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債権者集会~再生計画の遂行・終結【中小企業の自主再建型民事再生】

 自主再建型の民事再生手続の一連の流れを、
① 民事再生手続きを選択するに至るまで
② 民事再生申立ての準備
③ 民事再生手続開始決定
④ 財産評定・債権調査
⑤ 再生計画案を作成し認可されるまで
⑥ 再生計画の遂行・終結

の6つの場面に分けて解説しています。

 今回は、⑤再生計画案を作成し認可されるまでの後半・債権者集会についてと、⑥再生計画の遂行・終結について、解説をします。ようやく最終回です。

1 債権者集会の意義

 再生債務者が再生計画案を裁判所に提出すると、監督委員が再生計画案について調査を行い、報告書を裁判所に提出します。
 裁判所は、提出された再生計画案を決議に付する決定(この決定を「付議決定」といいます。)を行います(民事再生法169条1項)。

(決議に付する旨の決定)
第百六十九条 再生計画案の提出があったときは、裁判所は、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、当該再生計画案を決議に付する旨の決定をする。
一~四 《省略》

 債権者集会において、再生計画案が可決されるための要件は次の通りです(民事再生法172条の3第1項)。

 (再生計画案の可決の要件)
第百七十二条の三 再生計画案を可決するには、次に掲げる同意のいずれもがなければならない。
一 議決権者(債権者集会に出席し、又は第百六十九条第二項第二号に規定する書面等投票をしたものに限る。)の過半数の同意
二 議決権者の議決権の総額の二分の一以上の議決権を有する者の同意

 1号が頭数要件2号が議決権額要件と呼ばれています。頭数要件と議決権額要件の両方をクリアする必要があります。

 再生計画案が可決されると、不認可事由(民事再生法174条2項各号)がない限り、裁判所は再生計画を認可しなければなりません。
 そのため、再生債務者にとっては、可決要件を満たすだけの議決権者の同意が得られるかどうかが極めて重要となります。

2 債権者集会の準備

 このように、再生債務者は、可決要件を満たすだけの議決権者の賛同を得る必要があります。
 そのために、債権者集会への準備として、可決される見込みの検討(票読み)と可決要件を満たすだけの議決権者の同意が得られるよう努力すること(票集め)をする必要があります。

 取引先などに対しては、自社が事業を継続し、取引関係が続いた方がメリットになることなどを伝えることになるでしょう。

 また、金融機関など多額の議決権を有する債権者に対しては、事前に協議を行い、再生計画案の経済的合理性、履行可能性、経営責任の有無などについて丁寧に説明をしましょう。場合によっては、再生計画案に債権者の意見を反映させることなども検討しましょう。

3 議決権行使の方法

 1で述べた付議決定の際に、議決権行使の方法が定められます(民事再生法169条2項)。

 議決権行使の方法としては、
① 債権者集会の期日において議決権を行使する方法(集会型
② 書面等投票により裁判所の定める期間内に議決権を行使する方法(書面型
③ 上記①と②の方法のうち議決権者が選択するものにより議決権を行使する方法(併用型
があります。

(決議に付する旨の決定)
第百六十九条
2 裁判所は、前項の決議に付する旨の決定において、議決権を行使することができる再生債権者(以下「議決権者」という。)の議決権行使の方法及び第百七十二条第二項(同条第三項において準用する場合を含む。)の規定により議決権の不統一行使をする場合における裁判所に対する通知の期限を定めなければならない。この場合においては、議決権行使の方法として、次に掲げる方法のいずれかを定めなければならない。
一 債権者集会の期日において議決権を行使する方法
二 書面等投票(書面その他の最高裁判所規則で定める方法のうち裁判所の定めるものによる投票をいう。)により裁判所の定める期間内に議決権を行使する方法
三 前二号に掲げる方法のうち議決権者が選択するものにより議決権を行使する方法。この場合において、前号の期間の末日は、第一号の債権者集会の期日より前の日でなければならない。

 一般的には、集会型が原則とされ、債権者が多数であるなどの事情がある場合に書面型が採用されることがあるようです。

4 決議後の流れ

 再生計画の認可決定・不認可決定は、官報に掲載された日の翌日から2週間の即時抗告期間内に、即時抗告されなければ確定します。

 ⑴ 可決された場合

 認可決定が確定すると、再生計画が効力を生じます(民事再生法176条)。
 その結果、再生債権の免除や再生計画に従った権利の変更といった効果が生じることになります。

 ⑵ 否決された場合

 集会型または併用型において再生計画案が否決された場合、要件を満たせば、続行期日を申し立てることができます。
 再生債務者側において、続行期日前の間に再生債権者と協議を行ったり、再生計画案を変更したりして、続行集会で可決されるために尽力する必要があります。

5 再生計画の遂行・終結

 再生債務者は、再生計画に記載された内容にしたがって、債権者への弁済などを行っていくことになります。

 例えば、東京地裁では、再生債務者から監督委員及び裁判所に対し、弁済報告書や業務状況報告書を提出させ、再生債務者による再生計画の遂行状況を監督する運用となっているようです。業務状況報告書の提出時期は、再生債務者の決算期に合わせて、四半期または半期に一度の割合とする例が多いとのことです。

 民事再生法188条2項では、監督委員が選任されている再生手続の終結時期に関し、次のように定められています。

 (再生手続の終結)
第百八十八条 
2 裁判所は、監督委員が選任されている場合において、再生計画が遂行されたとき、又は再生計画認可の決定が確定した後三年を経過したときは、再生債務者若しくは監督委員の申立てにより又は職権で、再生手続終結の決定をしなければならない。

 裁判所が終結決定をすると、再生手続が終結します。

6 まとめ

 複数回にわたり、【中小企業の自主再建型民事再生】について、一連の手続きの流れを簡単に説明してきました。
 何となく、手続きの流れをつかむことができたでしょうか。

 長期間にわたり、不定期に解説記事を投稿してきました。また、本当にごく一部分のみを解説しました。そのため、わかりにくい部分があったかもしれません。ご質問などはコメント欄にお願いします。
 長い間にわたり記事をご覧いただいた皆様、ありがとうございました。

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