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【特集】 オヤジの科学 "レコードプレーヤーを作ろう”04 ~中国のモノ作りの謎にせまる~

 さて、毎度おなじみ「おやじの科学」のお時間です。今の連載では「レコードプレーヤーを作ろう!」という企画をやっていますが、今日はその下準備のひとつとして

「既存のレコードプレーヤーを分解してみよう!」

という試みです。

 同時に、日本がボロ負けつづきの「モノづくり」の面で、中国がいったいどのように台頭してきたかもわかる「国際派企画」になっております(笑)

 さて、今回入手したのは、イギリスIONオーディオが全世界で売りまくっている「中国製 スーツケース型レコードプレーヤー」と、その模倣品?「LP&No.1」(香港?)のこれまた「スーツケース型プレーヤー」を取り上げます。

 これ、ユニットはほとんど共通の仕様で、かつ外装や寸法もほとんど同じなので、ふつうに考えると

「ああ、中国のひとつのメーカーがOEMで似たようなのをいっぱい作っているのだな」

と感じると思います。

でも、違うんです!

 それは、分解してゆくとよくわかります。

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 赤いのがLP&No.1で、黒いのがION Vinyl Motion ですが、全体のサイズ感や作り方はパッと見、同じに見えます。

 ところが、

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まず、「パッチン金具」のサイズがそもそも違うことがわかります。

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角の金具も、似ていますがサイズが異なります。

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丁番(開き止め付き)ですら、形状が異なります。

 おおむね、このあたりで「あれ?似ているけれど、ひとつずつパーツを拾うと、全然ちがうぞ」ということに気付くわけです。

 ここからさらに凄くなりますよ。パーツ違いだけではなく、これは完全に別物だという証拠が出てきます。

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 ネジの位置が違う。

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いや!そもそもネジそのものが違う!!!

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 ネジを止める「受け」側がブロックになっているIONと、ブロックがなく、宙に浮いた形で「受け」板がついているLP&No.1。つまり、構造も違うのです。

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 スピーカーも違います。IONは4Ω3W、LP&no.1は4Ω5Wです。


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 なんと!実はプレーヤーユニットも違うのです。じっくり見るとバリやプラの突起の位置が違うこともわかると思います。

 ちなみに上がIONで、リチウムイオンバッテリ内臓なので、貼り付けてあります。このあたりはむかしの「中華タブレット」みたいなノリで懐かしいですが、今は中国製スマホなどでも加工精度や集積度が上がっており、こんな荒くたい造りではないメーカーもたくさんあります。


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 さて、結論から言えば「この2機種はまったく違う別物だ」ということが言えます。しかし、みかけはそっくりで、この2社だけでなく、まだまだ10種類くらい似たようなプレーヤーが市販されているのはご承知のとおり。

 もちろん、中には「製造メーカーがカブっている」機種もあるでしょうが、異なるマシンもまだまだ隠れていると思われます。

 どういうことかというと、すでに「すべてが模倣」のセカイなのですね。

 高度成長期の日本も、そうでしたが、「先行品の真似」をしながら技術が発展してきた過去があるように、中国でも「模倣品」を互いに作りながら進行している現在があるように感じられます。

 今の先進国なら「自社のオリジナリティ」に目が向きますが、まだまだ「売れ筋のものを似たように作ってしまう」傾向が残っていることがわかるというものです。

 オリジナルが良くて、模倣品がダメかというと、そうでもないことも起きています。

 というのも、ION製品は国内でもかなり売れているのですが、音を出してみるとLP&No.1のほうが音が良かったりします。

 そもそも先発と後発のレベルも似ていますので、パーツの集め方によっては後発のほうが良くなってしまったりもするわけですね。


 種あかしをすれば、この手のレコードプレーヤーは、300個ロットくらいからまとめれば2000円~3000円くらいで作ってくれます。すべて深センの専業メーカーですが、OEM先のロゴをつけてワンロットのまとまりで製造してくれるようです。

 というわけで、私も、せっかくプレーヤーユニットがあるので、おなじように

「トランク型のケースに詰め込んでしまおう!」

という計画を立ち上げました。

 第二回で入手したユニットがまるごとあるので、それをスーツケース型のハコに放り込んで、リバースエンジニアリングしてしまおう!という考えです。

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 ちょうどエコ楽器作りに使っている廃材がごろごろ転がっているので、それを流用しながらケースづくりを始めました。

 丸く図が描いてあるのは、スピーカーの音が出る穴を開ける部分です。

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 こんな感じで、ハコを2つ作って、丁番で開け閉めできるようにするわけです。

 オリジナルはMDF板という圧縮合板を使っていますが、杉でも、松でもなんでもいいです。廃材を接着してももちろんOK。

 表板、裏板は、5ミリ~1センチ厚程度になるものを貼り付けます。9ミリとかでもOKです。

 側面は、6センチ×1センチの板材と、4.5センチ×1センチの板材を用意しましょう。5ミリ厚の表板、裏板がくっつくと最終的に6.5センチと5センチのハコができます。

 図面は以下。

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 まずはこのハコを作って、スーツケースそのものを作ってゆきます。

 つづきは次回をお楽しみに!



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