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ライフイベントとストレス度 - 主観に依らず休みをとるためのツールとして

マネージャーにはできないこと、マネージャーにしかできないことのなかで、「ときには長い休みをとらせる」ことがマネージャーのやるべき重要な仕事のひとつであると書きました。でもどうやって? 今回のフレームワークは、それに役立つものです。

なぜそれが必要か

有給を1日2日ほど消化するような短い休みと違って、しっかりと長い休みをとる(とってもらう)ことは意外と簡単じゃありません。それにはいくつもの理由があり、どの組織にも業務上の都合があるはずです。しかし、そうした都合がすべてクリアになった場合でさえ、長い休みは取りづらいんですね。なぜか。まず本人が長い休みを必要だと思っていない。いわんやマネージャーにおいてをや。ということなんです。

さらにいえば、長い休みが必要だと思っていても、心の健康を理由に休みを言い出すことにためらいを感じさせてしまう空気がある、ということなんです。これが体の健康のことであれば、「熱があるので休みます」と言えば「お大事に」ですむのが普通ですが、心の健康を理由に「なんだかやる気がでなくて」と言って「休むか遊ぶかしてこいよ」と言われるのは残念ながらまれです。心の健康を理由に休むときは、本当は詳しい理由を言う必要さえなくて「メンタルヘルスで休みます」「りょ」くらいになればいいんですけどね。

ライフイベントとストレス度

そんなときに活躍するのが、メンバーでもマネージャーでもない、第三者による研究です。外部の視点を持ち込むことで、自分が(その人が)どれくらいのストレスを受けているか、それによってどれだけ心身の不調が表面化する可能性があるかということが、客観的に判断できるようになります。

ライフイベントとストレス度という名前で紹介するのは、「Holmes and Rahe stress scale (1967)」という非常に有名な研究です。聞いたことがある人も多いと思います。また、これを日本の最新の状況にあわせた研究として「出来事のストレス評価 (夏目誠, 2008)」もご紹介します。

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ホームズとレイのほうは43項目、夏目さんのほうは28項目のライフイベントが取り上げられており、「1年の間に経験したライフイベントの点数の合計が150点以下なら30%、150点から300点なら50%、300点以上なら80%の人は次の年に心身の不調に陥る可能性」があるそうです。検索すると、見やすく数えやすいフォーマットを見つけられると思いますので、まずはご自身で試してみてください。

具体的な利用方法

私はこれを、チームの集会などで説明したり、1on1の機会に持ち出したりしているわけですが、実際にライフイベントからストレス度を測ってみると、めでたい出来事からも人はストレスを受ける、ということがわかります。「結婚」とか「抜擢に伴う配置転換」とか。ホームズとレイのほうには「クリスマス」や「入学・卒業」というのもあります。
考えてみれば、ストレスは必ずしも悪いものではなく、むしろ心に張りが出ていきいきとすることだってありますよね。忙しくなればなるほど力を発揮する人は、まわりにもたくさんいると思います。しかし問題は、それがいきすぎてしまった場合に、疲れ果てているにも関わらず本人が長い休みを必要だと思っていないという状態になることです。そしていつの間にか、燃え尽きてしまいます。手遅れになる前に、このような第三者的ツールを持ち出して「ちょっと長めの休みをとりましょうか」と話し合ってみましょう。

つい先日も、張り切ってバリバリやっているメンバーが「実は...数えたら300点以上ありまして...」と教えてくれて、ライフイベントがものすごく集中していたことがわかった、ということがありました。そこですぐ、「今から計画して、年末あたりに2週間以上の休みをとれないかしら」と相談したところです。

また、こんなこともありました。ある人と話していたときに、結果的にその人のストレス度は心配するほどの点数じゃなかったことがわかったんですが、その過程で、いろんなライフイベントや、その結果として生じる心身の不調について、いかにも自然に話すことができたんですね。一対一の状況で「元気ですか?」って聞かれたら少々具合が悪くても「元気です」と答えてしまうのが普通の心理だと思いますが、外部の視点を持ち込むフレームワークを前に語り合うと、「夫婦の別居は67点である」とか「毎朝4時とか5時まで眠りにつけない」といった、誰かによって評価を加えられる前の事実を元にした会話ができます。話しづらいとされていることも、自然に話すことができるというわけです。

職場のなかに、心の健康を理由に休みを言い出すことにためらいを感じさせてしまう空気があるとしたら、役職者や年長者がそれを率先して解消すべきです。ライフイベントやストレス度のようなフレームワークを利用して、「熱があるので休みます」と同じように「メンタルヘルスで休みます」と言い出しやすい空気ができていくといいですね。

反省

今回もまた自分のことを棚に上げて偉そうなことを書いてしまった……という反省はものすごくあります。精進したいと思います。

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