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夫との会話を振り返ったら、自分の考え方のクセが強すぎた話

ライターゼミアドベントカレンダー2023に参加しています。アイキャッチは小2次女の作品です♪ありがとう~!】


ある日、お風呂に入って洗面所で歯を磨いていたら、うがいに来た夫がこう言った。

「ああ~今日はいいお湯でしたわ!」

小学生男子が大人をおちょくるような表情で、こちらをじっと見ながら話す夫の様子に、私は一瞬で腹を立てた。

「私が昨日、湯船のお湯を抜いたから?嫌味なの?」

夫の表情が一変した。目を丸くして、信じられないといった様子で口に含んでいた水をふき出した。そして笑いながら言った。

「そんなこと、今言われるまで忘れてたよ!」

え?本当に?私は不満げな顔で夫を見つめた。

その前日、私は夫がまだお風呂に入っていないことを知らず、誤ってお湯を抜いてしまったのだ。冬だし、寒いだろうし、悪かったなと思い夫には謝ったのだが、夫はテレビを見ながら無言でうなずくだけだった。
だから「もしかして怒ってるのかな?」と感じ、先ほどのような返事をしたのだと思う。

「まさか、そう考えるとはな~」

タオルで顔をふきながら、あきれたように話す夫に、私はますます腹が立った。

もう一言ぶつけてやろうかと思ったとき、一連のやり取りを見ていた中3の長女が、壁にもたれてスマホをいじりながらつぶやいた。

「ママのとらえ方もなかなかすごいけど、おとうさんの言い方もどうかと思う。明るくしようとしてるのかもしれないけど、バカにされてる気がして腹立つんだよ(笑)」

おお……強烈なボディブロー。

「な?そうだよな。ママのとらえ方の問題だよな?」と長女にあいづちを求める夫。苦笑いをする長女。にらみつける私の視線を感じ取ったのか「ああ、怖い怖い」と言いながら、夫はそそくさと洗面所を出て行った。

その後、下の子たちを寝かしつけてから毛布にくるまって考えた。
夫へのイライラはどうでもよくなっていた。浮かぶのは長女の言葉。

「ママのとらえ方もなかなかすごい」

うん、冷静に振り返ると確かにクセがすごい。
「いいお風呂だったわ!」⇒「嫌味なん?」
なかなかたどり着かない思考だ。

なぜこうなったのか。
これが「考え方のクセ」なんだと思った。
難しい言葉でいうと「認知のクセ」。

じゃあ、普通ならどう考えるんだろう?
翌日、私は心理療法の一つである「コラム法」を一人でやってみた。たまには心理師らしいことをしてみよう。

コラム法は紙に書き出すと効果的

コラム法は、モヤモヤした出来事を振り返り、考え方をやわらかくする方法だ。こんな流れでふり返ってみる。

① ストレスを感じた出来事を書く
② そのときの感情を一言で書き、強さを%であらわす
③ 出来事がおきたときに、頭に浮かんだ考えを書く
④ ③のように考えた根拠(事実)を書く
⑤ ③の考えを否定する考え(反証)を書く
⑥ ④と⑤をふまえ、③とは別の考えを書く
⑦ ⑥の考えを見つけた後の感情を%であらわす

流れにそって、実際に書いてみた。

① ストレスを感じた出来事を書く
・ 
歯みがきをしていたら、夫が「ああ~今日はいいお湯でしたわ!」とおちょくってきた。

② そのときの感情を一言で書き、強さを%であらわす
・ イライラ90% 疑問10%

③ 出来事がおきたときに、頭に浮かんだ考えを書く
・ 昨日私がお風呂のお湯を抜いたことを根に持っているんだな。じっとこっちを見てるし、おちょくってる。きっと嫌味を言ってるんだ。

④ ③のように考えた根拠(事実)を書く
・ 昨日、私がお風呂のお湯を抜いたことを謝っても、テレビを見ながらうなずくだけだった。
・ 普段はめったに視線をあわせないのに、めずらしくこちらをじっと見ながら言ってきた。
・ 「今日は」とわざわざ言っている。

⑤ ③の考えを否定する考え(反証)を書く
・ 怒る感じではなく、どちらかというと楽しそうに言ってきた。
・ めずらしく目をあわせて、表情は明るかった。
・ 「今日は」と強調はしていなかった。

⑥ ④と⑤をふまえ、③とは別の考えを書く
・ もしかしたら、本当に気持ちのよいお風呂で、ただそれを伝えたかっただけかもしれない。
・ ちょっとふざけて楽しませようとしたのかもしれない。
・ 気分よく一日が過ごせて、ふざける気分だったのかもしれない。
・ 私がお風呂のお湯を抜いたことは本当に忘れていたのかもしれない。

⑦ ⑥の考えを見つけた後の感情を%であらわす
・ 納得80% 安心15% 呆れ5%


なるほど。書いてみると、自分の「考え」と「事実」がよくわかる。
ちなみに⑥が「バランスのとれた考え方」であり、認知のクセがない状態といえる。考えるのが難しかったら④と⑤を「しかし」でつなげると、ぼんやりと見えてくるはずだ。

コラム法のおかげで妙な納得感に包まれた。安心したと同時に、夫に対して「なんでわざわざおちょくるような言い方するんだろう。普通に言えばいいのに」と少々あきれてしまった。

夫はたぶん、ただその日のお風呂が気持ちよかったことを伝えたかっただけなのだ。テンションが上がって、気分もよかったに違いない。

それに対し、私はかなり敏感だったと思う。その裏には、普段から目をあわすことなく、テレビばかり見て話を聞かない夫への不満も読みとれる。

私は、お風呂のお湯を抜いたことを謝ったけど、それがきちんと伝わったのか分からないから不安だった。いつもは視線をあわさないのに、じっとこちらを見ながら言われたことで「やっぱり根に持ってる!」と思いこんで、頭に血がのぼってしまったのだろう。

その後、夫に「ただ楽しい気分だったんだね。気分を悪くさせてしまってごめん。でも、普段から目もあわさずに会話するから、じっと見られてびっくりしたんだよ。ちゃんと普段から顔をあわせて会話しよう」と言えば丸くおさまるかもしれない。

でも、言っていない。言えていない。

私の中で得体のしれないプライドが「あやまらなくていいよ」とささやいている。子どもたちには言えるのに、夫には素直になれない私。中二病だろうか。

代わりに、長女に「こうやって話したら、おとうさんどう思うかな?」と聞くと、ハハっと笑って「うん。いいんじゃない」と言ってくれた。

いったいどちらが親なのかわからないが……。
結婚18年、いつまでも成長のない夫婦の間に入ってくれる子どもたちには感謝しかない。

子どもたち、ありがとう


いつか夫に伝えることができるだろうか。
もっと歳をとれば丸くなるのかな。いや、もっとクセが強くなるかもしれない。

でも、こんなふうに自分を振り返る作業は楽しい。
なんてことのない平凡な毎日が続くように、これからも「考え方のクセ」と向き合ってみようと思う。



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