河野家四国統一記 第1話

※この記事は『信長の野望 創造 with パワーアップキット』のリプレイ記事であり、登場する人物・団体はフィクションです。

シナリオ:美濃の蝮(1542年8月)
難易度:中級
大名家:河野家

 盛夏の太陽が、痛い程に瀬戸内の水面を照らしている。河野通直はそれを湯築城の櫓からぼんやりと眺めていた。河野水軍の将とは思えぬ色白な肌。面長の顔には申し訳程度の髭が蓄えられている。背もあまり高くなく、お世辞にも体格が良いとは言えないが、組まれた腕の太さと醸し出される落ち着いた雰囲気が辛うじてこの男を戦国大名たらしめていた。
 自分が有能でないことは、自覚していた。この乱世に不向きだ、とも思えた。娘婿である来島村上一族の通康に家督相続を打診したのも、ひとえに河野家存続を思ってのことであった。これに反発したのが、分家の河野通存であった。通存は息子・晴通を立てたのである。通直は城を追われ、通康の館に身を寄せる羽目になった。見かねた能島村上家当主・義忠の仲裁が無ければ、河野家は真っ二つに分裂するところであった。
 はじめは和睦交渉に渋々だった通直であったが、通存・晴通親子と腹を割って話し合ううちに、心の中に、ある思いが芽生えてきた。このまま、家を存続することに汲々として、守りに入って良いものだろうか。通存の思いも同じであった。彼らの野心は、河野本家に向けられたものではなく、伊予統一に向けられたものであったのだ。通直は腹をくくった。無能なのは先刻承知。どこまでやれるか、試してみるのも一興である。こうして、河野家の挑戦が始まった。

 ひとまず目標とすべきは大洲城に拠る宇都宮家である。隠居の清綱を筆頭に豊綱・房綱兄弟が家中をまとめており、河野家と何度も小競り合いを繰り返していた因縁の敵である。河野家も本家・分家一丸となって軍備を進めた。その中で、意外な収穫もあった。長女の蘭である。城下の町普請をさせると、これは、という意見をすることがある。内政を蘭や重臣・平岡房実に任せつつ、通直は兵を鍛え上げた。湯築城には2000の兵がいる。その中の200。この200だけは自在に動けるようにした。自分の采配を信じて付いて来る精鋭である。一兵も無駄にはできない。通直の思いは、兵達に伝わっているようであった。

 機会はすぐに訪れた。八幡浜衆から、豊綱が兵糧を徴収しているとの報が届いたのだ。西土佐にもしきりに使者が走っているという。西土佐を治める一条房基は以前より伊予への意欲を見せていた。一条家を背後に、豊綱が動く。通直はそう確信した。
「陣触れをせよ。風の如く進軍し、大洲を獲る。」
 短く告げ、馬上の人となった。そのまま一気に山道を駆け、二刻のうちに内子に入った。先発した晴通の軍が伊予長浜で豊綱の軍勢を一手に引き受けているという。通直は1500の兵で大洲を囲んだ。城には清綱が残り、頑強に抵抗していた。焦る気持ちをぐっとこらえ、通直は持久戦を指示した。残る兵糧は10日分、それが今の河野家に用意できる全てであった。9日目、500の兵が現れた。まっすぐにこちらに向かってくる。後方には左三つ巴の紋。豊綱の軍である。晴通の軍が散々に打ち破られたとの報は既に届いていた。晴通は豊綱と一騎打ちを挑んだが、生死不明とのことである。通直は500だけを動かした。同数の勝負である。乱戦になっても200だけは周囲を離れない。旗が見えた。通直は突撃を命じた。軍勢が二つに割れ、その中を200の集団が別の生き物のように駆け抜ける。先頭を駆け抜ける通直の眼にははっきりと本陣の豊綱が見えていた。

 豊綱を捕縛した事で清綱は直ちに降伏。宇都宮家は河野家の配下となった。湯築城への帰途で大除城に晴通がいると聞き、通直は急いで立ち寄った。先の戦で豊綱との一騎打ちに敗れ、左腕を斬られたという。菌が入り込んだのか、右腕の倍ほどに腫れ上がっていた。
「申し訳ございませぬ。」
「謝るな。むしろ、危険な戦に追いやってしまった私の落ち度だ。」
「分家の身でありながら本家に逆らった自分を許していただいた殿のために、戦ったまでです。大洲攻略まで豊綱の軍勢を抑えきれなかった事こそ、私の落ち度です。」
言うと、晴通は涙をこぼした。
「殿、通宣をよろしくお願い申し上げます。」
「何を申すか。晴通の力がまだ必要だ。腕などなくとも、働いてもらわねば困る。共に誓ったであろう。伊予を統一し、名族河野の名を天下に轟かせると。」
通直の言葉にも、晴通は静かに首を振るのみであった。数日後、晴通の死が伝えられた。

第2話に続く

河野家プレイではじめました。無事、近隣の宇都宮家を併呑したのですが、直後に寿命で河野晴通が死んでしまいました。史実では家督相続を勝ち取った直後に急死しており、通直に討たれた可能性もあるそうです。丁度大洲城攻略途中に兵が少なくなって返している最中に死亡してしまったので、戦場での傷が元で病死した、と脳内補完。
本プレイの河野家は一族の結束固く頑張っていきます…と言いたいのですが元々通存はいない上、今回晴通が死んじゃったので残っているのは通宣(次期当主)と蘭(姫武将)だけなんですよね。今回は姫武将モードはオフなので、蘭様には「瀬戸内のジャンヌ・ダルク」となる未来が…後継者問題が怖い。
次回は河野家と勢力争いを繰り広げた南予の西園寺家との戦いになります。

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