さちうすのクイズメモ#3『小京都多すぎ問題②』~全国京都会議・西日本編~

承前

前回に引き続き、全国の小京都を取り扱っていこう。ちなみに前回はコチラ。

今回は全国京都会議に加盟している自治体のうち、西日本を扱っていく。というか、全国京都会議だけで2回になるとは思わなかった。


近畿地方

伊賀上野(三重県)
藤堂高虎により整備された城下町として知られる伊賀市上野は、伊賀忍者発祥の地、そして俳人・松尾芭蕉の生誕地としても名高い。高さ30mの石垣が残る上野城は迫力満点である。
wikipediaでは「伊賀の小京都」のフレーズが掲載され、実際に検索でも出てくる。ただし、上述の通り、小京都を推さなくても知名度の高い魅力スポットが存在しているので今後、名乗らなくなっていくかもしれない。

京都(京都府)
いやお前も入るんかい。
まぁ、加盟自治体の一覧なので仕方がない。

丹波篠山(兵庫県)
「しのやま」ではなく、「ささやま」。江戸時代に作られた篠山城を中心に発展した城下町が残る丹波篠山市。戦国時代ファンからは波多野兄弟の八上城の方が知名度が高いのは少し惜しまれる。聞き間違えの結果「デカルト」「カント」「ショーペンハウエル」から名前を取ったと言う(※諸説あり)とんでもないインパクトの地元民謡「デカンショ節」も有名である。
※なwi「丹後の小京都」(ry

出石(兵庫県)
「但馬の小京都」を掲げる豊岡市出石。「挽きたて」「打ちたて」「茹でたて」の三たてを信条とする皿そばも有名。全国京都会議HPでも紹介されている徳神社の御神木「なんじゃもんじゃの木」も気になる存在。兵庫県はインパクト重視なのだろうか。

龍野(兵庫県)
「播磨の小京都」とも呼ばれるたつの市。脇坂氏の城下町として栄えた一方、「赤とんぼ」の作詞者として知られる三木露風の生誕地であることから「童謡の里」とも謳っている。全国京都会議HPでもキャッチフレーズが「童謡の里」となっており、播磨の小京都は文中でさらりと扱われているあたり、ここも今後、名乗らなくなっていくかもしれない。

四国地方

中村(高知県)
土佐一条氏の城下町であった四万十市中村。応仁の乱を避けて関白・一条教房が下向し碁盤の目状の街並みを整備した、「小京都」の典型と言うべき町(都うつし)の一つである。wikipediaでは「土佐の小京都」のフレーズが掲載され、実際に検索でも出てくる。四万十市自体は清流・四万十川トンボ自然公園など自然豊かな自治体としても有名である。

安芸(高知県)
高知県東部の安芸市。安芸城跡は江戸時代には土佐藩家老の拠点・土居廓中(どいかちゅう)として現代に残る他、輸入した時計を分解して組み立てることで独学で時計の機構を学ぶという畠中源馬氏の狂気の所業により完成した野良時計も当地の名物である。また、三菱財閥の岩崎彌太郎生誕の地としても知られる。
※なwi「高知の小京都」(ry

中国地方

倉吉(鳥取県)
鳥取県倉吉市は古代から伯耆国の中心地として栄え、白壁の土蔵が立ち並ぶ街並みで知られる。大岳院には江戸時代初期に倉吉藩主となり没した里見忠義と殉死した8人の家臣の墓がある。忠義は滝沢馬琴の『南総里見八犬伝』のモデルとされている。全国的にも珍しい牛骨ラーメンや、高級品の極実スイカも有名である。
Wikipediaでは「伯耆の小京都」の記載がある。google検索をするとこのキーワードではヒットしないものの倉吉に関連した情報が出てくる。

松江(島根県)
島根県松江市は国宝五城の1つとしても知られる松江城が有名である。城の堀や宍道湖、大橋川が近く、「水の都」としても知られる。割子そばという独特の提供方法がある出雲そばや宍道湖のシジミがグルメとして有名である。
※なwi「出雲の小京都」(ry

津和野(島根県)
「山陰の小京都」を称する鹿足(かのあ)郡津和野町。津和野藩の基礎を築いたとされるのは千姫事件で汚名を残すことになってしまった坂崎出羽守直盛。その後は亀井氏が藩主となり幕末まで存続する。文豪・森鴎外が幼少期を過ごした地でもあり、彼の墓もある。
wikipediaでは「石見の小京都」という記載もみられ、google検索では倉吉同様、このキーワードでヒットしないものの津和野の情報が出てくる。

