この間、#京都みなみ会館 に#山本起也 監督とニッポン画家の #山本太郎 さんのトークショー付きの映画鑑賞に。

やはり3回目は3回目で別の発見があって興味深かった。

冒頭で野良猫が2回映るんですけど(本当にチラッと)、それがこの島のシャッター商店街の寂しさの中にある、野良猫と共存してる優しい｢のさり｣の風土のような感じが出ていて凄く良かったです。

(後で監督に聞いたら、実際にここの島は野良猫が多いらしく、カメラに写るようにしたと仰ってました)

あと私は #藤原季節 さん演じる若者の前髪に注目して観ていました。

初めはほとんど表情が分からないんですね。

都会から逃れるかのように天草にオレオレ詐欺をしに来るんですけど、彼は目元を前髪で覆ってるんです。

この前髪で顔の半分くらい覆うのって、ある意味｢仮面｣なんじゃないかなと。

一種の防衛機制じゃないかなぁ？

物語が進んでいくに従って、彼の目元は見えるようになって行き、表情が柔らかくなっていくのが見て取れます。

(後で監督に聞いたら、藤原さんとメイクさんで考えて前髪をこうしていったんだろうと)

少しづつ本来の仮面を被らないでいい、あるがままの本当の自分自身を晒せるようになったのではないですかね。

今回も思ったんですが、物語全般を通して、藤原さんの演技、表情がすごくいいです。

島に着いて疲れた表情。

ばあちゃん ( #原知佐子 さん )の作る料理に目を輝かせる表情。

可愛い清ら( #杉原亜美 さん)に優しくされてときめいている表情。

LINE交換を求められてスマートフォンが紛失しているのに気づいたのに、嬉しそうな表情(詐欺の元締めからの連絡に出なくてもいい嬉しさ)

最後、マリア像をどこか吹っ切れたように見上げる表情。

オレオレ詐欺をしているけれど、この若者は中身が本当に優しいんだな、というのが物語が進むにつれて分かって行く。

それが彼の表情の微妙な変化から汲み取れます。

ばあちゃんに自分が作った焼いと(お灸)をしてあげたり、肩を揉んであげたり。亡くなった孫の洋服を丁寧にたたんでいたり。

中から自然に出てくる人間性というか。
それが感じられました。

こういう細かい藤原さんの演技や監督の演出もとても良かったです。

それと、清らに
｢あなたは本当はどこから来たの｣
と言われた後でばあちゃんの元から去る場面。

ばあちゃんは若者に
｢あんた。元気でね｣
と少し心配そうに声をかけるんですけど、若者は振り返ってばあちゃんを見るけども何も言わずに去ります。

ここ、何も言わずに去るのが非常にいいんです！

もし、言葉で別れの言葉なり何なりを言っていたら、本当にばあちゃんとサヨウナラしてしまうかも知れない。

だから無言で去って行ったのかも。

その時の、悲しそうでも、怒っている訳でもない、無表情にも近い藤原さんの表情が何とも良くてですね。

山本監督はほとんど演技指導しないと仰ってましたが、役者さん達も凄いですが、このような演技を引き出した監督も凄いと思います。

ブルースハープの女の子の #小倉綾乃 さんの、イルカウォッチングの受付の時の演技もすごく良かったです。

これも、監督の演技指導でそのようになったのではないらしいです。小倉さんが自分で考えたものらしいです。

イルカを嘘でも客に可愛いと言えない。ヘラヘラ笑えない。
彼女の、天草という土地に住み、家業の手伝いから逃れられない、というような複雑な表情がよく出ていました。

彼女が最後にばあちゃんの楽器店にブルースハープの注文をしに来るところで終わるのも良かったです。

この天草の地でイルカ観光の手伝いとブルースハープをやっている自分は、一体なにがしたいんだろう、と彼女はずっと思っていたのではないのかな。

映画を観ている皆さん、自分自身も思い当たる事がある人が大半なのでは。

自分は何者なのだろう、とか。
一体何がしたいんだろう。とか。
そんな自分を投影して、最後に少し報われて希望があるようで。
そんな終わり方で、自分も少し救われた気持ちになれました。

#柄本明 さんの清らの発言に対しての⁡
⁡｢ええ。生きとります！｣
のシーンも忘れられないですね。

人間も生きているし、カカシもみんなの心の中で生きているんですよね。

若者が居ないと分かった後、突然全ての電気が消え、清らが異世界に行ったようなあのシーン。

あのオレオレ詐欺の若者はカカシだったのか？
過ごした日々は｢まやかし｣だったのか？
そんな風に思いを巡らしてしまう余韻のあるシーン。

とても良かったなあ。

良い作品って、何度も観たくなるんですけどこの映画はそういう作品だと思います。

トークショーの後、山本監督やニッポン画家の山本太郎さん達と数人で映画の深い話が聞けて、質問も出来て答えていただいて、本当に嬉しかった。

ありがとうございました✨

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