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「他意のない愛」日記|小野寺

先日仕事でお会いした方が、私のささくれだった指先を見て「クリーム塗りなさいよ」と言った。私は見透かされたような気になってどきっとして、「そうなんですよう」と合ってるのかよく分からない返事をして、いそいそとハンドクリームを取り出した。

若い時だったら、多分理不尽に怒っていた。「ほっといてよ」と。私はいまだに不安になったとき指の皮をむしる癖が治らなくて、基本的にいつも不安なので指先から毎日血を流していて、そういうことは多分見れば察せるだろうけれど触れられたくないので「ほっといてよ」。

でも先日のやり取りを反芻して、うん、いやではないなと思った。私のこと無視しないでくれて嬉しい、指摘してくれてありがとうございます、とすら。その方の言葉には軽蔑も嘲りもなく、ただ「手荒れしてるならケアしてあげなさいよ」という意味だけ含まれている感じがして。

人に怒られたり持論を述べられたりはしたくないけれど、人に「見てるよ」とは言って欲しい。私は今までもたくさんの人に見てもらってきたけれど、それを口に出されることはそうないから。人間、子供と大人の境目なんてなくて、やることやってるくせに笑えるほど単純である。
今これを打ち込んでいる私の手からは、ほのかに花の香りがする。

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