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ムジⅦの映画日記『そばかす』


2023年映画初めは本作でした。シネ・リーブル梅田シアター2にて平日昼間に鑑賞。まだ年末年始休暇の方もいたのか人の入りも良かった。

映画「そばかす」とは


スタッフ・キャスト

(not) HEROINE moviesの3作目として制作された作品。
『ドライブ・マイ・カー』で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞し、『天気の子』の劇中歌歌唱でも知られる三浦透子さんが初単独主演をつとめ、また主題歌も担当している。脚本は今泉力哉監督作の『his』や鈴木拡樹さん主演の『カフカの東京絶望日記』でも脚本を担当してきたアサダアツシ氏。

ストーリー

「恋愛をしたことがない、そういう感情もない。 だけど楽しく生きていける―」 それが私だと思っていた。
私・蘇畑佳純(そばた・かすみ)、30歳。
チェリストになる夢を諦めて実家にもどってはや数年。
コールセンターで働きながら単調な毎日を過ごしている。
妹は結婚して妊娠中。 救急救命士の父は鬱気味で休職中。
バツ3の祖母は思ったことをなんでも口にして妹と口喧嘩が絶えない。
そして母は、私に恋人がいないことを嘆き、
勝手にお見合いをセッティングする。
私は恋愛したいと言う気持ちが湧かない。
だからって寂しくないし、ひとりでも十分幸せだ。
でも、周りはそれを信じてくれない。
恋する気持ちは知らないけど、ひとりぼっちじゃない。
大変なこともあるけれど、きっと、ずっと、大丈夫。
進め、自分。

映画『そばかす』公式サイトより引用

短評

アロマンティック・アセクシャル

作中ではアロマンティック・アセクシャルという言葉は一度も使われない。「私はアセクだ」と劇中で言わせてしまうのは簡単だが(NHKドラマ「恋せぬふたり」のように単語を全面に出して描く意義もあるとは思う)、本作ではあくまで主人公・佳純自身の個の悩みとして描くことで、逆に普遍的な意味を発する作品として着地している。
「恋せぬふたり」で上記のように単語を押し出したことでそこそこ話題にはなっていて世間的な認知度は少しずつ上がっていると思うが、まだまだ無理解もあるしそういうわかってもらえないシーンは観ていて辛さはある。。。
アセク・ノンセクという言葉を使わずにそれをほのめかした作品といえば『大豆田とわ子と三人の元夫』のかごめが思い浮かぶ。

「恋愛が邪魔。女と男の関係が面倒くさいの。あたしの人生にはいらないの。そういう考えがね、寂しいことは知ってるよ。実際、たまに寂しい。でもやっぱり、ただただそれがあたしなんだよ」

ドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』(脚本:坂元裕二)かごめの台詞より

長回し

劇団で舞台の演出をしている方が監督(玉田真也氏・玉田企画主宰)なのでワンシーン・ワンカットが多用され、長回し好きな私としては好みポイントでした。長回しに耐える俳優・女優への演出家としての信頼が見えるのが好き。この撮り方だと人物に寄り過ぎないので、例えば喫茶店で話し込んでいても背景にいる人の動きも視界に入って、色んな暮らしの中で主人公が生活していることを感じ取ることができる。

好きなシーンや台詞など

  • こういう作品の主人公ってコミュニケーションも苦手って描き方がされがちだけど、三浦透子さん演じる佳純はそうじゃなくて職場や家族の中でも浜辺で海を見つめているときも煙草を吸ってるときもいつもどっしりしてる。その質感。煙草吸ってるだけで絵になる、『映画大好きポンポさん』のポンポさんの台詞じゃないけど「ヒロインを美しく撮れた映画はそれだけで勝ちだよね。

  • 「わかってくれない人からは逃げていい」

  • 「お姉ちゃんはいいよね 関係ないみたいな顔して生きてて」
     関係ないみたいな顔して生きてるわけじゃないのよ。

  • 友人への祝辞をチェロの演奏で代えて贈るシーン
     全部言葉にしなくてもいいのだよね。

主題歌

キャスト紹介でも書いたとおり主演の三浦透子さんが主題歌も担当している。『天気の子』でもすでにじゅうぶん表現力は発揮していたが今作もヒロインの心情に寄り添った前向きになれる歌唱を披露してくれている。最近羊文学をちょいちょい聴くので、この主題歌羊文学ぽいメロディに聴こえるのはそのせいかなーと思ってたらほんとに塩塚モエカさんからの提供曲でびっくりした。アンニュイなんだけど希望がある感じがぴったりでした。

羊文学側でセルフカバーしているバージョンもあるのでオススメ。

ラストシーン

「同じような人がいて、どっかで生きてるんならそれでいいや」という台詞がラストシーンにある。現実世界でわかり合える人と出会うのは容易いことではない、かなしいけれど。だけど映画でならどこかにいるんだと、生きているんだと感じることができる。映画の醍醐味も込められたような台詞でした。

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