加藤の本気の裾上げ・加藤の裾上げ論

今回は僕がスラックスの裾上げをして感じたことや、裾上げに対する思いを書いていきます。「加藤の本気の裾上げ」「加藤の裾上げ論」の二本立てでまとめました。好きな方から読んでください。

◼️加藤の本気の裾上げ
古着のスーツを買いました。ジャケットのサイズやズボンのウエストサイズは合っていたのですが、スラックスの丈が長かったので裾上げしました、本気で。
まあ本気といっても裾上げ作業そのものはおしゃれ工房さんというお直しのお店さんに丸投げしたので、縫ったり切ったりを本気でしたわけではありません。そこに関して僕はノータッチです。では何が本気なの?では何が本気なの?と、30代前半のホステスさん二人組が聞いてきました。なので、はいお直しに出す前にどれだけ丈を詰めるか、鏡の前で捲り上げた裾をクリップで留めながら理想の丈になるように調整するのを本気でやりました。それを本気でやりました。と答えます。つまりここまでまとめると、それを本気でやりました。
本気の裾上げは2日に及びました。1日目は、時間制限なしを掲げてねちっこく微調整に微調整を重ね、3.5センチ上がるか4センチ上がるかのどっちか、というとりあえずの結論を出しました。その夜は達成感と充実感でぐっすりと眠り、明くる日。皆さんも買い物などで経験があると思うのですが、時間を空けたことによってより冷静に、客観性の増した眼差しで昨日の結論を吟味することができました。僕の出した結論は4センチ。3.5センチにしておけば後から4センチに上げることができます。しかし4センチにしてしまうと3.5センチに戻ることはできません。その不可逆性に内心怯えながらも「俺の理想は4センチなんだ」と何度も自分に言い聞かせ、結果的には紙に筆ペンで楷書で書くことによって自分自身を洗脳しました。そしておしゃれ工房さんに向かうことが出来ました。なんて話もありました。そんな話も生まれながら、ドキドキ待つこと一週間。再びおしゃれ工房さんを訪ねると、僕のスラックスは、丈はそのままに、頼んでもいないハードなダメージ加工と徹底的なブリーチ加工が施され退廃的なムード漂うダーティな一本へと変貌を遂げ、その攻めの姿勢丸出しのスラックスを、冷え切った切長の目と薄い唇に冷笑的な笑みを浮かべた、やけに顔の整った若い女に無言で床に叩きつけられた、というのは嘘で僕の理想の丈に仕上がっていました。僕の2日間に及ぶ本気の裾上げは見事成功を収めたんです。
◼️加藤の裾上げ論
ここまで、僕が本気で裾上げに挑んだ、というスポ根的な話をしてきましたが、ここからはどんな丈が僕の理想だったのか、そしてなぜその丈が理想なのかを画像を用いて語っていきたいと思います。まずは僕の本気の裾を見てください。


これです。紺なので少し見にくいかも知れませんが、この地面にギリギリ付かない丈。これが僕の理想でした。ではなぜこの丈が理想なのか。
大まかな結論から言うと、このスラックスのシルエット的にこの丈が1番ベターだからです。というのも、僕が購入した60年代後半-70年代のスーツのスラックスはフレアシルエットで、当時の着こなしを見ると、みんなこのくらいの丈か、地面についちゃってる丈にしています。ヒール付きの靴と合わせる都合か、長めの丈というのが定番的な印象です。

こんな感じです。僕は地面に着く丈で引きずっちゃって、裾がボロボロになるのは嫌なのですが、当時の地面に着く丈勢の方達はそこらへんをどう考えていたのか普通に疑問です。だって裾がボロボロになるのは嫌ですよね。僕的にはこういうことになるんじゃないかと思うんですが…

ブルックリンに住むペンキ屋のホセはハンガーにかけた純白のスーツを目の前にニヤニヤと笑い、もう1時間以上もそこに立っていた。次の土曜日つまり明日のディスコパーティのために新調したスーツだ。スラックスの丈は、もちろん地面にべったりと着くロング丈。いままで冴えない普段着で遊びに行っていたが、なんとかお金を貯めこの純白のスーツを購入したのだ。これで女にモテるぞ…

真新しいスーツに袖を通し自信に満ちた表情でディスコに向かうホセ。会場に着くと、そこはいつものように熱気に包まれていた。鳴り響く音楽。ポマードで黒光りする男たちのリーゼント。そしてなんといっても官能を刺激する煌びやかな女たち。
純白のスーツと熱気に包まれたホセは鳴り響く音楽と胸の鼓動がピッタリとシンクロするのを感じ、まるで自分がこのディスコの主人公であるような気分になった。「The world is mine…(俺がこの世界のプレジデントだよ…)」恍惚とした表情でそう呟いたホセは、瞬間、そこだけピンスポットがあったように光り輝く女を発見した。真紅のドレスに身を包み情熱的にしかしどこが物憂げに踊るその女。「おれは君と会うためにこのスーツを買ったんだね…」ホセは熱くなった目頭を押さえなおのこと恍惚とした表情で、そうするのが当然というような迷いのない足取りで彼女の元へ踏み出した、とその瞬間。純白であるはずのスラックスの裾が黒とも茶とも言えないあらゆる色に汚れているのが視界に飛び込んできた。地面を引きずり取り返しのつかないほど汚れたズボンの裾。飛び散った酒なのか膝の辺りにもドス黒い赤のシミが広がっている。ホセは驚愕した。さっきの恍惚は何だったんだと思うような青ざめた表情を浮かべこれ以上ないほど泥臭い動きでスラックスの裾を引き上げた。すると、俺はこれ以上何をしたらいいの?とでもいうように顔をぐしゃっとひしゃげ、その場で痙攣。さっきとは違う意味で目頭を熱くさせ、瞬く間に号泣。目と鼻から液体を垂れ流しながらその場に崩れ落ち、帰った。


ということに。
まあとにかく僕は地面についちゃうと引きずっちゃって裾がボロボロになっちゃうのは嫌だけど、でもやっぱり出来るだけ長めを目指したいという欲張り精神で、ほんとに地面ギリッギリの丈をスポ根的に目指したわけです。それがこの丈にした理由です。話は終わったのですが最後にこのシルエットのスラックスで、丈が短いバージョンと地面にダルダルに溜まるくらい長い丈のバージョンを見て終わりにしようと思います。

短いバージョン。これはこれでいいですね。スッキリしていて軽妙な感じ。膝下しか見えていないですが、顔全体の印象はシャープでありながらも春の陽気のような人懐っこい笑顔を浮かべ、チタン製の金縁眼鏡を嫌味なくかけていることがわかります。

ダルダルの丈。こちらもいいですね。ルーズでアンニュイな雰囲気。女好きでDJをやっています。好きな映画はバグダッド・カフェで、自身のInstagramに、擦り剥いて血の滲んだ膝の写真をアングル違いで2枚🩸🩸👿という絵文字と共に投稿しています。顔はかっこいいです。

こちらはおさらいとして地面ギリギリの丈。青白い顔色で吊り上がった目、口元には歪んだ笑みを浮かべ、自己愛の結晶でしょうか?毛を一本一本分けたのか?というほどに徹底した七三分け。全体のスタイルに乱れが無さすぎて、ねちっこく細かい性格が現れ…
これは僕でした。ということでお別れです。ありがとうございました。
◼️おまけの下ネタ短歌三首

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