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映画「クラユカバ」の感想を語る

大正時代風の少しだけSFチックな日本で、うだつの上がらない探偵である壮太郎が「集団失踪」した人々を探す依頼を受け地下世界を冒険する話である。

恋愛や派手なアクション、とんでもない伏線のどんでん返しはなく地味めな作品ではあるが60分という中で1つの冒険活劇アニメ映画として成立していた。

(4月30日に2回目を見たので、それを踏まえて追記します)

2回目を見た時に撮影

映像表現について

だけでは抽象的すぎるので、特に良かった点を一点だけ挙げよう。「茶色の紙人形風の人物がしゃべりながら過去の話をする場面」という表現は良かった。茶色の影絵で荘太郎の過去感が表現されてシナリオに深みが出たのではないか。

他にも良かった点
◎ウノハナが虫(カマキリ?)のようにチョコマカと走り回りハラハラした。

(ここから2回目)
荘太郎が作中のラスボス(黒幕?には「クラユカバ」という台詞を言い残されて船で逃げられた)「活動大写真」により幻を見せられた時に目を覚ますきっかけは、幼いタンネらしき女の子が荘太郎の手を繋いだことである。このシーンで影絵風お芝居が終わり、普通のアニメ描写に戻っており、荘太郎が現実に戻ったことが分かる。

同時上映の対となるアニメ「クラメルガカリ」でもガカリが落ちそうになるユウヤを崖から引き上げようと手を伸ばして助ける場面があるが、塚原作品において「手を繋ぐ」という表現は重要なのでは?という印象である。次回作でも「手を繋ぐ」という表現に着目したい。

シナリオ

シナリオは60分で良くも悪くも纏めたなという印象。悪くはないし、一回で分かりきらなかったのでもう一度鑑賞したいとは思う。しかし、初見前にあまり「面白くないのでは?」と疑念を抱いた知人に勧める作品かというと“NO”と言わざるを得ない。


終盤の活動大写真(作中の事実上のラスボス)により荘太郎が幻を見せられ、影絵の父に「さあ、家に帰ろう」と手を引かれそうになるも、そこからどんでん返しで目が覚め活動大写真を銃で炎上させ破壊するシーンは、彼の過去との決別をあらわしているかのようで良かった。




登場人物(2回目を踏まえて)

タンネについて


メイン登場人物のタンネは、一通り冒険が終わり荘太郎から「荘太郎」と呼んでほしいと言われる場面があった。タンネが幻の中でそこから太郎に時計のゼンマイを渡すシーンがあるが‥因果関係が分からなかった。

(ここから2回目の感想)
タンネは裏がありそうな人物であると考え、2回目を見たのだが、結局良く分からないままであった。活発に喋るようで実は何も分からなき、この作品を象徴するような(クラガリのような)人物だろう。

荘太郎について 


最初は言い訳ばかりの「昼行燈」(稲荷坂からの話に対して「与太話」と繰り返していたのが分かりやすい)だったのは否めない。

冒険を通じて過去の件(親父の失踪)にも向き合い胆力をみせて事件の被害者を奪還し、主人公らしく探偵らしくなったのではないだろうか。

色々説明不足な点や謎(タンネとかサキの過去とか)は残されたが、荘太郎の成長に関してはきちんと本編中で書き切れたのは評価できる。

他の登場人物について

◎サキ 天涯孤独なのを反映して、口調が荒い印象。後半は拐われて疲弊していたのか、大人しかった。

◎トメオミ 見た目通り、装甲列車を防衛する武人という印象。


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