渡辺綱捕物帖~FGOイベ妄想~

※このnoteの内容は、『Fate/Gramd Order』のイベント『聖杯怪盗天草四郎』内のネタバレを含みます。希望されない方はブラウザバックを推奨します。


不快な振動に目を覚ますと、機内アナウンスが目的地への到着を知らせていた。日本から十数時間。渡辺にとっては公私共に久しぶりの海外である。まだ少し重い頭を起こしながら、ここに来ることになった理由を思い出す。

きっかけは3ヶ月前だった。国内の研究機関から、正倉院に保管されている書物の閲覧申請があり探していた時だ。職員の一人が偽物とすり替えられていることに気づいた。非常に巧妙な偽装がなされ、内容も全く同じだったが、かすかに残る魔力の痕跡に彼女、藤原香子が気づいたのだ。すぐに調査が行われ、同様に保管されている数十点の物品がすり替えられていたことが発覚した。同時に行った不審人物の調査で、一人の人物の名前が上がる。国連教育科学文化機関、すなわちUNESCO職員として正倉院を訪れていた、アジア人の女性だ。折悪しく、渡辺らの部署は大規模な怪異討伐に参加しており、魔術に明るい職員がいなかった。その隙を突かれた形となった。問い合わせにより、その職員は在籍しておらず、当時日本に対してその様な査察を行った記録も存在しない、とのことであった。魔術的な偽装により監視カメラになぜかその姿は映らず、彼女と会った職員もその顔をよく思い出せない、どころか性別すら怪しいというものまで現れる始末であった。

それでも、ようやっとその尻尾を掴むことに成功したのが、ついこの間である。林梓雨。浮かび上がったのはこの名前だ。アジア圏の美術品、古書を売り捌いているブローカーとしてヨーロッパで話題となっていたのだ。

宮内庁管理部陰陽課。渡辺や藤原の所属する部署だ。公式には、管理部にその様な部署は存在しない。存在しない、ことになっている。彼らの職務は陰陽道、すなわち魔術を用いて皇室およびその財産を管理すると同時に国益を損なう恐れのある魔術的事態、たとえば怪異、に対処することだ。今回、渡辺の部署が動くことになった理由は林が魔術を行使したから、である。そしてこの問題は、絶対に公にしてはならない。次に彼女が扱うであろう物品は、中国史に大きく関わるもので、それが日本から流出したものだと絶対に悟られてはならないものだ。
と、これが呼び出された渡辺に安倍課長…の代わりに待っていた源副課長から伝えられた内容だ。ちなみに安倍課長はいつも不在で、式神でしか喋らない。その存在を疑問視する声や人格を問題視する声は絶えない。実力に対する評価は何故か下がっていないのが不思議なところである。
「期待していますよ、綱。」源副課長はよく通る声でそう渡辺に命じた。

そして、今、こうして異国にまでやって来た、というわけである。初めて踏む地ではあるが、緊張はない。
「林の正体が何であれ、鬼が出るのならば、斬らねばならぬな。」
渡辺はそう呟くと、他の乗客たちに紛れて出口へと向かうのであった。


っていう設定だったら面白いな、という妄想でした。「宮内庁の渡辺です。」はいくらなんでもぶっ飛びすぎでしょうw

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