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籠の中の少年

私は以前、児童館に勤めていた。そこに見た目は可愛らしい6歳の少年が在籍していたのだが… 周りの先生曰く、注意が必要な家庭だと言う。というのも、まだ0歳の頃から併設されている保育園に来ていたのだが

その子の家庭環境は複雑だった

本人の性格も相まって、よく他の園児とトラブルを起こす。当然親の耳に入る。そういったことが重なるにつれ、「なんで家の子ばかり言われるんだ」とモンスターペアレント化してしまった。

私のやり方が下手だったのか、それともストレス発散対象にしやすかったのか、見事サンドバッグとなった。殴られたり蹴られたりと散々だった。

「家庭環境の悪さからくる問題行動は、子どもに責任はない」

同業種の人からそう聞いたことがある。それは私もそう思う。だからと言って子どもでも守るべきルールはある。むしろ「しつけ」と言って注意されることは多いかもしれない。同僚の人とこんな会話をしたのを覚えている。

「学校・児童館・家」この3つで大人が言うことが違うから、可哀想

子どもは誰の言う事を聞いたら良いのだろう。大人でも日常生活で、毎日3つの自分を使い分けるなんて大変だ。でも私がもっと可哀想と思ったのは、

逃げ場がないこと

大人になったら環境が合わなくても、職場を変えるなり離婚するなり住む場所を変えるなり、自分で対策出来る。だが子どもは、それが出来ない。与えられた環境の中で生きていくしかない。

そして否が応でも、何かあれば親の耳に入る。「学校・児童館・家」この3つで管理されているのだ。解放された時間や所属団体がないのは、子どもにとってかなりのストレスなのは容易に想像出来る。籠の中の鳥ならぬ籠の中の少年だ。

あれから数年。彼は今どうしているだろうか。かつて若者の揺るぎない支持を受け、死後30年経っても尚その名を残す尾崎豊。彼の代表作「15の夜」に「盗んだバイクで走り出す」という歌詞がある。まだそれ位なら良いのだが、もっと悪化していたらと心配になる。籠の中で管理出来る年齢は限られているからだ。

今はどうしているか知らない私に出来るのは、彼が幸せに生きているのを願うことだけだ。


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