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何となく、少子化。

 さあて、何を書こうか。( ゚ω゚ )

 絶望のトーンで締めくくられた白尊師のエントリーと違い、僕はヒトの知性を信じているので少子化についてもさほどの心配はしていない。なぜなら、世界の中で圧倒的に安全で快適な、つまり世界で最も死から遠い世界であるはずの日本の特殊出生率は1.3という事実があるからだ。

  これは別に楽観視できる数値ではない。しかし1を切っていないだけまだマシとは云える。1を切っている台湾、プエルトリコ、パラオ、韓国、香港の政府機関については、30年後~50年後は一体どうなっていることかと顔面ブルーレイ状態だろう。全世界192ヶ国のうち、特殊出生率が2を下回っている国が111ヶ国もあるのが実情だ。

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 ヒトは、理由を後付けで探す生き物だ。
 言語を発達させ、他の生物種とはけた違いに高度なコミュニケーションを可能にした副作用として僕たちは、仲間にいちいち自分の行動や考えの説明をしなければならない場面にたびたび遭遇するようになった。

 例えばヒトが自身のつがいを探す際に「手取りが少ないから」「性格が悪いから」「将来が不安だから」等々の、相手を選ばない理由は山ほど聞くがそれも仲間に、自分に正当性があると信じさせるための方便であることが多い。否、当人も本当に、そういう理由で自分が相手を選ばなかったと考える。

 また、集積化・複雑化した社会の中では、ヒトはつがいをより厳密に選ぶ必然が生じる。これは簡単な理由で、自身が接する対象が増えるほどつがいを選ぶ条件は多層化するからだ。お相手を二人から選ぶ状況と、100人から選ぶ状況のどちらが、選別条件がよりシビアになるか。さらに、自身が属する階層で要求されるコードもこれに加わるのだから、相手をなかなか選べなくとも不思議ではない。

 何となく、相手を選ばない、結婚しない、子供を作らない。
 いや、もちろん当人らは真剣に考えた末の決断だとは思うが、例えば自殺に至る人の心理にも似て、視野狭窄に陥っているように僕には思われるのだ。

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 しかし、その「何となく」にスポットをあてた進化心理学は、次の人類の福音となる。僕はそう確信している。

 UNIVERSE25という実験では、ネズミたちにとってユートピアであるはずの環境で、爆発的に増加したネズミたちがなぜか異常な行動をとるようになり、やがて繁殖活動を行わなくなって自滅した。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%83%BBB%E3%83%BB%E3%82%AB%E3%83%AB%E3%83%95%E3%83%BC%E3%83%B3

 ネズミたちが繁殖活動を行わなくなった理由として閉鎖空間での個体数の過密化によるストレスが挙げられるが、この実験の重要な点はそこではない。繁殖活動を行わなくなった必然として個体数は減少する、つまり、ある程度まで個体数が減ればまた、ネズミたちはストレスから解放され繁殖活動を再開すると予想できるにも関わらず、彼らは最後の一匹が死ぬまで二度と繁殖しなくなったのだ。

 彼らには、自身の行動を論理的に分析する能力は無い。彼らの遺伝子は最後まで繁殖を望んでいたはずで、しかし彼らは何となく繁殖をしなくなった。もし彼らの思考が読み取れたならきっと、

 「メスが狂暴すぎて近づけない」
 「アルファオスが怖すぎて近づけない」
 「自分の毛づくろいしてる方が安心できる」

 などの、繁殖をしない理由をいろいろ聞くことができただろう。
 そして、彼らは自身が末代になるという意識もなく、ましてや遺伝子の継承などという知識など一切ない。ただ、死ぬまで安寧に生きていければいいや、と思っていただろう。

 ところが僕たちは生物学および進化心理学という学問により、生物の本質は遺伝子の乗り物だという事実を知ってしまった。地球上の生物は遥か古代に、宇宙全体で考えてもたった1回すら起きる筈のない、神ですらさじを投げてひっくり返るレベルのあり得ない奇蹟が起きたことにより発生し、淘汰と進化の末にここまで多種多様に地上にはびこったのだという歴史を知ってしまった。
 そして僕たちの圧倒的大多数は、自分たちがその奇蹟の残滓であることを、生きているだけで勝ち組レベルであることをまだ知らないのだ。

 生命というのは、本当に尊い。
 いつ死ぬかわからない環境ではその尊さは簡単に実感できるだろうがそれとても、自分が死にたくないという段階での尊さに過ぎない。そうではなく、生命というのは冗談抜きで、あり得ない奇蹟の産物であり宇宙レベルで捉えたら、本当に尊い存在なのだ。そして僕たちは淘汰と進化を繰り返し、男女がセックスするだけで新たに生命が誕生するというレベルにまで到達した。
 判るだろうか、宇宙は十数億年という途方もない時間と宇宙全体の質量という莫大な資産を費やして、ようやっと一番最初の、自身をコピーする機能しかない有機物を何とか生み出すことができたというのに僕たちは、ヴァギナにペニスを突っ込んで抽送するだけで次の生命を生み出せるのだ。こんなのあり得るか。神様も地団駄踏んで悔しがるだろう。すごい、すごすぎる。セックスすごい。

 そう、セックスはすごいし、子作りもすごい。子供を育ててまた次の世代を育むこととかマジすごすぎる。
 それを、文明化の前には何となく分かっていた僕たちだが、社会が巨大化し規則が複雑化したことで、その意識よりも先に自分が社会の中で生き抜くことを優先して考えるようになってしまった。それが、少子化の本質だと僕は考えている。

 誰それよりも美人を、誰それよりもリッチな男を。
 そういう対外的な、他人に説明するための理由付けなどは捨て、自身のちんこやまんこに問うのだ。
 こいつは、アリかナシか、と。
 こいつと、神も羨む奇蹟を起こすか否か、と。

 五十路を超えた僕からの、真摯な助言だ。
 若者たちよ、己の遺伝子を継承せよ。

 僕にはもう継承などできないのだ畜生め。(´;ω;`)

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