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リテラチャーレビューの書き方

こんにちは。

サルタックジャパンで国内インターンをしている石川です。

私は、エクアドルのスラムやパレスチナの難民キャンプを訪れた経験から、途上国の教育課題に関心を持つようになり、特に、テクノロジーによる教育の質の向上に強い関心があります。

普段はIT企業で中小企業のオンラインマーケティング支援に従事しており、このたびサルタック理事の山田さんとのご縁でインターンをさせていただくこととなりました。

今日は、現在私が取り組んでいるリテラチャーレビューの書き方について紹介したいと思います。

エクアドルの首都キトにて(2012年)

パレスチナの難民キャンプにある国連が運営する小学校にて (2016年)

リテラチャーレビューとは
A literature review is a text of a scholarly paper, which includes the current knowledge including substantive findings, as well as theoretical and methodological contributions to a particular topic. Literature reviews are secondary sources, and do not report new or original experimental work… ...Literature reviews are a basis for research in nearly every academic field. (Wikipediaより)

リテラチャーレビュー(文献レビュー)は、現在すでに明らかにされている研究結果をレビューしたテキストであり、特定のトピックに対する理論的および方法論的な知見を含む学術論文です。リテラチャーレビューは過去の研究論文の二次的な情報源であり、新規またはオリジナルの実験的研究は含みません。(中略) リテラチャーレビューは、ほぼあらゆる学問分野の研究の基礎となっています。

(筆者意訳)

端的に言えば、リテラチャーレビューは過去の学術論文を評価しながらまとめたものです。

リテラチャーレビューを書くことで、先行研究が何を明らかにし、何が明らかになっていないのかを明確にすることができるため、ほとんどの学術論文の導入部にはリテラチャーレビューが挿入されています。

リテラチャーレビューはなぜ重要か?

A review of prior, relevant literature is an essential feature of any academic project. An effective review creates a firm foundation for advancing knowledge. It facilitates theory development, closes areas where a plethora of research exists, and uncovers areas where research is needed. (Webster and Watson, 2002)

先行する関連文献のレビューは、あらゆるアカデミックプロジェクトの中核です。効果的なレビューは、知識を前進させるための確かな基盤を作り出します。それは理論の進化を容易にし、すでに多くの先行研究の存在する領域や、一方で、研究が必要な領域を明らかにします。(筆者意訳)

つまり、あらゆる研究の基盤をつくるのがリテラチャーレビューであり、それだけに重要性が高いということです。

リテラチャーレビューの方法

今回は私が現在取り組んでいるリテラチャーレビューを例に、書き方をご紹介します。

私が現在取り組んでいる方法の大きな流れとしては、下記のとおりです。

インパクトが大きい文献を見つける →

Reference 文献を辿る →

Reference 文献のReferenceを辿る →

リテラチャーレビューをまとめる

ここでいう「インパクトが大きい」文献とは、ランキングの高い(インパクトファクターが大きい)ジャーナルに掲載されている論文や引用数が多い文献が該当します。(実際にはこの2つは大いに重複しますが)

また、国際機関が出しているFlagship Report (世界銀行の世界開発報告書、ユニセフの世界子供白書、ユネスコのGlobal Education Monitoring Reportなど) は、国際(教育)協力のホットトピックを、まさにその分野の研究者が時間をかけて作成しているので、そこで引用されている研究論文はその分野で非常に重要なものである可能性が高いといえます。

私はほぼ前提となる教育の知識がない状態でこのインターンに参加しました。

そこでまず、現在の国際的な潮流や前提知識を学ぶべく、理事の畠山さんに紹介していただいた World Development Report をまとめることからはじめました。

World Development Reportとは、世界銀行が毎年出している「国際協力分野で最も影響力のあるレポート(畠山さん)」であり、2017年のテーマがまさに教育でした。

第7章を中心に、教育におけるICTの活用が分析されており、まずは第7章をまとめていくつかのコメントを付与しました。

次に、World Development ReportのReferenceに掲載されている文献の中から関連性の高い文献のレビューを進めていきます。

Google Scholar 等の文献検索システムで文献名あるいは研究者名を検索をして、ヒットしたPDFファイルを読み込んでいきます。

Google Scholar

ここからPDFを閲覧できる

文献を読み込む際には、マトリクスを作り、下記 8 点をスプレッドシートにまとめていくようにします。そうすることで、各文献の比較が行いやすくなります。

文献の基本情報
研究者名
執筆年
文献の発表元/書籍の出版社(所在地・社名)/報告書の発行主体
URL
Research question
Methodology
Results
Comments
Originality・Contribution
Critical Review
References

スプレッドシートのまとめ方例

そして、先行研究が何を明らかにし、何が明らかになっていないのかを明確にしながら、自分のResearch Question を立てます。

はじめは、前提知識もなく文献を読み進めるのに苦労をしましたが、複数の関連文献を読み進めるにつれ、既知の情報が徐々に増え、読むスピードが上がったのと同時に、自分なりの仮説も立てやすくなりました。

仮説に基づき自分のResearch Question が決まったら、さらにその問いに沿って文献をまとめ、リテラチャーレビューを書き上げます。

良いリテラチャーレビューとは?

リテラチャーレビューでは特に次の点に気をつけて書くようにします。

motivates the research topic and explains the reviewees contributions
describes the key concepts
delineates the boundaries of the research
develops a model to guide future research
justifies propositions by presenting theoretical explanations, past empirical findings, and practical examples
presents concluding implications for researchers and managers.
(Webster and Watson, 2002)

・レビューのトピックと意義を明記し、先行研究の結果と功績を説明している
・レビューの核となるリサーチクエスションを説明している
・レビューで取り扱う研究領域を明確にしている
・レビューの結果が将来の研究の方向性を示している
・理論的な説明、過去に証明された知見、実践的な例を提示してレビューで扱うトピックを正当化している
・レビューの結論が研究者によって将来の研究に応用可能である
(筆者意訳)

今後の展望について
現在は、「幼少期のオンラインの読み聞かせによって子供の学力は上がるのか」というテーマの元、リテラチャーレビューを進めています。

今回のレビューで明らかにしたい問いは下記のようなものです。

・読み聞かせは学力と因果関係があるのか? - それはなぜか?
・「本」の定義 - 本/絵本/紙芝居/アニメーションの学力への影響の違いは?
・読書と読み聞かせの違い
・保護者ではなく、第三者による読み聞かせでも効果はあるのか?
・年齢によって効果は変わるのか?
・効果的なオンライン学習はどのようなコンテンツ・コンテクストで行われているのか?
・毎回ミーティングの度に経験豊富な理事の方々にフィードバックをもらえるので、大変勉強になっています。

日本 - イギリス - アメリカ - ケニア間でスカイプミーティングを行なっているため、必ず誰かが深夜あるいは早朝の時間帯の犠牲になります。

いつも大変申し訳なく思っています。

きちんと結果をまとめられるよう引き続きレビューを進めていきたいと思います。

また、今後は、本職での経験を生かし、サルタック・ジャパンの情報発信力強化にもっと貢献していきたいと考えております。

今後とも当ブログをどうぞ宜しくお願い致します。

2018年2月11日初出の記事を転載

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