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ブレない魂に真実の愛は宿るし別に宿んなくてもいい

なかなか書けなかったのだけれど、これもNHKドラマ「いいね!光源氏くん」についてやっと書きます。なぜか「ジェインエア」と「高慢と偏見」も出てきます。
ドラマ主演の伊藤沙莉ちゃんは映像研のアニメで浅草氏の声を担当していてその声と演技が圧巻でハマりすぎてて誰も彼も大絶賛でした!
彼女の女優さんとしての演技はこのドラマで初めて見たけど、いいなー。フツーっぽいこじらせOLなんだけどすごいリアルで、ぶっとんだ設定に、ありえない真実味を与えてました。美人すぎる妹にコンプレックス抱いてるめんどくささもわかるー(-_-;)
主人公の名前も沙織、なのでこれまた勝手に感情移入しやすかったり(笑)

設定としてはある日、光源氏がタイムスリップしてきて独り暮らしの沙織さんと同居生活していく。光源氏の千葉雄大くんが悪くないんだけれどこう、もっとうちのかねあきみたいな切れ長でまつげの長い美少年にやってほしかったというかまあいいけど。
イケメンだし、平安時代に帰るあてもなさげだし、沙織さんも情が移ってずっと一緒にいてほしいなあとか思い始めちゃう。光くんのほうも現代が意外に居心地よかったらしくて沙織さんを幸せにしたいなあと思い始める。
でも、源氏物語の読者の方ならご存知だろうけれど、光君は須磨に行く途中で沙織さんの部屋に迷い込んだわけで、既に紫の上は奥さまだし、兄の側室の朧月夜に手を出したり、でも本命は亡き父親の正妻の藤壺の宮だったりするわけでもう節操なさ過ぎw沙織さんもちょっとは慎みなよーとあきれてるwそしてやっぱり光くんがいるべきは現代ではなくて、平安時代の物語の中なのだからと、沙織さんは気持ちを押し殺して健気に必死に光くんがは元の世界に帰る方法を探すのです。
そのなかで、やっぱ現代の女子の沙織さんは光くんに本音をぶちまけてしまう。「あんたが愛した女達、全員幸せになってないから!他の女が産んだ子を育てさせたり、親子を引き離したり!」そうなんだよねー、、あさきゆめみしではどこか救われたように描かれてたけど、原作読むと、紫の上は女三宮のことで思い悩んで失意のうちに亡くなってたしね。
そゆわけで、平安時代に帰れそうにない光くん、それならせめて、このまませめてたったひとりの女性を幸せにできたら、と沙織さんに気持ちを伝えます。しかし、この時、既に、彼女だけは博士から光くんが平安時代に戻れる方法を知ってたので、心を鬼にしてフリます。大嫌いだし、迷惑です!と。まーそうだよねー本当に、好きだったら、好きな人がいちばん幸せになる方法を考える。あと、こっちが大きいけど、別に本命で帰りたい場所があるのに、その代替としてこっち選ばれても不本意だ。そんなんいらん。そゆわけで、博士によると光くんが平安時代に帰る方法としては、彼の行きたいとこを思い浮かべつつ、ちょい危険な目に合うといいらしく、沙織さんは最後のデートの時に光くんに平安時代を想いうかべさせ、自分は車が行きかう横断歩道に立つという身体の張りっぷり。沙織さんを助けようとした光くんは無事に平安時代に転送されるのでした。
なんとも切ない自己犠牲なようで、なんというか、これはもっともな傲慢な理屈かもしれないけれど、自分だけを見てくれる男しか欲しくないよね、と思う。で、数か月後、沙織さんは淡々と仕事をこなす日々を送っていたのだけれど、一緒に見たいねえと言っていた花火大会の日に、なぜか光くんが現れるのだ。どうやら一番会いたいと思っていたとこに時空ジャンプしまったらしい。そゆわけで、2人は何の気兼ねもなくハッピーエンドを迎えたのでした。

なんだかこの強情なこじらせヒロイン、誰か思い出すなーと思ったら、シャーロット・ブロンテの「ジェイン・エア」。私は妹のエミリー・ブロンテさんが書いた「嵐が丘」と共に、人生の節目に交互に読み返す本の一つです。
この「ジェイン・エア」は、良家の子女は読んだらいけないと当時言われていたらしいのだけれど、現代からするとその感覚はわからない。でも、逆にどういうものが推奨されてたかというと、オースティンの「高慢と偏見」とやらで、こちらも私は嫌いではないのだけれど、いわゆる恋愛しつつガッツリ領地や財産もチェックする婚活本みたいな感じです。「高慢と偏見」の二人の姉妹は美人だけど、ジェインはそうでもなく、財産も領地も外見もあまり考えず、愛のみで判断する、ある意味ロックな女です。流されない。
結婚当日、ロチェスターさんに離婚できない発狂した妻がいるとわかったときも、彼に一緒に南欧あたりに逃げようと乞われたときも、さっさと断ち切って行方をくらます。宣教師のジョンさんに求婚されたときも、いや、あんたロザモンド嬢好きやったやろ、私のことは妥協で選んだやろ、と結婚せず妹としてならインドについていくよーと男性には生殺しのような返答をする。彼女にとって大切なのは、愛されているかどうか、で、そこに領地も財産も外見も若さも必要なかったりする。だって、ロチェスターさんのもとに帰ると決めたときも、彼の魂の声を聞いたからで、前奥さんがなくなったこともその時は知らなかったわけだし。て、ことは実は道徳も関係ない。これは密かにに怖い。
まあでもわかる。美人でない女にもプライドはある。二番手はイヤだ。財産とかで目くらましされたくない。どれだけ、愛されているか、必要とされているか。唯一無二の存在として見てくれているか。沙織さんも、ジェインも、謙虚なようで、献身的なようで、芯は全然ブレない、本当ワガママな女なのだ。逆に、女はちゃんと愛されていると感じたら、いくらでも献身的に謙虚に男のために尽くすことができる。
なんとなく、私も結婚やら制度にとらわれず、愛が薄れてきたら、いつでも関係はリロードしていいと思ってる。気になる人がいたら、その人の方が男性にとって必要なら迷わずそちらに行ってほしい。愛されてないのに惰性で傍にいたくない。街中で可愛い子に目移りするなら、どうぞその場で声かけてナンパしてきてください、と思う。私だけを見る男しか欲しくないのだ。
沙織さんもそういうこじれた女だからこそ、あまたの六条院の女性たちをさしおいて光くんのいちばん、唯一無二の必要なひとになれたのだし、ジェインもアデルの母やブランシュさんなど、美人で上流な女性たちをさしおいて、ロチェスターさんを夢中にさせたのだと思う。
そして、光くんが戻ってこなくても、沙織さんは淡々と日常を過ごしたと思うし、実際にそう過ごしてたし、ジェインもジョンさんとプラトニックにインドに行くなり、教師を続けつつ、遺産にも手を付けず暮らしていたと思う。自立した女と呼ばれることも多いけれど、仕事と遺産と教養があれば女はブレないし、流されずに媚びずに真実の愛をつかみやすいし、別に愛がなくても生きて行けたりするのだ。仕事と遺産は教養があればついてくるから、教養が一番マストなんかも。

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