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【UWC体験記⑪】24 Hour Raceー人身売買撲滅チャリティーマラソンへの参加

ACに行く前から先輩たちから学校の目玉イベントとしてよくお話を聞いていた24 Hour Race。

8人のチームでリレー形式で合計24時間を走り、人身売買に取り組むチャリティへのファンドレイジングを行う、というもの。

世界の人権問題に対して自分が直接アクションを起こすこと、というのは渡航前からやりたいと思っていたことだったで、自分が参加することをとても楽しみにしていました。



チーム結成

イベント自体は3月なのですが、10月いっぱいがランナーの募集期間となりました。自分たちでチームを作ってサインアップしてもいいのですが、私は個人でサインアップし運営側にランダムにチームを組んでもらうことにしました。

そして11月にチームが決まり、この時点からチーム専用のファンドレイジングページがセットアップされ、ファンドレイジングを開始します。

参加者は生徒が150人ほど、教員も30人ほどという学校の半分が参加する大イベントになります。


ファンドレイジング

運営側からランナー1人当たり£60、チームで合計£480というファンドレイジングの目標が提示されており、基本的にはレースを走るためにこれだけレース前にファンドレイジングすることが必須とのこと。

ファンドレイジングページを親戚や友達に直接送って寄付をお願いしたり、SNSで広めることが主なファンドレイジングの方法となり、何もしなくてはもちろん寄付は集まりません。

私はチームリーダーになったのですが、最初の方はチームのメンバーのやる気があまりなくとにかく時間が間に合うかでとても焦っていました。

カーニバル

レース約1か月前の1月末に実施された24 Hour Race Carnival。それぞれのチームが出店することのできるお祭りのような感じで他の生徒の売店から食べものやクラフトを買ってお互いファンドレイジングしようという取り組みです。

クッキーやドリンクの定番飲食からオリジナルシール、マッサージやテーブルサッカー選手権を開きエントリー料を取るチームがあるなど、様々な出店があり1日で合計£2,000(300万円以上)もの売上があるイベントです。

私たちのチームはスペイン人のメンバーが作ったパエリアと食べれるクッキー生地を販売し、£120を売上げました。

私のチームThe Randomsのスタンド
他のチームのオリジナルシール

その後は食堂でデザートとしてチョコレートクランチを売ったり、チームメンバーが家族に寄付を募るなどして、なんとかレース直前に目標額に到達することができました。

チョコレートクランチ


運営チームに?!

この24 Hour Raceは完全に生徒3人の運営チームにより実施されていました。その3人の中でもリーダーであるExecutive Directorという役割を担っていたのがAILEMの初期コアメンバーの1人として面識のあったLさん。

レース当日の約3週間前の昼ごはん、食堂で座っていると突然Lさんが目の前に。「24 Hour Raceについてどう思う?」と。

その時はかなり正直に「チームメンバーがあまりやる気なくてファンドレイジングが結構負担になっている」と答えました。

すると、Lさんは何か自分にできることがないかと私のチームメンバーとミーティングをしてくれることに。私が何か言うよりも全然効果は大きく、とても助かりました。

その時期に彼女がオーガナイズしたIberolatino(ラテンアメリカ)ナショナルグループのnational eveningが大成功だったこともあり、とにかくその人のリーダーシップ、何かを成し遂げる力がすごい。

その頃ACの中でのチームワークについてかなり悩んでいたものの他にそれについて話せる人が見当たらなかった私は勇気を出してLさんの部屋に行ってみることにしました。

Lさんは私の緊張を察したのかすぐにベッドに座らせてくれ、私から今上手くいかないことやACの中で納得いかないこと、イライラすることなど、ほぼ愚痴のような相談をしました。

すると私が感じていたことに対して完全に同意してくれた上で、「むかつくけど自分の見栄は後回しで他の人に自分の手柄を分けてあげると協力してくれるようになるよ」と。

そんなことまで考えられるような余裕は全くなかった私でしたが、Lさんの様々な成功は自分を多少でも犠牲にした上に成り立ってるんだなと深く響きました。

そうして話していると、急にLさんから「Sara来年のExecutive Directorやらない?」と。

一瞬え?と耳を疑ったのですがどうやらLさんは少し前から私に引き継ぎたいと思っていたそう。

先日食堂で私に話しかけてきたのも本当は私のチームについてではなく、レース全体として私がどう思ってるかを聞いて私が興味がありそうかを探っていたと。その時私がかなりネガティブな反応をしたため、一旦私に引き継ぐことは諦めていたが、やっぱり私にやってほしい!と言ってもらいました。

まさか自分がとても尊敬していた人にそんな風に認知してもらえていたこと自体がとても嬉しく、大きな自信になったことを覚えています。

もちろんこんな大きなチャンス、ぜひやりたい!と返事をし、その日から私も運営チーム3人のグループチャットに入れてもらい、見習いの形で手伝うことになりました。

もちろんほぼ雑用ではあるのですが学校ニュースレター用の文章執筆、備品の注文、インスタのスケジュール管理などを行い、教員とのミーティングなどにも参加させてもらい運営側を近くで見させてもらいました。

