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常陽銀行

常陽銀行の口座を解約してきたの!と
すっきりした顔で
当時24歳の先輩は言った。
なんて判断の速い人だろう、と感心した。
確かに卒業したら学費を納めることもなく、
茨城で就職したわけでもなく。
地元に帰れば使うこともないであろう口座。

しかし私は
大学から雀の涙の給与を貰っているし、退職してからも、もしかしたらまた使うかもしれないと解約することもなく…というより忘れていて…気付けば口座を作ってから19年も経っていた。

預けていても管理手数料やら数百円引かれたりする、世知辛いこのご時世。常陽銀行はそうじゃないようだったけど(たぶんね。未確認)、休眠預金等活用法も施行されたし、まあ使ってないものは整理しようと思い立ち、平日昼間に常陽銀行上野支店へ。

上野駅入谷口からほど近い、一等地に見覚えのあるコジマ電気バリの赤い太陽と藍色のラインの看板が見える。
そこは東京の茨城。
モニターに映し出される筑波山。
常陽は地元企業のSDGsを応援します!のテロップと共に次々に映し出される小美玉市やつくば市のお店。
ラックにはしもだて美術館や茨城ふるさと納税のチラシ。
窓口には出てこないをぢさむの、北関東訛りが奥から響いてくる。ああ、茨城。ビバ茨城。

私はつくばが大好きで、土曜の朝に田植えしたての田んぼの裏道を通ってまるもに行くのが至福の時間だった。
空気の重い芸術学系棟のロビーや、無闇に遠い実習場所、大奥と呼ばれた日本画のアトリエ、全部好きだった。

これにて事務手続きにおいても、なんの用事も茨城には無くなったんだが(笑)。いまや私が学生時代にタイムトリップするより、息子が18歳になる方が時間が短いらしい。
人生とは短いものだとつくづく思うのであった。

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