TRIP

夜の高円寺の道を散歩していたらSPICY SOUP CURRY BAR TRIPの看板が光っていた。

高円寺のスープカレー屋TRIPはパンクな雰囲気の店内で野菜の美味しいスープカレーのお店で煙草も吸えて僕はこの店の雰囲気もカレーも大好きだ。
まだ抜群のアルバイト生活でテレビにも出てない時に0時までやってるTRIPにライブ終わり大きな荷物持ってよく行っていた。

一度も喋った事無かったマスターが僕に『いつも遅い時間に来るね』と話しかけてくれて僕は芸人をやっていてライブ終えてからだと大体これぐらいの時間なんですと一言会話をした。
それからABCお笑いグランプリの決勝やキングオブコントの準決勝に初めて行けて少しテレビにも呼んでもらって、年末のおもしろ荘に出させてもらい店に行くとマスターが『テレビ見たよ』と言ってくれてサービスで玉子焼きを出してくれた。
クリスマスに同居していた八巻くんと『クリスマスだからチキン食べるべ』と言ってTRIPの大きなチキンレッグの入ったスープカレーを食べに行った。

コロナ禍になりほとんどの飲食店が店を閉めた。
コロナが少し落ち着いて店が営業再開しだしたけどTRIPは営業再開しなかった。
もしかしたらやってるかもと何度も店の前に行ったけど灯りはつかず暗いまま。
どうしてしまったのだろう。
一度マスターが店の中で本を読んでいるのを発見して扉を開けて営業しないんですか?と聞こうかと思ったけど気味悪すぎると思いやめた。
キングオブコントの決勝にいかせてもらって仕事も増えてアルバイトしないで飯を食えるようになった。
たまにTRIPの前を通った時に何か看板が出てると思い近寄ると隣の2階の妖怪のお店で崩れ落ちた。
なにを期待してるんだ。

ソファーでつい寝てしまい気づいたら22時過ぎで時間がもったいない何してるんだ!といつも通りの自己嫌悪を起こし、とりあえず歩こうと夜の高円寺の散歩をしているとSPICY SOUP CURRY BAR TRIPの看板が光っていた。
扉にはOPENの文字。
嘘だろ。
店の前を何度か往復してOPENの文字を何度も読んだ。
ガラスの扉を開くと鈴が鳴り奥からマスターが出てきて僕を見るなり笑顔で『元気してた?』と言った。
マスターは僕の事を覚えていてくれて見ててくれたらしい。
ドア横のテーブルにどうぞと言ってくれた。
あの頃夜遅く大荷物で僕が座っていた席はあの日のままだった。
灰皿と水のボトルにカレーで汗をかいた時用のティッシュ色味のある壁。
メニューはドリンクとのセット料金のシステムになっていた。
久しぶりの野菜たっぷりで優しいスープカレー。
ゆっくり丁寧に作られてめちゃくちゃ美味い。
辛めに注文して汗かきながら食べる。



カレーを食べ終えてそのまま煙草一服の昔なら当たり前だった黄金ルーティンをかましているとマスターが北海道のチョコをサービスで出してくれた。
店内を補修したりして今年から営業再開したそうでマスターが店再開したと僕に伝えたくてXでDMしようかと思ってたらしい。
マスターが優しい顔で
『1番来て欲しい人が来てくれた。』と言った。
カレーで汗かいて水分減ってなかったら泣きそうだった。
また来ますと伝えてアルバイトじゃなく
お笑いの仕事でもらったお金でお会計をした。

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