隠し事について、昔話を添えて

僕は、嘘をつく人があまり好きじゃないです。
とはいえ、僕も結構な嘘つきです。
嘘とはいっても、誰も傷つかないようなささやかな嘘です。
「ギョーザ5億個食べたわw」とか「スポンジかと思ったらカマキリの卵でわろた」みたいな、そんなくらいの嘘です。
とはいえ嘘つきは嘘つきで、なのに、噓つきが嫌いってのもちょっとヘンかもしれません。
嘘つきのくせに大層な身分だなと、自分でも思います。
今からするのはそんな話です。


そもそも、なんで僕は嘘が嫌いなのだろうか。
嘘嫌い。
それは漫然とした自分の性質で、どこから発しているのか、僕自身掴みかねているところがある。
ただ、正義感とか倫理とか、そういうものから来る嫌悪じゃない。
そのことだけはなんとなくわかる。
だから僕の嘘嫌いは、多分、個人的な感情に基づいた嘘嫌いだ。
少しずつ紐解いていく。
僕が嫌いな嘘は、どんな嘘なんだろう。

ふと、昔を思い出してみる。
ある界隈があった。
30とか40人前後の、よくあるインターネット上の仲良しグループだ。
discordをつないでゲームをしたり、お互いの過疎配信をお互いが視聴し合ったりしていた。
僕もその界隈の一人だった。
存在感はない方だったと思う。
でも、特別仲のいい人たちもいて、振り返ってみると青春だったように思う。

その中に、何人か中心人物がいた。
界隈のほとんどみんなと仲が良くて、その外の人とも関りがあるような人たちだ。
正直、あまり好かなかった。
身の程知らずも甚だしいが、多分、嫉妬していたんだと思う。
なんとなくキラキラしていて、みんなから好かれている彼ら。
恐らくは僕だけが、彼らのことを好きじゃなかった。

そんなとき、彼らのうちの一人が界隈の人と付き合っていると発覚した。
発覚といっても、別に後ろめたいことをしているわけじゃない。
仲のいい男女が、気が付いたら好き合っていた。
それだけの話だ。
実際、界隈のみんなも「えー、付き合ってたんだ!お幸せにね~」くらいの反応だった。

僕を除いて。

いくら僕が彼に嫉妬していたからといって、恋人バレくらいで何かを思うわけじゃない。
そりゃいるだろ、って感じだ。
そもそも、界隈を盛り上げたり、広げてくれることへの感謝はあった。
だから、彼に恋人がいること自体には、なんの問題もなかったはずだ。

問題なのはその恋人が、僕と特別仲のいい女性だったということ。
まあ、特別仲がいいなんて思っていたのは僕だけだったのかもしれない。
とにかく、そういう女性が僕の嫌いなやつと付き合っていた。
僕は多分、その人のことを好きなわけじゃなかった。
にもかかわらずショックだった。
なぜだろうか。
その人が仮に男性だったとして、同じようにショックを受けただろうか。
うまく言い表すことは難しいが、たとえ好いてはいなくても、男女の機微みたいなものはある。
きっと僕は彼女にそれを感じていて、彼女はそれを感じておらず、僕はなんとなく「一番仲のいい異性は僕なんじゃないか?」なんて、しょうもない勘違いをしていたのだ。

彼女はそれからも友達でいてくれた。
が、僕はどうしても前までのようにはいられなかった。
遊び終えて解散した後なんかに、「これから彼氏と通話するのかなー」とか「もう寝るって言って解散したけど、ほんとは寝てないんだろうな」とかを、消えないオンライン表示を見ながら考えていた。
僕には何も隠していることはなかったのに、僕には彼女の全てが不透明に見えた。
その差がなにより大きなものに思えて悔しかった。

彼女とは、妙な気まずさがチラついて少しずつ遊ばなくなっていった。
そのまま今では疎遠になってしまった。
ただ、隠し事に対する嫌悪だけが残った。

これが僕の嘘に対する嫌悪感の正体なんだろうと思う。
今思えば、全部が嫉妬だろう。
僕には隠せることが何もないから、何かを隠している人たちが羨ましくて仕方がないのだ。
何かを隠そうとする嘘、それが僕の嫌いな嘘だ。
僕も隠せることがほしい。
そしてそれを隠さないでいたい。
そうすることではじめて、過去のみじめな自分が報われるような気がする。


今日はこんなことを考えていました。
できるだけの真実を伝えようとはしてますが、何分昔の話なので、どこまでが正しいのか、自分でも分からなかったりします。
それでも、自分なりに、自分の過去を書き切ったつもりです。
こうやってnoteで自分をさらけ出そうとする試みも、もしかしたら過去と決着をつけようとする心の現れなのかもしれません。

なんだか長くなってしまいました。
恥ずかしい話をしてしまった気もします。
それでも、昔の自分を素直に語ってあげることで、彼を少しずつ供養してあげられたらなと思っています。
しばらく昔の話はしません。
でも、いつかまたすると思います。
そのときは、僕の法事に付き合っていただければ幸いです。
それでは、また。 

追記:「隠し事」の代わりに「書く仕事」をしています。
    なんつってな、ガハハ。


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