テレビ観戦者と試合を繋げるインターフェイス - Rugby World Cup 2023 France のテロップデザイン考察
今年はワールド・ベースボール・クラシックに始まり、女子サッカー、バスケットボール、ラグビーなど、多くの国際大会が開催されました。
国際大会では、大会エンブレムや各種グラフィック、競技場建築やそこで展開される広告、各国のユニフォームなど数多くのデザイン的な見所がありますが、今回はテレビ観戦者と試合を繋げるインターフェイス、試合映像のテロップデザインの魅力について書きます!
まだ記憶に新しい Rugby World Cup 2023 France のスコア表示テロップが、試合の情報をどのように視聴者に伝えていたか、分析します。
標準形
通常時には
前半/後半
スコア
経過時間
を表示します。
前半/後半の部分は「大会名(FRANCE 2023)」 → 「ラウンド(POOL A、SEMIFINAL、FINAL etc.)」 → 「前半/後半(FIRST HALF、SECOND HALF)」をローテーションで表示していました。
チーム名は3文字表記、シンボルマークはチームカラーの上にモノトーンでの表示です。
得点時
得点時には前半後半表示がなくなり、スコア部分と経過時間部分全体を使ってアニメーションが表示されます。通常時にモノクロだったシンボルマークも、カラー化されてアクティブ状態になります。
得点方法によって「TRY」「CONVERSION KICK」「PENALTY」などのバリエーションがありました。
トライ数、BP(Bonus Point)、LBP(Losing Bonus Point)
RWC 2023 グループリーグでは、勝ち/引き分けで得られる勝ち点の他に、以下のボーナスポイント制度がありました。
Try Bonus Point:トライ数が4つ以上で1ポイント
Losing Bonus Point:負けても7点差以下であれば1ポイント
いずれもグループリーグを勝ち抜くために重要なポイントなので、試合中もチーム名の上に「LBP」、「1T」「2T」「3T」「BP」と表示されていました。
アドバンテージ
ゲーム中に反則があっても、このままプレーを続けたほうが反則を受けた側にとって有利と主審が判断した場合、アドバンテージとしてゲームは続行します。
チーム名の下に「ADV」と表示され、アドバンテージ中の攻撃であることがわかります。
ここまでのペナルティ数
ここまでの両チームのペナルティ数がグラフで表示されます。
最新5回のペナルティ
最新5回のペナルティが、チームカラーと発生タイミング(分)で表示されます。
ペナルティ発生時
ペナルティ発生時にはホイッスルのアイコンとともにペナルティ名が表示されます。アイコンかわいい。
ペナルティショットクロック
コンバージョンキックは90秒、ペナルティキックは60秒以内にキックを行わなければいけません。残り時間がカウントダウン表示されます。
10秒を切ると赤字になっていました。
フェーズ表示
セットプレー以後、密集からボールが出て攻撃するたびにフェーズがカウントされていきます。フェーズ数が大きくなる = ミスやペナルティなくプレーが続いている、ということです。
カード
危険・悪質なプレーがあった場合、「イエローカード」「レッドカード」が出されます。イエローカードは10分間の退場、レッドカードは退場で戻れません。
イエローかレッドか微妙な場合、主審はファールプレーレビューオフィサーに判断を委ねることができます。
ファールプレーレビューオフィサーがレビューを行い、8分以内にレッドかどうか判定します。この間は、赤と黄色半分のカードと共に残り時間が表示されます。
オフィシャル・タイムキーパー
試合中に何度か、今大会のオフィシャルタイムキーパー TUDOR のロゴが表示されていました。
ビデオ判定
判定が微妙なときはビデオ判定が行われます。
ビデオ判定中は、「TMO(Television Match Official) REVIEW」と表示されます。
選手交代
選手交代時、INする選手は緑の上向き三角、OUTする選手は赤の下向き三角で表示されます。
規定の試合時間経過後
規定の試合時間の80分経過後のラストプレー中は、タイマーが赤字で表示されます。
RWC 2023 の画面隅の小さなテロップは、単なるスコアや残り時間の表示に留まらず、ラグビー特有のルールに過不足なく対応し、得点時にはスペースいっぱいのエモーショナルなアニメーション表現で試合を盛り上げりました。
最小限のデザイン・動きで試合中に起きていることすべてを活き活きと伝える、とても愛おしいものでした。
そして来年2024年はオリンピックイヤーです!
様々な競技と国・地域が集結するオリンピックでは、テロップデザインにも多様性と柔軟性が求められます。パリ五輪のデザインシステムに基づいてデザインされたテロップが、30種類以上のルールの異なる競技に合わせてどのように最適化され、情報を伝えてくれるのか、とても楽しみです。
選手の熱い戦いだけでなく、それを彩るテロップのデザインにも注目して、2024年もスポーツ中継を楽しみましょう!
[PR]
Goodpatch Anywhere は、こういうニッチなデザインの話をしても引かれない、優しさに溢れたフルリモートのデザインチームです。興味のある方はお気軽にお問い合わせください!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?