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宿題・課題・ジャンプ台 - マイクロマネジメントが必要なとき、そうでないとき

思いついてから6年くらいになるフレームワークですが、新しい仕事に出会う度、新しい人と出会う度に使える考え方なので、継続して使い続けています。具体的には「マイクロマネジメントが必要なときと、そうでないとき」を見分けるのに役立ちます。マイクロマネジメントはまるで悪い事のように言われることがありますが、本当にそうなんでしょうか? また、絶対にマイクロマネジメントをしちゃいけないときがあるとしたら、それはいつなんでしょうか? それを判断するのに役立つフレームワークです。

PoorとAchieveとOver Achieve

はじめに、ある仕事に対するスキルを、PoorとAchieveとOver Achieveの3つに分類します。それぞれの定義はこんな感じです。

Poor: 仕事に取り組むためのスキルが不足している状態
Achieve: 仕事に取り組むためのスキルがあり、目標に向かって自走できる状態
Over Achieve: 仕事に取り組むためのスキルがあり、目標に向かって自走でき、それを達成しても自らさらに高い目標を設定していける状態

注意してほしいのは、これはスキルに対する評価であって、人そのものに対する評価ではない、という点です。ある仕事に対するスキルがPoorであっても、その人の全能力・全人格がPoorだという意味ではありません。

その後、この3つの分類について、「与えるもの」と「すべき支援」を以下のようにあてはめます。

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Poorに与えるものは「宿題」です。宿題は、小学生のときの国語や算数のプリントのようなものです。毎日出されるもので、毎日採点される。そこでは、点数を取ることよりも、文字のとめ・はね・はらいや式の書き方といった細かいお作法がチェックされます。宿題に対応してすべき支援は、このような手取り足取り高頻度のフィードバックです。つまり、Poorにはマイクロマネジメントこそが必要です。

Achieveに与えるものは「課題」です。課題に取り組むにあたっては、その手法は問われません。数値や期限といった目標をいかにクリアするか、その結果こそが大事だからです。課題に対応してすべき支援は、目標を適切な難易度にするためのサポートです。簡単すぎても、難しすぎてもいけません。それを見極めるには、第三者の視点が必要です。その後、数値や期限によるKPIマネジメントを行います。その際、仕事の手法に口や手を出してはいけません。仕事に取り組むためのスキルがあるということがAchiveの定義ですので、そんなことをする必要はありません。スキルを認めているのに口出し手出しするのは、単なるエゴでありすぐやめるべきです。つまり、Achieveにはマイクロマネジメントは必要ありません。

Over Achieveに与えるものは「ジャンプ台」です。この比喩が意味するのは、より大きな権限や裁量、新しい仕事や技術への挑戦などです。スキルもあって、目標も達成できるのであれば、同じことを繰り返すうちに飽きがきてしまいます。そうならないためにすべき支援というのは、手法や目標に関与することではなく、先回りして次の活躍の機会を準備することです。最低限の支援。そしてプロモートが重要です。マイクロマネジメントが必要ないのは言うまでもありません。

具体的な利用方法

このフレームワークを使い込むと、いくつかのことに気づきます。

Poorの宿題に対して高頻度のフィードバックを維持するのは、結構大変。自ずと、ひとりの人(マネージャーであったり、業務上の指導者であったり)が抱えられるPoorの数には限りがある。上限を超えるとメンバーのパフォーマンスも成長も鈍化するので、注意が必要。

Achieveの課題をマネジメントするのは、時間的には楽。ただし、マネージャーの視点が低かったり、戦略から逆算したオペレーションの視点が欠如していると、適切な難易度の目標設定ができず、メンバーおよびチームの成果があがらない。そこが難しく、かつ責任重大。

Over Achieveの注意点は、それが到達点ではないということです。ジャンプ台としてより大きな権限や裁量を与えたり、新しい仕事や技術への挑戦をすると、その仕事に対するスキルはまたPoorに戻るわけですが、それこそが大事なポイントです。Over Achieveというのはいうなればコンフォートゾーンで、居心地はよくても成長のない場所です。それを再びストレッチゾーンに押し出してやりましょう。

関連資料

「宿題・課題・ジャンプ台」というのはオリジナルのフレームワークなのですが、この手のものとして有名なものに「Situational Leadership」(以下、SL)があります。主な違いは、3段階ではなく4段階に分類するところ、および、マネジメントする側とされる側が同じフレームワークを使って認識のすりあわせをするところにあります。SLのほうがより緻密ですので、より詳しい応用方法について学べると思います。参考まで。


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