に参加している作家のみなさんと、担当のスタッフの方々とスペイン料理を食べながら、小説や、今後の作品制作のことなどを話しました。スペイン料理(蒔野と洋子がはじめて出逢った日に行ったのがスペイン料理店でした)をチョイスするなんて、流石。憎いです。

小説の内容を追いながらも、どんな作品を最終的に制作していこうか私自身まだ決めかねていますが、もうすこしストーリが進んだら決まってくるような気がしています。自分自身の制作をする際の視点で小説を捉えて制作しようと最初は思っていたのですが、小説から得た全く新しい切り口で作品を作ってみる、というのもありかもしれない、と思いはじめています(平野さんの胸を借りるつもりで)。

食事会では、いろんな話をしたのですが、その中でもハッとしたのが、「連載」の面白さについて。

エッセイや短編小説は例外として、わたしはどうしても小説やマンガは細切れに読むのではなく、なるべくまとまった時間がとれる時に読んで、どっぷりとその世界に浸りたがる傾向が強く、NHKの連続テレビ小説(朝ドラ)はそれが理由でのめり込めないのかも、、、とすら思ったりするのですが、現在進行形である連載ならではの楽しみ方があることを知りました。

文章を書く人すべてがそうではないそうですが、平野さんはスタッフの方とのやりとりの中からはもちろん、読者の方の感想などをフランクに聞き、それをまた平野さんのフィルターを通して作品に反映させることがあるそうです。そんなことが可能になるのは、平野さんの柔軟さはもちろんですが、さまざまなSNSの発達や、紙面のみならずnoteでの連載など、この時代だからこそのスピード感でもあるのかなぁと思いました。

パッケージ化された「本」しか知らず、そんな流動的な状態の小説に触れたことがない私にとっては(多くの人がそうだとも思いますが)、結構な驚きであり、自分と同時代に生きてる作家が、「今」まさに書いていている途中で、自分も体験している世の中の些細な出来事や、読み手の感想までもが、思わぬ形で小説と化学反応を起こすみたいに影響することがあることを知って、この「リアルタイムを共有する」ということはあまりに貴重で、逃しちゃもったいないぞ、、、と思いました。

WHOLE9さんも書いてましたが、人でも物でも「ライブ」で出会える、という経験は、本当に意味あることですね。


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