自分がただの参加者だった時には想像も付かなかったほどの膨大な仕事量を垣間見ることができかなりおどろきでした。

レース当日

レース当日は私は運営の手伝いとして他に募集していたボランティアの生徒たちと一緒にセットアップから。ちょうど2年生の模試最終日だったので体育館から170セットの椅子と机を片付け、150人ほどの生徒ランナーが寝る用のマットを運び入れるなど、レース開始前から肉体労働でした(笑)。

模試用の体育館
机とカーペットの撤去後セットアップ

そして簡単なオープニングセレモニーがあり、午後6時にレース開始。約30分ごとに走るメンバーを交代していき、事前にダウンロードしたアプリでチームの合計距離が算出されます。コースは校舎内の一周約2キロ。舗装された道とはいえ大きな坂があり、かなり体力を消耗します。

レース中は走っていない人も常に体育館に待機になるため、食事やアクティビティも開催されます。腕立てやプランクチャレンジなどが実施され、その他の時間でも自由にバレーボールをやったりなど、体育館内は常に盛り上がっています。

腕立てチャレンジ

そして私の3回目の走るシフトは午前2時。緊張でその前も寝れずかなり寒い中前の人からバトンタッチ。深夜なので暗く寒く音楽などもかかってなくとにかくきつかったです。しかも夜の時間帯はみんなが寝れるようにと1時間交代だったため永遠に感じられました。

そして帰ってきてからも何か運営チームの手伝いでできることはないかとうろうろしており、色々と緊張で結局ほとんど寝れず午前8時のシフトで走ります。

その後チームメンバーの負傷などにより本来ならば8人のチームで1人は合計3時間走るところ、合計4時間半走りました。日本での部活経験から体力と根性には自信があったのですがいくら休憩があっても疲労は着実にたまり想像以上にしんどかったです。

レースに勝つことはほとんどのチームが重視していないのでとにかくレースが終わった時の達成感はすごいものでした。

1か月ぶりの晴れ!

また、走らない人の中でもMarshalというコースの5か所に配置されているテントに救急担当の生徒が交代で入っていて、毎回通るたびに応援してくれることはびっくりするほど励みになりました。非常に多くの生徒と教員が携わり、学校全体となって実施されるこのイベントの一体感には感動しました。

テントから出て応援してくれるようなMarshalも

そして終わった後も特にやれと言われた訳ではありませんが片付けを手伝うことに。また肉体労働となり、その時点では本当に歩きたくも無いような状態だったのですが自分を鼓舞して片付けの最後まで残り、やっとイベント終了となりました。

片付け終了

振り返り・改善点

参加者・そして少しだけ運営側としても24 Hour Raceに携わり、双方からの改善点が見えました。ただやはりこのイベントはただのレースではなく、ファンドレイジングが一番の目的なので運営側が発信するメッセージの一つ一つにとても慎重にならないといけない大変さも目にしました。

改善点① ファンドレイジングが「強制」のようになっている

もちろん最初にサインアップする時点では誰もがファンドレイジングをする気があるのですが、数か月も経ちその時のモチベーションを忘れて来た時にどうしても強制されているような感覚になってしまいます。

そもそものやる気が無いので新しいアイデアが出てきたりすることもなく、最終的には多くの人が親に寄付をお願いしたりなどの方法を取ることになってしまいます。

改善点② 人身売買という社会問題へのフォーカスが弱い

このレースの一番の目的は社会問題に対してアクションを取ること。なのにも関わらず、人身売買、modern slaveryという大きな国際問題に参加者は全然詳しくない。

PeaCo(平和委員会)によるセッションが1回あったっきりであとはとにかくお金を集める、そしてその時の謳い文句としてとりあえず「human trafficking and modern slavery」を皆が連呼しているように見受けられたのです。

結果自分たちが集めたお金が具体的にどこに何のために役立てられているのかに特に関心がない人も多く、お金の流れへのアカウンタビリティも求められていませんでした。

改善点③ 運営とランナーのコミュニケーション不足

1年目で参加すると当日の流れなどイベント前はかなり不安になるのですが、あまりランナーへのイベント詳細の説明が少なく当日の混乱がかなり多くなってしまっていました。

ファンドレイジングにおいても何をやればいいのかが最初は全く分からず手探りで進むしかなく、チームリーダーという立場でも運営側とはたまにしかコンタクトがなく今何をしていいのかが分からず焦ることが多かったです。


来年の主催者に!

Lさんに直接お誘いを受けていたこともありますが、こんなに素晴らしいイベントなのに改善点がたくさんある、ということで来年自分が運営として携わることへの意欲がとても強くなっていました。

ただ来年の運営メンバーは私含め生徒全員へのオープンな募集で行うため、私もLさんとは仲良くなってもその話はなるべくしないようにして、公平に選考課題に取り組み、インタビューを受けました。

少し携わった分想いは人1倍だったのですが運営チームも私を特別扱いすることは一切なかったのでとても不安でした。

今考えればそこまで来て選ばれないことはないと思えるのですが無事、次期運営チームのExecutive Directorとして選出されました。

ものすごく嬉しく、まだ1年目が終わる前から楽しみでたまりませんでした。もちろんその頃はこれによってUWC生活の中で最も苦しく、感情の起伏が大きく、学ぶことの大きい約半年が待っているとは思ってもいませんでした。


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