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残酷な自分を見つけた件 (お布団の中で反省会)


不覚にも今更ながら、コロナに羅ってしまった。月曜、仕事を終えて帰宅すると、寒気がする。まあ、冬だから寒いんよね、と思いたい気持ちと裏腹に、寒さとは明らかに違う感覚に気づいてしまったのが敗因。あれよあれよと言う間に発熱と悪寒が全身を襲って来た。当初インフルかと錯覚して、それでも夫婦の寝室から自分の布団を下げ、以前は息子の部屋、今は本のほとんどない「自称」書斎、に運び入れ、そのまま布団にダイブ。
翌日近所の内科に受診して、そこでコロナを告知された。その日と翌日は微熱なのに激しい悪寒と関節痛に襲われ苦しんだが、それもすぎると体調は回復していった。
さて、私のここで書きたいのは闘病日記ではない。蟄居している部屋の中、体調が戻るにつれしている部屋の中ですることといったら、「アレ」しかないのね。

youtube

何せ一日中見ているのだから、似た動画を観ていると飽きる。そこで色んなジャンルの色んなチャンネルの色んな動画をみる。
とりわけ、可愛い韓国モデルが服を脱いだり着たりして彼女の纏っている下着を見せてくれるチャンネルが、私の性癖にマッチしていて、とても気に入った。また太平洋戦争で終戦までに量産が間に合わなかった戦闘機(震電)が、B29をバッタバッタと撃墜する3D動画も気に入った。山小屋暮らしなんて言うのも。そんな動画を日に何十本、いやもっと、もっとだ。

そんな動画を2日間、ずっと、ずうううっと、見続けてしまった。
そうして二日目の深夜、ふと、観ていて、観ている自分を観察している別の自分がいるような気がしてきて、恐ろしくなってきた。
一方では暇つぶしの為に見境なくみている自分、もう一方ではそんな阿呆な自分を俯瞰している自分。二人の自分がいる。
どうしてそんな二重な自分がいることに気づいたのか。

YouTube ホームでは過去の履歴から推測されるおすすめ動画が並べられている。大体がそこらから摘まんで入って、関連動画を掘っていくのだが、気づいたとき、私はたった10分前には「豆柴の子犬」を観ていた。「秋田犬の子犬」もみた。「野犬の子犬が家犬になるまで」なんて言うのも、にこにこしながら観ていた。「きゃわいい、以外の言葉がでないー」とさわぐ女性の声を聞いてニヤニヤ。
でも今はどうだ。子犬動画の10分後の今は、だ。
ウクライナ軍のドローンが農村の建物に潜むロシア兵を索敵し、取り付けられた小型の爆弾を落とすシーン。爆裂後、飛び出た兵士が下肢を引きずりながら這いまわって逃げるシーン。塹壕での接近戦、ウクライナ兵とロシア兵とが十数メートルの近さで、銃と手榴弾での応酬を(何食わぬ顔して)上空から撮影しているドローン。はたまた塹壕の中に転がる死体。

ん?
おれ、何を見てる?

子犬も戦場も確かに現実にそこにあって、犬のかわいさにきゅんとした私もいたのだし、その数分後に、ウクライナ兵の勇躍している戦場に、いやあすげえなあ、と感心している私も確かにいる。もっと言うと、私は日本人という西側の範疇にいて、なおかつロシアは悪いやつらだ、という先入観ステレオタイプの下で戦場風景を見ているから、ウクライナの提供している動画を、戦争と言う名の殺人だと眉しかめることもなく、寧ろ応援しながら観ることができているのである。私はそんな安気で稚拙な自分がいることに気づいたのである。

正しい例えか解らないが、以前、南京事件で、現地の女を強姦したあとすっきりした兵隊が近くの子供に飴をくばって談笑しているという情景を、とある本の中で読んだことがある。その兵隊が鬼畜なのではなく、平時は穏和な若者が、一定の状況下においては、悪行をしでかしても、非道を非道と認識しないのだ、と書かれていた。

想像が飛躍しすぎだろうか。ウクライナのドローン動画を見るのは控えようと思っているわけではないし、子犬の動画を同時に観るのはやめようとと反省している訳でもない。
こうして私は布団の中で、横になりながら、子犬をみたあと、人の死を平然と観ている。酸鼻な情景、残虐な行為を他人事のまま、まあこんなこともある、と消化(または昇華)してしまう自分がいる。そんな一人の自分がいることに気づいた、と言いたいだけなのだ。
このネットの極度に発達した社会で、ひとたびyoutubeに接続すれば、戦場の地獄も子犬の天国も同時に観ることができ、しかもそれらを普通に飲み込んでしまう自分、いや飲み込んでしまえるネット特有の暗黙システムがある、という事実が、ほんとうは一番怖い事なのかもしれない。

なんだか自分が怖くなって、あわてて書いた一文ゆえ「画竜点睛を欠く」とやらの煮え切らない記事になってしまったが、言いたいことはわかってもらえただろうか。


追記:そろそろ夫婦の寝室に戻りたい私だけど、ここまで伝染らないように家庭内別居を頑張ったのに、ここで気を許したら、、、とばかり、当の妻はとってもイヤそうな顔をしている。
隣に女がいないと眠れないタイプの私なので(笑)ちょっと辛いんだが、、、。