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『それでも旅に出るカフェ』

近藤史恵の小説『それでも旅に出るカフェ』

このシリーズの『ときどき旅に出るカフェ』を昔読んで、内容は全然覚えてないけどおもしろかった印象があったので、続編が出ていることを知って図書館で借りてきた。

カフェを舞台にした10編の連作短編集。
世界中の珍しいお菓子が、日常のちょっとした問題やモヤモヤを晴らして、次に向かう後押しをしてくれるようなお話。

コロナ禍が舞台になっていて、こんな時期もあったなぁと思い出しながら読んだ。

「生活が制限されることよりも、まわりの人が無関心になっていく方がずっと恐ろしい。戦争などが起こっても、こうなるのだろうと、はっきり想像できるから。」

という言葉には、世界で続く戦争や紛争、そこに暮らす人たちへの想像力がどんどんなくなっていって、感覚が鈍化している自分自身のことを言われているようで、ドキッとした。

カフェのオーナーの、「旅は、いろんなものを棚上げできるから好きなんです」というセリフがある。

「闘うか、逃げ出すかなんて、今決める必要はないのかもしれない。とりあえず棚上げして、どこか遠いところへ行く。そうして、心が回復してから、あらためてそれに向き合えばいいのかもしれない。」

そんな感覚で旅に出ることはないけど、というか、旅に出ること自体ほとんどないけど、気持ちが追い込まれた時、ちょっと離れてみる、考えないで宙ぶらりんの状態にしておく、というのは、大事なことかもと思った。

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