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流言のメディア史、日本の偽書、古事記、暗号通貨VS国家、ニムロッド、教養としてのビール、千と千尋の神隠し

2019年第13週に読んだもの、見たもの、考えたこと。

流言のメディア史

名著。今年の私的トップ10候補。まず冒頭、第一章の「あの有名な、よく例に引かれる、ラジオ放送による火星人襲来のパニック事件は存在しない。それからしてフェイクニュースである」という話から目うろこポロリ。そして最終章、ナチスドイツによるマスメディアを使ったプロパガンダの威力を過大評価してしまう心理には、当時ナチスドイツにその欲望を投影した大衆の後ろめたさがあると指摘するところまで、読みどころが詰まっている。業界人必読(ちなみに、隣の席に座っている瀬尾さんもイチオシしてる)。

日本の偽書

『上記』『竹内文献』『東日流外三郡誌』『秀真伝』『先代旧事本紀』などの偽書についての本であり、本書のねらいは、それがどのような心理によって成立し、求められ、生きながらえているかを明らかにしようという点。
フェイクヒストリーと民俗学・民族学の接近は、ナチスドイツでも、日本でも観察でき、柳田國男およびその周辺、そして現代まで続くチルドレンのなかに確実に生きている(拒否するせよ、取り込むにせよ)。東北生まれの自分のなかには、クールに論じればこの本のようになるだろうという気持ちと、東日流外三郡誌のエッセンスが今も生きている世界(というのが本当にあるんです)と共振する感性と、その両方でゆれている。

古事記(訳・池澤夏樹)

池澤夏樹による現代語訳。冒頭の太安万侶に対するメッセージと、巻末の解題と解説から感じるのは、これが非常に丁寧な配慮によって生まれた本なのだなということ。天皇家との関わり、大国主命に代表される滅ぼされた側への眼差し、戦争に利用された負のイメージ、偽書説、などなど。それらと適切な距離を見定め、本文そのものを未来へつながとうとしていく試み。その志の高さと、配慮のゆき届き方と、実際に達成し得ていることのレベルの高さに、「ははー」とひれふすような気持ちになった。

暗号通貨VS.国家

この手の本は何冊も読んだからもういいやと思っていたが、評判が良いので手に取ってみたらなるほど良書だった。わかりやすく、ちょうどよくロマンティックで、ちょうどよく反抗的。「いまさら人に聞けない」と思っている人にはこれをおすすめしよう。

ニムロッド

読んだ人がいたら、口頭で感想を交換しましょう。

教養としてのビール

遠野醸造の袴田さんのおすすめで手に取った本。酒にウンチクをかますような大人になりたくないという気持ちがあってこの手の本は遠ざけてきたが、やはりというか、読めばやっぱりおもしろい。

ジブリの教科書12 千と千尋の神隠し

大塚英志の解題がない! なんてことだ。

今週もがんばろう(新元号の発表が楽しみ)。

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