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すごい本に出合ってしまいました。

ビジネス関係の本で今までにすごいと思った本の一冊目は、「イノベーションのジレンマ」(クレイトン・クリステンセン著)。破壊的イノベーションという概念を世に知らしめた有名な本ですが、下手な小説よりも面白い話に引き込まれ、私のイノベーションに対する考え方をガラッと変えてくれた本でした。

そして、二冊目の本に出合ってしまいました。 最近私が勝手に師匠と思っている、武内信雄さんのおすすめの本、との事で手に取った「マイノリティデザイン」 なんて本に出会ってしまったんだろう。そう思わずにいられませんでした。

【著者、澤田智洋氏】

最近いろんなメディアで「ゆるスポーツ」という言葉を聞くことが多く、ラジオでもお話しされていたことを聞いたことがあるのですが、著者の澤田さんはこのゆるスポーツというコンセプトを提案し、協会を立ち上げられた方です。そしてこのゆるスポーツの根本にに、この本で語られる「マイノリティデザイン」のコンセプトがあります。

【広告の限界?】

コピーライターとして広告業界で活躍をされていた澤田さんが、社会的少数派(マイノリティ)という人たち目を向けることになったのは、息子さんが目に障害を持って生まれたことがきっかけです。「自分が作る広告を息子は見ることができない」、そこから自分がやっているコピーライターの仕事に疑問を持ち、また自分の息子さんの人生を案じ、途方に暮れた澤田さんは、障害を持つ方に話を聞くことを始めます。そして、これが今まで自分が持っていた概念をリセットする学び直し(unlearn)の機会となったといいます。

彼らの暮らしや生き方そのものが、発見に満ちている。困難の乗り越え方、自分との付き合い方、人生の捉え方、幸せや豊かさの定義、それぞれの考え方が、本当に勉強になりました。どうしてこれまで関わってこなかったんだろう?悔しさすらこみあげてきたほど、目の前には「新大陸」が無限に広がっていました。

マイノリティデザインより引用


私は、これがマイノリティデザインというコンセプトが生まれるきっかけを端的に表す言葉だと感じました。そして、私自身が、この本を読んでそういう感覚に触れられたことに感動を覚えずにいられませんでした。(この感覚は、イノベーションのジレンマの時と同じ感覚でした。)

【マイノリティデザインの可能性】

マイノリティを起点に世界をよりよくする。そんな澤田さんの仕事は、ある一人の社会的マイノリティの方に目を向け、その人のために自分の得意分野を使って、持続可能なアイディアを実現する、というスタイルに変わったといいます。
そしてできたのが、ブラインドサッカーの世界選手権2014のポスターに使われたコピー「見えない、そんだけ。」です。震えるくらいにかっこいい。これは息子さんへの言葉でもあるとのことでした。

我々の化粧品の業界でも、あるコンセプトを考える際に、ペルソナ(仮想の人物像)を設定し、そこからイメージを膨らませていきます。マーケティングの手法としては一般的な方法で、澤田さんが書かれているコピーライターの場合も同じでとのことなのですが、まったく異なるこのアプローチから生まれるコンセプトの強さ、そして温かさ、心が震えました。

【ゆるスポーツの誕生】

今澤田さんが始められた「ゆるスポーツ」という概念は、ご自身が運動が苦手ないわゆる”運動音痴”に起因するといわれています。ここでの発想の転換は、「運動音痴」を「スポーツ弱者」に再定義し、マイノリティデザインの観点でスポーツをデザインする、ということ。そうすることで、スポーツ弱者が楽しめるスポーツが生まれるのです。
以下が世界ゆるスポーツ協会のWEBサイトになりますが、何が素晴らしいって、本当に楽しそうな皆さんの顔。なんて素敵なんだろう、と思わずにいられません。

【イノベーションへのヒント】

この本の後半は、そんな澤田さんの経験をもとに、マイノリティデザインを実践するための方法論が語られています。「自分の得意なことで、自分の大切な人を幸せにするための、持続可能なアイディアを実現するための方法論」とも言い換えることができるかと思いますが、これは名前から想像するようなマイノリティの人のためのイノベーションではないと感じました。
本の中でユナイテッドアローズの例として紹介されているように、「人の弱さ」に目を向けることで実現できる、優しく温かいイノベーションを実現するための方法だと感じています。

改めて、本当に良い本に出合えたと思いますし、多くの人に読んでもらいたい、そんな本です。


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