「山陰の小京都」問題
実は、「倉吉」「松江」「津和野」はwikipediaによるといずれも「山陰の小京都」と呼ばれることがある。実際に山陰地方に存在する「伯耆」「出雲」「石見」の中心都市であり、どこが「山陰」の第一の都市なのかについては議論があるだろう。しかし、上記の通り、「山陰」の称号を公式に標榜する津和野に軍配が上がったようだ。googleでの検索では「津和野」がほとんどを占める。最初のページでは「倉吉」が1件見られるのみ、「松江」に至っては表示すらされていない。クイズで出題する際は議論を呼ぶため、「山陰の小京都」問題は「自称している」、というフリをつけることができる津和野を除き作成しないのが無難ではないだろうか。

津山(岡山県)
森氏の城下町として名高い津山市。B級グルメのホルモンうどんでも知られる。美しい景観から「西の京都」を自称する。それはもう普通の京都のことなんよ(千鳥・ノブ風)。wikipediaでは「美作の小京都」という記載もあり、google検索でもいくつかヒットする。
※なw「中国山中の小京都」(ry

高梁(岡山県)
「備中の小京都」を称する高梁市。現存十二天守の一つで「天空の山城」とも呼ばれる備中松山城を中心に広がる城下町で、銘菓・ゆべしや高梁川の清流で育まれた、お茶やインディアントマト焼きそばなどのグルメが数多く存在する。インディアントマト焼きそば!?(千鳥・ノブ風)

なお、千鳥のノブさんは岡山県井原市、相方の大悟さんは岡山県笠岡市の出身である。

尾道(広島県)
瀬戸内しまなみ海道の本州側の起点としても知られる尾道市。正直なところ、「小京都」というイメージよりも「坂の街」や大林宣彦の坂道三部作(『転校生』『時をかける少女』『さびしんぼう』)に代表される「映画の街」としてのイメージが強い。また、近年ではアニメ方面にも力を入れているらしく「五大聖地」の一つに数えられるらしい。

※五大聖地という単語は「ASCII.jp」の記事中に登場する他、埼玉県久喜市のHP、尾道市のwikipedia記事において言及されているがgoogle検索上その他に用例の見られない根拠不明の単語である。鷲宮神社(埼玉県久喜市、『らき☆すた』)、木崎湖(長野県大町市、『おねがい☆ティーチャー』『おねがい☆ツインズ』)、豊郷小学校旧校舎(滋賀県犬上郡豊郷町、『けいおん!』シリーズ)、尾道(広島県尾道市、『蒼穹のファフナー』『かみちゅ!』他多数)、城端(富山県南砺市、『true tears』)であり、いずれも聖地巡礼が本格化する2010年代ごろまでの作品で特に話題となったものが選ばれているのが分かる。時代に応じてヒット作品が変わり、兵庫県西宮市(『涼宮ハルヒの憂鬱』シリーズ)、石川県金沢市(『花咲くいろは』)、茨城県大洗市(『ガールズ&パンツァー』シリーズ)、岐阜県高山市(『氷菓』)、静岡県沼津市(『ラブライブ サンシャイン』)なども現在では上記に匹敵する知名度を持っていると考えられるため一般的な単語とは言えない。

筆者注

また、中国やまなみ街道の起点でもあり、山陰-山陽-四国を結ぶ重要な交通の要衝となっている。
※なw「瀬戸内の小京都」(ry

山口(山口県)
「西の京」という強気のネーミングを持つ山口市。小京都ではないやないか。しかし、これは歴史的な名称である。室町幕府の有力守護大名として知られる大内氏の本拠地に貴族が亡命して作られた典型的な「都うつし」の一つである。
※なw「防州の小京都」(ry

萩(山口県)
大内氏時代の城下町であった山口市に対し、毛利氏時代の城下町として名高いのが萩市である。なまこ壁の土蔵が立ち並ぶ街並みや夏みかんが名物として知られる他、松下村塾をはじめとする明治維新ゆかりの地も多いのが特徴である。
※なw「長州の小京都」(ry

「西の小京都」問題
「松江」「津和野」「津山」「尾道」「山口」「萩」はwikipediaによるといずれも「西の小京都」と呼ばれることがある。津山は「西の京都」、山口は「西の京」を自称しており、混同されている可能性がある。googleでの検索では「津和野」「津山」「山口」が数件ずつみられるが、「西の小京都」という文言が明記されているものはあまり多くない。「山陰の小京都」「西の京都」「西の京」というネームバリューが先行していると思われるため、一般的な表記とは呼べず、作問には適さないと考える。

