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NPO代表としては致命的なのだけど、「寄付をください」「会員になってください」というのが滅法、地球がひっくり返っても得意になれないであろうレベルで苦手なわけで。

思えば学生時代にスーパーで試飲してもらう日雇いバイトをしていたときも、担当していたのが新発売の、ちょっと高めの牛乳だったので、試飲してもらった人になんだか申し訳なくなって、

「いや試しに飲むだけで買わなくていいですから」という、完全に営業妨害をしていた最低なアルバイトだったわけで。もちろんそのバイト先から二度とお声がかかることはなかったわけで。

でも活動を始めてからたった一度だけ、「こうこうこうでこんな状況だから、どうか●●万円寄付をください」とハッキリクッキリ具体的にお願いしたことがある。

私に突然具体的に金額まで提示されてプレゼンされたのは、恐らくこの世でたった一人しかいなくて、

名前を家山さんという。

バートランド・ラッセルを愛し、ロマンを理解し、イタリアやバンクーバーなど世界中を行ったり来たりしながら、森と木の仕事をしている人だ。

ある人は家山さんのことを「屋久島の木こりの未来を切り拓いた人」と言っていた。

家山さんは穏やかなユーモアの持ち主で、ツッコミ上手でもある。

どうしようどうしようと思った時、一番に家山さんが浮かんだのは、●●万円くださいなんてプレゼンしても、「はいはい、あなた何言っちゃってるのよ(笑)」とスルリと気持ちよく断ってくれそうだったからかもしれない。


でも家山さんは、「プレゼンは全然響かなかったけど」と笑いながら、即日寄付をくださった。そして団体は家山さんに救われた。

家山さんにお会いできるのは年に一度か二度しかない。

先日家山さんにお会いしたときに、家山さんに救われた弊団体のここ1年の話を写真つきで報告させていただいた。

2017年に『映画の妖精 フィルとムー』ができてから、素晴らしい方たちの手で他の国にも広がっていて、今年数えたら14ヵ国になっていたというそんな話をした。

家山さんは私の話が終わったあとも、15分くらいに渡りずっとしみじみ感動されていた。なかでもしきりに感動されていたのがこの話。

ネパールにて。

ネパールで活動されている古屋祐輔さんについて、震災で親を亡くした子ども達がいる孤児院に、柔道の授業の見学に行った時のこと。

子ども達が柔道の授業を受けている間、端の方で見学していたちびっこ達が退屈そうだったので、「映画見せていいですか?」と、上映する予定ではなかったから上映機材はなかったけれど、手持ちのパソコンで映画を再生してみた。

流したのは『映画の妖精 フィルとムー』と、DigiCon6 ASIA様を通して貸与いただいた、素晴らしいクリエイターの皆様が制作された言葉のない短編集。

子ども達はずっとずっと、片時も目を離すことなく観ていた。雨が雹に変わりトタン屋根を打ちつける騒音の中でも、片時も目を離すことなく観ていた。

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柔道の休憩中には、大きい子ども達もわーっとやってきて、写真の中央には圧死しかけている私がいる。

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圧死しかけながら幸せを噛み締めていた、あの時の写真に家山さんが感動してくださったことが嬉しかった。


それからこの日いろいろ悩んでいた私に、家山さんはこんなことを言ってくださった。


「自分が想像していなかったことに巡り合うのは避けられない。
いちいち落ち込んで、いちいち傷つくしかないよね。
でも悩むことと心を奪われることは別」

「パーフェクトな世界は絶対にない。でもそこを目指している自分を絶対にぶらさないこと。常に光の方を見て判断しなさい」


常に光の方を見て判断しなさい――


きっとこれから、何度も思い出す言葉になる。



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