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日本の五十肩。

 五十肩というのは大変につらい。

 日常的な動作のうち、肩に負荷がかかるものだと肩や腕がビキリと痛みしばらく尾を引く。眠りから目が覚め、気持ちよく腕を伸ばして背伸びをしようものなら肩に激痛を発しベッドの上で悶絶するのだ。

 どうやら、関節間の軟骨が減ることでこのような症状を発するらしい。最も効果的なのはヒエルロン酸とやらを肩に注入する療法ですと医者に言われたが、恐ろしすぎてそんなの無理ですと女学生のように辞退した。
 発症した年代によって四十肩とも呼ばれるそうで、随分といい加減なものだ。しかも放っておけば勝手に治るとのこと。なんといい加減な病か。

 一般的には、症状が治まるまで大体一年程度はかかるそうだ。八月に発したので、あと八か月はこの痛みと付き合わねばならない。大変に気が滅入る。

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 五十肩を経験して思うのは、こういう潤滑油みたいなツイートに「礼をする必要は無い」のみならず「搾取」「奴隷根性」「キモい」等々過剰に噛みつく連中が日本のそこかしこにいるため、潤滑油が減り関節をギシギシゆわしてるのではないかと。

 そも、横断歩道に歩行者がいる場合は停止するのが義務なので、このケースで横断した歩行者が礼をする必要は無いが、美しい瞬間だとは思うし僕がこれに遭遇した時はこちらの心が洗われるようにも感じる。

 それを、善意の押し付けのように、或いは翻って自身の矮小さを暴かれたように感じ、殊更に反発する気持ちもわからないではない。
 正当な権利を行使して何が悪い何に感謝せなばならぬ、自身が歩行者なら決して礼などするものか、むしろ車に唾して渡ってやるわ。
 成程、その軒昂ぶりや良し。

 だが、いくら権利だ義務だと吹き上がれども、轢かれたら死ぬのはお前だ。あの世にまで賠償金は振り込まれない。

 世に瘴気が満ちキチガイが車を走らせている状況をそこかしこで見かける現在、相手がキチガイでなかったことに感謝の意を示すことで、世に満ちる瘴気を少しでも軽減できるなら安いものではないのか。

 フロントガラスの向こうで返された小学生の礼に違和感を覚える僕たちの心の底にこそ、魑魅魍魎が蠢いていることを少しは疑うべきだ。

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