九州地方

朝倉(福岡県)
「筑前の小京都」
とも呼ばれる朝倉市秋月地区。「堀川用水及び朝倉の揚水車群」としてライトアップもされる水車のほか、京都会議HPでは桜の名所が3箇所も紹介されている他、キリン花園のコスモスに至っては2回紹介されるなど、花咲く豊かな自然の街でもある。

小城(佐賀県)
佐賀藩の支藩が存在した小城(おぎ)市。小城藩は無城主格であり城下町が形成されたことはないが、まちづくりは江戸期になされたと考えられる。京都会議HPや羊羹資料館のHPにも京都のような風水思想を取り入れたまちづくりの記載がなされている。詳細な検証は地域史を繰る必要はありそうだが、概ね真実と捉えてもよいのだろう。
※なw「肥前の小京都」とあるが、google検索では伊万里が引っかかる。

山鹿(熊本県)
福岡県・大分県との県境にある山鹿市。芝居小屋「八千代座」や飛鳥時代の「鞠智城(きくちじょう)」など歴史の面影が残る地域である。また、文明5(1473)年に枯れてしまった温泉の復活を祈願で成就したとされる宥明法印の事蹟を称える温泉復活感謝祭という強すぎるネーミングの祭りも有名である。
※なw「肥後の小京都」とあるが、google検索では人吉市ばかりが引っかかる。

日田(大分県)
大分県北西部の日田盆地にある日田市。関ヶ原の戦い直後の一時期だけ丸山城(永山城)が置かれ城下の豆田町が形成されるが、その後は天領として栄えた。全国京都会議HPでは「山あいに思いがけない都あり」「湖底から生まれた水の郷」などやたらエモめの表現が多用されているが、実際に寒暖差が激しく濃い霧も発生する自然豊かな街である。江戸時代に開かれた私塾の一つ、廣瀬淡窓(ひろせ・たんそう)咸宜園(かんぎえん)があったのもここである。
※なw「豊後の小京都」とあるが、google検索では杵築市ばかりが引っかかる。

杵築(大分県)
「九州の小京都」を謳う大分県杵築(きつき)市。国東半島に存在し、日本一小さなお城というどこ情報だかわからないがなぜか謙虚なお城の城下町である。坂道と石畳という足腰に来そうだが絶対に趣があると確信できる街並みは時に時代劇などのロケ地にもなるようだ。「きつき和服応援宣言」なる声明も出しており、着物で訪れると特典があるらしい。
ちなみにwikipedia 「小京都」の記事内で「◯◯の小京都」という言及が(京都以外の全国京都会議加盟自治体で)されていない唯一の場所になっている。「杵築市」の記事の内容が少々薄いのも気にかかるところ。また、「九州の小京都」の称号は飫肥(日南)に記載されている。google検索では九州中の小京都が群雄割拠しているが確かに飫肥がやや優勢である。杵築、がんばれ…。

日南(宮崎県)
宮崎県南部に位置する日南市飫肥(おび)地区。九州初の「重要伝統的建造物群保存地区」に指定されただけあり、江戸時代の街並みが今に残っている。全国京都会議HPでは「小京都」のフレーズが出てくるが今までのような「どこの」という枕詞がなく、小京都の本家は自分だと言わんばかりの自信がにじみ出ている。また、HPの解説もどこか投げやりで写真は1枚のみ、と来ればわかる感たっぷりである。問題は宮崎県そのものが行きにくい交通条件なことであろうか…。
ちなみにwkipediaでは前述の通り「九州の小京都」の表記のほか、「日向の小京都」とも記載があり、google検索でも日南市の情報がヒットする。

知覧(鹿児島県)
「薩摩の小京都」を称する南九州市知覧(ちらん)地区。薩摩外城の一つで武家屋敷が多く残っており、美しい庭園が公開されている。それ以外にも品評会でも好評を博する緑茶ブランド・知覧茶の生産や、太平洋戦争末期における特攻隊の基地があった歴史でも知られる。歴史と文化のまち、という意味では日本最南端、最西端の「小京都」にふさわしい。個人的には京都会議HPに記載されている日本唯一の観光養殖施設「タツノオトシゴハウス」のインパクトがすごい。

まだまだあるぞ小京都

ここまで、「全国京都会議HP」記載の「小京都」全37箇所を紹介してきたが、これだけでも知名度にばらつきがあることがわかる。さらにここから脱退した、あるいは加盟していない「野生の小京都」も多数wikipediaには紹介されている。次回はこれらについても紹介しようと思う。
まだ続くのかこれ…。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?