女性障害者の性介護。相手がいるということ。

「相談に乗ってほしいのですが、少しセクシャルな話になってしまうんですが、大丈夫ですか?」

うちの法人は大体みんなセクシュアリティについての相談だし、中には性交渉に関する相談もくるので、特に深く考えることもなく「いいですよ!」と返信した。

すると、次のメールは一文だけ。しかも「セックスしてくれる人を探していまして。」と。

お?思ってたのと違うぞ?と混乱したのも束の間、次のメールは「すみません、途中で送ってしまいました。」と。

その後のやり取りで知れたのは、彼女は先天性の障害者で大学生。恋愛はしたことがないけれど性欲は解消したい。しかし障害者の性のケアについて調べてもほとんどが「射精介助」と出てきて、女性の受け入れは想定されていない。だからといって全く障害に理解のない人や友達には頼みたくないし男性は少し怖い(イメージ)。
そこで調べてたら、介護と性について取り組んでるStartline. netを見つけた。
「失礼かも知れませんが、トランスジェンダーの佐藤さんなら、妊娠する可能性もないですし…。」と送られてきた。ごもっともである。

こういう相談は全く経験がなかったし、どうしたらいいのかもわからなかった。
どこか紹介できる機関があればと思って探したけど、彼女のいう通り「射精介助」はたくさん出てくるのに、女性を想定したものがなかった。見つからなかった。

障害があってもできる自慰行為についても調べたけれど、全部男性向け。
なんなんだ、女性には性欲がないと思ってんのか。あるわ!

「自慰行為は自分でもできるんです。ただ、相手がいるといないとでは、満足感?達成感?が違うんですよね。自分ですると、虚しくなっちゃって。最近。恋愛もまともにできないんだろうなって。」

なるほど、それならもう僕が、と思った時一つ問題が出た。
家が遠かった。かろうじて本州だったけど、東京からはかなり距離がある。しかもその頃僕は仕事が忙しく、土日でとなると完全に日帰りじゃなきゃ無理だった。正直にそう伝えると
「ですよね…、私もそう思ってました。」と想定の回答だったらしい。

それでもなんとかしたい。せっかく連絡をくれたのだからなんとか力になりたいと思い、あれこれ話し合った結果、電話越しに、というところに落ち着いた。
当時はzoomもなかったし、彼女はウェブカメラを持っていなかったから電話が一番、というより電話しか可能性がない、という結果になった。

「それでも、相手がいるのと全く一人なのとでは違うので、嬉しいです。」というのは、僕もよくわかる。
自分でできるのと、相手がいる、の間には「自分でできるけど相手がいてほしい」という欲があると思う。それは障害者・健常者関係なくある人にはある欲求だ。

結果的に、彼女とは3回電話した。最初の2回はどうしてもそういう雰囲気にならなかったのだ。お互いの趣味や生活のことを話していたら、普通にそっちが盛り上がっちゃって、セクシャルな会話にならなかった。
3回目はお互い「今日こそ!」という変な意気込みがあった。

終わった後、彼女は「初めて、こんなにドキドキしました。」と言ってくれた。相手がいるだけでいつもと違う。セックスの時のコミュニケーションってこんな感じなんだとちょっとわかった。と。

最近、いくつかの媒体で「障害者の性介護」について話されているのを見たけれど、やっぱり利用者は男性で、介助者は女性だった。
男性同士、女性同士、女性利用者は数が少ないのだろうか。マイノリティなのだろうか。

だがしかし確実に悩んでいる人はいる。需要はある。

性介助について、もっと多くの人がオープンに議論できるようになってほしいし、声を上げられる世の中になってほしい。
性欲があることは、恥ずかしいことではないし、後ろめたいことではない。
一人でできることでも、相手がいた方がいいって思うのも、自然なことだ。

性の話をした時に、馬鹿にしたような、笑い物にするような語り口調をするのは、やめてほしいと思う。そういう人の存在が、当事者を萎縮させ、我慢させてしまうのだ。


セックスは、恥ずかしいことじゃないよ。

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